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薔薇色の人生 Ⅲ

はてなダイアリーで書ききれないことを書きます。スピリチュアルなど。よろしく。

青い血の香り

翌日、栞奈達は田口英子が通っていた高校に出向き、教師や校長、クラスメイト達に

事情聴取をした。

校長や担任は事件が公になることを渋っていたが栞奈が熱心に聞きこみ調査をしたおかげで少しばかりの収穫を得た。

女子高だけど私服で登校する者もいる不良もいれば、今だにこの女子高は子ギャル風の

制服だったので山下にとっては目の保養になり、栞奈に睨まれた。

栞奈達は田口が半グレと呼ばれるグループとつるんでいたことを知り呆然とした。

クラスメイト達から聞いた。

とても外見からは想像がつかなかった。

いつも塾に行くふりをして渋谷センター街や池袋、新宿方面で遊びまくっていたそうだ。

真面目生徒からカツアゲまでされたとある女子生徒は怯えながら供述をしてくれた。

結構怖がられていた。

イジメはしていないみたいだ。

成績はいつもトップで優秀だったそう。

栞奈は今度はいつも遊び歩いていたグループの1人に事件当日のことと、喧嘩していたある女性について何か心あたりがないか聞いてみた。

「ああ、知ってる、英子はあの女性の付き合ってた彼氏と出来ちゃって元カノと修羅場になって喧嘩したけどもう自分の物だからって憤慨してたわ。

うちらもよく相談された。

ヤバイ系の男だったからやめとけっていったんだけど、あの子は惚れっぽいからね。」

それ以上は栞奈達を警戒したのかすべてを話してはくれなかった。

今は自粛してそこには行ってないようだった。

念の為に池袋に行ったかも栞奈は聞いてみた。

彼氏とカラオケBOXに行ったことはあるらしかった。

自慢されたらしい。

「なんだか、意外ですね」と山下。

「そうね。この年齢は思春期だし、窮屈で退屈な学校生活に息がつまりそうだったから逃げ出したかったんじゃないの。すべて日教組が悪いのよ」と栞奈。

「へ?」ときょとんと山下。

「まともな日本の近代史も教えてないし、自虐史観とか叩きこまれると非行化もありえるわ。元文科省大臣の言動に賛同する」と栞奈。

「蒼井さん、ネットに踊らされすぎじゃないですか。」と山下。

「これは私の主観よ」と反論しつつ、山下の前を歩いてタクシーに乗って今日も報告をしに署に戻った。

山下はスマートフォンでまたMITSUKIのバンドの曲を聴いていた。

タクシーを降りて、栞奈は署に報告書をデスクに座り、昨日と同じようにノートPCに報告書をまとめて書き、プリントアウトとUSBにコピーしてから上司に渡してから帰る時に玄関で山下と一緒になった。

山下はまたスマートフォンで五月蠅いメタルを聴いてるようだった。

「あんた、またなんとかっていうメタルを聴いてるの。少しは真面目に仕事しなさいよ」と注意せずにいられなかった。

「いや、さっきの事情聴取をしていて思ったんですけどやっぱりこれは名曲だなぁと思って。特にこの歌詞、聴いてみてくださいよ」と山下は片方のヘッドホンを栞奈に渡した。

栞奈は仕方なくヘッドホンをして聴いてみた。

サビの英詩が妙に心に響いた。

爆音で音は嫌いだったが。

「これがどうかしたの」と栞奈は山下が何をいいたいのか知りたくなった。

「この歌詞は何かに縛られてる奴らが聴いたら開放されるんじゃないかと思うんです。

例えば、好きでもないことを無理やり強いられて毎日自分を偽って生きてたら自由になりたいとか、例えばロボットみたいに命令されたことばかりに従って生きてた人達がこの曲を聴いたら覚醒して本来の自分に戻れるかもしれないって思うんです。さっきの女子高生達や教師達をみててなんとなくそう思った。」といつになく山下は熱く語った。

「そんな厨二病みたいなこと考えてたの?そんなんで少年犯罪が減るとでも?」と

一緒に渋谷署をでてある居酒屋で生ビールを呑みながら焼き鳥を食べながら話した。

「そこまでは考えてないですけどね。」と山下もビールを呑んだ。

「音楽で世の中が変わったら誰も苦労はしないわ」と栞奈は田口英子の顔を思い出しながら言った。

マンションに戻ってからその曲のサビのフレーズの歌詞だけ気になった。

(自由になる為に生まれてきた、か、、、それで人生が変わったら少しは犯罪も減るかしら。)酔った頭でぼんやり考えた。

栞奈の本棚には二人の生死を分けた映画化された特攻隊の原作本が置かれていた。

彼らにも未来があったはず。

今の日本の現状を知ったらどう思うだろう。

久しぶりにページをめくりながら、眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

青い血の香り

翌日の午後、新大久保にガイシャの写真を持って栞奈達は向かった。

飲食店街をたくさんの人々が歩いていた。

いつもの風景。

「この女性をみかけませんでしたか?」

韓国料理店のウェイターやウェイトレス達に聞いた。

「いやぁ、たくさんの客が毎日くるから覚えてないねぇ。

よっぽどの有名人でない限りは」とそっけなく返答が返ってきた。

「そうですか。お手数かけました。」と栞奈は仕方なく返事をして軽く会釈して店をでた。

「それにしても冷麺は美味しかったですねぇ」と呑気に言ってる山下。

「そう?プライベートでは絶対にこない店だわ。」と栞奈。

外にでてから無表情で山下に言った。

ゲームセンターやティッシュ配りの人にまで聞いて歩き回った。

もうすぐ3月。

喫茶店に入り、珈琲を注文して一休みをした。

「やっぱりここはいつきても日本人離れした人達が多いわね。

どう?夜にまたポンシンタンでも食べる?」と悪戯っぽく山下に話しかけた。

山下は顔がひきつって「いやぁ、あれは癖がありすぎるしちょっと」と遠慮した。

肉の材料を聞いて耳を疑ったが日本語訳を知ってドン引きした。

唐辛子とニラをたくさん入れた韓国独特の肉鍋。

山下は無理やりビールで流しこんだ。

「あれは韓国の食文化だし、民族性がよくでてる。

否定はできない」と流石の栞奈も悔しそうだった。

あの時栞奈は別の料理を頼んで食べながら山下の反応を興味深そうに見ていた。

「ま、私もイルカやくじらを食べる地域で育ったから非難される痛みはよくわかるけどね。それでも食文化だけは大事にするわ。食べてこそ供養」と栞奈。

山下はうかつにも一度だけ試してみようかと思ってしまった。

彼はグルメだった。

「ところで食事代もみんな経費で払うんですか?」と山下。

「当たり前でしょ。」と当然のように珈琲を飲みながら答えた。

勘定を済ませて店を出るときに「この女性を見かけませんでしたか」と栞奈は警察手帳と田口英子の写真を見せて質問した。

「あ、夜にみかけましたよ。道の真ん中で」とレジの女性。

「え!?」と顔を見合わせた二人。

「なんかお水系の女性と殴り合いの喧嘩をしてたねぇ、2~3日前に。」

「そうですか。なんででしょうね」と山下。

「まぁこの辺ではよくみかけるからね。珍しく制服姿だったから覚えてますよ。

それがどうかしたんですか。」と店員。

「実は港区の埠頭で死体で発見されたんです。」と栞奈。

店員は青くなった。

「物騒な世の中ねぇ」といっただけでそれ以上は言わなかった。

栞奈はその喧嘩相手の特徴と服装を詳しく聞いてから店をでた。

「今日はあたりね。ガイシャの友人関係も調べたいからこの制服の高校にも行ってみるわ」と目が光った。

山下は「なんでこんな夜遅くにこの街にきてたんだろ?」

と不思議に思った。

栞奈は「塾帰りに遊びに寄ったんじゃないかしら、友達と。なんで喧嘩になったのかわからないけど」と顎に手を当ててしばらく考えた。

ここは新宿駅から近い。

喧嘩相手は歌舞伎町にいる可能性が高かった。

彼女の仕業じゃないのは確かだろう。

だとしたら女の常連客か男ー?

まだ、血の匂いは感じなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

青い血の香り

MITSUKIは今年こそ再結成してからまだ1枚も出ていないアルバムのレコーディングの佳境に熱を入れていた。

今日は㏠中新曲のミックスダウンをした。

たくさんの機材に囲まれながら、真剣に音を聴きながらエフェクトをかけたり、微妙な音のチューニングをしたりその作業は夜中まで続いた。

一週間後には自分達の映画のプレミア試写会の為に日本に一時帰国する。

それまでに仕上げなければ間に合わない。

でも妥協はしたくない。

1人葛藤していた。

もう3日間も寝ていない。

こんなのは日常茶飯事だった。

体力の限界が来ると貧血気味になる。

鉄分をなるべく多く採るようにしているがどうしても足りなくなって時には倒れてしまうこともあった。

今日はもう限界だー。

彼はマネージャーでもある弟の龍樹(たつき)に「ねぇ、あとで、休憩に入るからその時に牛乳をもってきてくれ」と頼んだ。

龍樹は「はい、わかりました」と心配気に答えた。

彼もまた万年鉄分が不足していた。

更に2時間が経過した。

そろそろ休憩にしようとMITSUKIが椅子から立ち上がった時に眩暈や立ちくらみを覚え、そのまま椅子から床に倒れてしまった。

秘書の白人女性が「MITSUKI!」と口に両手をあてて、叫んだ。

MITSUKIが再び意識を取り戻したらそこは白い壁の部屋だった。

また病室に運ばれたのか。

これで何度目の輸血だろう。

MITSUKIは世界的に類をみない奇病の「鮮血欠乏症」という持病をうまれつきもっていた。

完治する見込みはない。

先祖代々から受け継いだ持病だった。

第一子にだけ罹る奇病だった。

毎年最低一回でも輸血をしないと彼は死んでしまうのだった。

まるでヴァンパイアみたいだー。

MITSUKIはそうひとりごちてほほ笑んだ。

 

一方、東京で蒼井栞奈はわざわざ、昔流行ったドラマ「フェアじゃない」という刑事ドラマシリーズのブルーレイを部下の山下にレンタルさせてもってきてもらい、一緒に徹夜で観た。

誰もいない、署内の部屋で。

ガイシャの名前は田口英子(えいこ)。イニシャルはT。

犯人が自分の名前をわざわざ教えるような浅はかな人間には思えなかった。

十代の美少女だった。

血はほとんど搾り取られていた。

おそらく犯人は血に飢えたサイコパスの男性に違いないと睨んだ。

「なんだか吸血鬼みたいな星ですね」と山下が一言。

全部見終わった栞奈が一言。

「このドラマを忠実に再現するなら犯人の狙いは私ね。そして犯人はー。」と山下を

見据えていいかけた。

山下は慌てて「やめてくださいよぉ。僕は蒼井さんに恨みなんかひとつもないですよ」と否定した。

「でも、貴方は私の思想が嫌いでしょ。それに貴方が大切にしていたCDを踏んで割ってしまったこともあるし恨まれても仕方ないわ。ある意味踏み絵ね、根に持たれても仕方がないわ」と顔色ひとつ変えずに言った。

「たしかにあの時は軽く殺意を感じましたけど、、、て、違います!僕がそんなことで人生を無駄にするような人間にみえますか!?」と栞奈の目を見て全力で否定した。

「そのように思わせて私達警察官の団結力を奪うのが犯人の目的よ。わざと捜査を混乱させようとしてるみたい。悪かったわ、疑うようなことをわざと言ってしまって」ときっぱりと言いきった。

「でも、わざわざ参上とかって俺達に挑戦状を送り付けるような犯行はなんだか舐められてる気がするんですけど」と山下は疑いが晴れて安堵してから推理を始めた。

「まったくだわ、パクるあたりがいかにも不逞鮮人らしい。明日新大久保に行くわよ。」と言って警察署をあとにした。

不逞鮮人!またか。

山下は半ば呆れた。

いつも彼女はまず最初に在日コリアンを疑ってかかる。

「不逞鮮人」とはいつも犯人探しの際に必ずでてくる栞奈の口癖みたいなものだった。

ほとんど当てが外れているのだが。

確かに年間の外国人犯罪率の統計1位はダントツで在日コリアンだった。

次に栞奈の口から出てくるのが「支那人」という言葉。

山下はてっきりラーメンの種類かと思った。

池袋と新大久保を捜査してから血の匂いとやらの正体を探すのが栞奈のやり方だった。

山下は自分達の捜査の仕方を外部には漏れないように注意した。

レイシスト扱いされかねないからだった。

新米の山下は最初から血の匂いの勘に頼ってほしいものだとため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小説2~青い血の香り~

  1. 蒼井栞奈(あおいかんな)は検挙率ナンバー1の女性の刑事だ。

    犯人を血の匂いで感じ、その直感に従って状況証拠を揃えると必ず真犯人を捕まえることができた。

    実際に匂いを感じたことはない。

    観念的なものだ。

    彼女以外にそれを感じることはできない。

    周りの刑事達や上司や部下には呆れられるが必ず成果をあげることができたので誰も彼女の捜査の仕方に最初は抵抗するが、最終的に成果を上げるので、驚愕される。

    彼女の部下で最近この部署に配属された、山下警部は彼女を最初の事件で一緒に捜査をしていて敬愛されている。

    彼は世界的に有名なロックバンド「ROSE-X」の熱狂的なファンで特にドラムとピアノと作詞作曲担当しているMITSUKIをほぼオタクと言ってもいいくらいに応援している。学生時代は海外までライブの追っかけとバンドのコピーまでしていたくらいだから筋金入りだ。

    コスプレまでしていたほど。2年前の日本ツアーは全部行ったと豪語していた。栞奈にもしつこく布教してくるのでうんざりしていた。

    栞奈はもうひとつ、ある思想を大事にしていた。

    それは日本を愛する心だった。

    毎回逮捕した犯人の中には在日韓国人やがいて、いつも本名でなく通名でTVでニュースで事件のテロップに本名じゃなく通名で流されることにいつも抵抗を覚えていた。

    いつも上司とそのことで揉めることがあった。

    日本人はちゃんと本名で新聞やTVで報道されるのになぜ在日の犯罪者だけ日本名で報道されるのか、納得がいかなかった。

    もちろん、韓国や中国は全員敵だと思っていた。

    そして歴史認識も保守と呼ばれる層と同じだった。

    毎年8月15日には英霊の為に靖国神社に参拝していた。

    知覧の特攻隊記念館や、広島の大和ミュージアムにも行ったことがある。

    国の為に散っていったたくさんの先人達ー。

    栞奈はいつも彼らに思いを馳せていた。

    今の仕事は左派よりの刑事に嫌われる勇気をもって自分の思想をつらぬかなければいけないから仕事上、やりにくかった。

    台湾は親日なので好きな国のひとつだ。

    今の地位に上りつめるまでに死体処理だけの仕事も任せられたこともあった。

    その中で一番やるせなかったのが自殺者の遺体処理だ。

    逮捕したくても自分で自分を殺してしまったのだから解決できない。

    どんな死体も美しいと感じたことはなかった。

    死の匂いは好きじゃない。

    もう2度とあの仕事には戻りたくなかった。

    そんな彼女に新たな殺人事件が発生した。

    現場に駆け付けると、刺殺死体の横に「T参上」とダイイングメッセージが書かれていた。

    「なんでしょうね?これは」と山下が尋ねた。

    栞奈は「なんかのドラマの観すぎで模倣したんじゃないの、字が下手だからたぶん外国人の仕業に違いない」と唇の端を上にあげて言った。

    死体とは違う血の匂いがした。

    「すぐに血痕の血液を採って鑑識に回して」と無表情で栞奈は周りにいた警官に命令をした。

    1人の警官は死体と血文字をカメラに収めた。

    当然事故現場の周りには黄色いロープが張られていた。

    次の日、丸井のデパートの中を歩いていたら部下の山下が

    香水売り場の所で立ち止まった。

    「あ、ROSEのMITSUKIの新しい香水だ。僕初回限定で買ったんですよ~。自分の血を一滴入れようとしていたみたいですよ。」また一個買おうかな。」といいつつ、一本の香水を手に取り、腕につけて薫りを嗅いでいた。

    栞奈は山下を白い目で彼をみながら看板の女装みたいな化粧をした男の顔を見て思った。

    自分の血ねぇ、面白い発想をする男だわ。

    もっとも彼は犯罪をするような血の匂いを発することはないから

    興味をそそらない。

    困ったことに栞奈は恋に落ちるときも相手の男に血の匂いを感じてしまうのだった。この場合は澄んだ血の匂いだが。

    栞奈はジャズピアノが大好きで寝る前もジャズが流れているスナックやBARに寄って一杯ひっかけるのが好きだった。

    「早く行くわよ、彼女にもプレゼントしたら」と笑いながら山下を

    からかいながら警察署に戻った。

    山下は慌ててあとを追って走ってきた。

    署内では死体の男の写真が白いボードに貼られてあり、その隣に血文字の写真が並んでピンで止められていて、上司が説明していた。

    栞奈は腕組みをして近くのクラブや夜間に起きた事件の詳細を熱心に聞いた。

    ここから血の匂いに無事たどりつけるだろうかー。

     

     

     

     

     

     

     

     

灰色の街~彼女と過ごした春2~

次の日もリョウ達にロシア料理店を探して案内してあげようと店を一人で探してたら、

1人の中国人の男に絡まれて無視して歩こうとしたらいきなり、ヌンチャクとカンフーで俺に襲い掛かってきた。

俺は焦って奴からの攻撃をよけながら逃げてそういえば高校の体育の必修科目だったのに覚えられなかったことを思いだして後悔した。

奴はすぐに追いつき俺は地面に投げ飛ばされた。

転がりながら奴の攻撃から逃れてヌンチャクを奪い逆に奴の首を思い切り絞めた。

「お前、どこの名前の組織や!?」と更に首を強く締めて英語で聞いた。

男は苦しそうに「ロ、ロシアのスパイがきた。危ないからお前に邪魔しないように警告しにきた。」俺はどこからそんな情報が漏れたのかわからず「余計なお世話だ、消え失せろ!」とヌンチャクを首から離して背中を足で蹴った。

男は唇から流れた血を拭いながら、「スパイに追われてる連中にお金をもらって逃がすように頼まれた。テロじゃない。美女二人だった」とだけ言い残して去って行ってしまった。

美女ー?

 

灰色の街~香港編・彼女と過ごした春~

俺は軽く舌打ちをした。

京子の姿は相変わらず視えていたが構ってる暇はなかった。

何かいいたげな表情をしていたが無視した。

本当は今直ぐ浄霊してすっきりしたいが別れたくない、ずっと俺の傍に居て欲しいという気持ちもあった。

とにかく、今起きている事件を解決することに集中しようー。

そう自分に言いきかせ振るい立たせて5人と待ち合わせした「フェイ」というBARに向かった。

中に入るとテーブルでまた連中は肴とお酒で飲んだくれていた。

「よう」俺は呆れつつも一人だけカウンターに座り、凛に声をかけてウォッカのロックを頼んだ。

凛は言われたとうりにウォッカをコースターの上に置いた。

「お前に大事な話があるんだ。マヤという女のことで」と凛に話しかけられた時に

携帯が鳴った。

アニソンの「1万年と2千年前から愛してる~」というフレーズと共に、凛はスーツの

ポケットから携帯を取り出し、英語で誰かと話していた。

こいつ、アニソンが着信音かよ。

俺は鼻で笑いながら一杯飲み干した。

誰かと話していた。

ミスター立花という単語とクロムハーツKANONという言葉が聞こえた。

あいつら何者なんや。

俺はさっき取り逃がした相手を思いだし、いらだってきた。

今どこにおるんやろ。

「bye,see you soon」と携帯を切り、凛は「大変やで」と話しを切り出した。

「なんやねん、トシヤのいうことなんか真に受けんなや。あの女とはもう切れてんで」

と上目使いで睨んで口を尖らせて関係を否定した。

凛は困ったように「それどころやない、大変なことになってもうた」と別の話題に切りかえた。

「は?」俺はまた今度は香港にイタリアンマフィアのボスが遊びに来たのかと思った。

「立花さん、自分がよくローマ市内でクロムのKANONに間違えられてサイン求められるからって悪のりして、その女ひっかけて酒飲まして遊びまくってんねん」と凛は半ば本当に困っていてため息をついていった。

俺はクロムのKANONといえばバンドのリーダーでドラムとピアノと作詞作曲をしているロックスターだと元カノに教えられていたのでよく知っていた。

おまけに香港ではバナナがなくてホテルを移動したエピソードが女子高生の間で

有名なのをネットニュースで知っていたので思いだして吹き出してしまった。

「何わろてんねん」と凛にしかめ面をしながらたしなめられたので「ほな、俺もよくドレインアウェイの上手ギターのリクに間違われて十代の子に声かけられるから今度かわええ子やったら、速攻でホテルにつれこもっかな」と酔った勢いで言ったら京子と凛が同時に俺を睨みつけた。

その瞬間、目の前の俺の空のグラスが割れた。

誰もそのグラスに触れていないのにも関わらずだ。

京子に「最低!」と怒鳴られた時だった。

凛はびっくりし、俺は凍り付いた。

俺は平静を装いながら「お前、立花さんと知り合いなんか?あの人はメイクしてないし

グラサン外したらすぐばれて捕まるはずや。それよりさっきのもう一杯くれ」と、

アンジェラ達をみながら言った。

凛は「クロムはワールドツアー終えたばかりや、イタリアに行かなくて正解やったな。

KANONさんは首の手術終えたばかりやし。ネットでファンが自慢してたらあっという間に日本やLAに広まるで。ただでさえ、アルバムまだでとらんのに。立花さんはイタリアマフィアのボスで以前よくここに呑みにきてたんや。今はローマにおる。」と身内のように言った。

「お前も立花さんと知り合いか?」と俺は心底驚いた。

香港はこんなに狭かったやろか。

「お前もってどこであの人と知り合ったんや?」と凛に逆に聞かれた。

「ちょっと雇われて一緒に仕事をしたんや。そういえば鼻とか口とか骨格とか輪郭とかそっくりやな。性格は全く違うからいくらファンでも途中で気づくやろ」と二人を比べて思いだした。

凛は「性格まで似とるわけないやろ。しかし世界には自分に似た人が3人もおるって話もあるし、あれ、ほんまやったんやな。つうかさっきの現象は何や、お前がやったんかグラス。弁償しろや」と少し考えこんでから我に返って言った。

「知らん。この店古いから怪奇現象ちゃう?俺ちゃうで」と後ろの京子を観ながら言った。

凛は青くなっていた。

「今夜はもう店しまおっかな」とドアに「CLOSE」と看板を裏返しにしに行った。

「あ、おいさっきの大事な話って何?」と俺は凛の背中に声をかけた。

凛は看板を裏返しにして戻ってきてから「マヤに気をつけたほうがええで。」と意味ありげに忠告された。

「あいつ、ロシアのテロ事件に関わってるんかな」と俺はマヤの銃さばきとバスタオル一枚だけ巻いた姿を思い出しながら凛に尋ねた。

「それはないやろ、別の組織と繋がりありそうや。なんで香港におるのか謎やけど」

と心配げに俺をみてつぶやいた。

「俺は大丈夫やって。今女どころやないし」と話してたら、アンジェラに声をかけられて、奥のテーブルに行ったら、クッシーに「この防弾チョッキにも星マークが書かれてあるけどなんか意味あるのか」と聞かれた。

俺は「いや、なんか描きたくなったから」と言って5人を呆れさせた。

「ねぇそれよりギター弾いてなんか歌ってよ。もう店閉まるみたいだし。」と酔ったアンジェラにいわれて仕方なく「ほな1曲だけ。もうここでようや」と笑顔で言って、凛からフォークギターを借りて幼い頃におふくろがよく歌っていた日本の女性歌手のフォークソングを弾き語りで日本語で歌った。

目を閉じて歌いながら両親を懐かしく思った。

5人と凛はしんみりと俺の歌声を聞いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

灰色の街~新宿編2 思い出~

HONEY-Xにドキュメンタリー映画の話が舞い込んだのはちょうどこの時期だった。

俺は部外者だったが自分のことのように嬉しかった。

高美も自分が映画になるのだからこのところ上機嫌なのはそれが原因だとわかってほっとした。

ラジオのDJのオファーもボーカル故にきているそうだ。

でも監督が樋口里緒と知り、衝撃が走った。

なんで今更俺の前に次々と昔の女が現れるんだ。

会わなくてすむといいんだが。

松田友美は空広が既婚者だと俺に教えてくれた。

だから高美との噂がないのか。

実際のところどうなのか問いただしたい思いだったが俺も薫に会うたび心が揺れ始めていたので聞くことができずにいた。

勿論、薫とは肉体関係はない。

息子に定期的に会ってるだけだ。

もし再会したあの時に今の仕事をやめていたら息子と薫と3人で仲良く暮らせていたかもしれないと思うと後悔した。

今更だけど。

二人で会うといつも付き合ってた頃に近い想いを抱いた。

それでいて、マヤのテロ組織を今捜査中で行方を捜していると、香港で再会したあとに

すぐに付き合ってテロ組織から彼女を奪って逃げてればあいつを捕まえずにすんだのにとも思った。

俺は気が多いのかもしれない。

更に五十嵐刑事に会いに湾岸署を訪れた時に京子に顔と髪型がそっくりな女性刑事と会い、思わず声をかけて名前を呼んでしまった。

女性には睨まれて掴んだ手を振り払われた。

「あんた、血の匂いがするわね」と謎の微笑でいうとその場を去っていって

しまった。

自首しにきた殺人犯だと絶対間違われたと思うとこんな自分に自己嫌悪が走った。

五十嵐刑事は彼女を嫌われる勇気をもって難事件に挑み、今は検挙率ナンバーワンの

凄腕刑事の西野かんなだと教えられた。

五十嵐刑事には去り際に「お前もっと上手いナンパをしろよな。

あんな手口じゃ誰も引っかからないぞ」と笑顔でいわれてしまった。

凛達には呆れられた。

俺は今の仕事をこの事件が解決したらやめるつもりだ。

もう潮時だと思った。

いつもマヤの組織から命を狙われる危険が何度かあってそのたびにマヤに対する憎しみも湧いていた。

この女は俺が必ず始末してやるー。

香港にいた頃を再び思いだした。

日本にきてから世界一治安がいいほうなので豹達と闇サイトの仕事をしている間は

今迄の自分の人生をこんな風に振り返る余裕があった。

日本はとてもこんなに狭い国だっけ。

知りあいの知り合いに遭遇しやすい。

最近は美人の元トルコの日本大使館で働いていた美人の女スパイの南条楓(かえで)が

うちで一緒に仕事をすることになった。

先祖は代々くノ一だそうだ。

俺はなぜかこの女にだけは色気をまったく感じなかった。

 

香港で俺はアンジェラ達の宿泊しているホテルを訪れ、5人に防弾チョッキと夜になると光る星印の小型拳銃5個と普通の拳銃5個を渡した。

チャドだけには言いにくそうに「あのう、これって逆に不利になりませんか?敵の目印になるというか、、、」と突っ込まれた。

俺はそこだけは盲点を突かれたと焦り「アホ、敵は必ず夜には光る星に目が嫌でもいくやろ、そこを狙うんや」と慌てて思いついたこと無表情で話した。

「なるほど、流石兄貴」と彼は妙に納得していたので安心した。

クッシーと美女二人もそこだけ気がかりで不安になっていたらしいが、俺が怖くていえなかったらしい。

リョウの部屋にも渡しに行ったらチャドと同じ痛い所を突かれたので全く同じ説明をしたら「親父もそういう過信があったから捕まったんだよな」と遠い目をしていた。

俺はそれには答えずに真剣に「なんでボスがテロリストごときに捕まったんや、普通に警戒するやろ他人は。特にお前らのような人間は」と逆に人質になってしまった原因を聞いた。

リョウは「あるBARで呑んでたら美女3人と男4人が気さくに話しにきたから一緒に呑んだ。何回も乾杯してウォッカを呑んでた。その隙に親父のグラスだけ眠剤を入れられた。その直後に話をもちかけられて俺達は断って逃げようとした。親父は立ったとたん倒れるように寝てしまったところを奴らが連れ去ってしまった。奴らのほうが喧嘩も強いしたくさんの人数にいつのまにか取り囲まれた。卑怯だよ、やり方が。」と怒りを込めて言った。

俺は「そいつは危険だな、」と言いながら窓を見上げた。

ちょうど夜10時を回った頃だった。

向こう側のホテルの屋上から何か光るものが見えた。

嫌な予感がしてリョウに「伏せろ!」と叫び一緒に地べたに体を窓から見えないように隠れたが、銃弾が窓を割って壁に数発埋め込まれた。

リョウは青くなっていた。

「お前たちは早くこのホテルから逃げろ。明日居場所が落ち着いたら連絡してくれ。」

と言い残して俺は窓から飛び降りた。

敵は向かいのホテルの屋上にいた。

リョウはここは2階だったかなと思いながらも部屋を出て走った。

俺は運よく下のバルコニーに降りることができ、死なずにすんだ。

テロリストを狙って、長いライフルをもってスコープ越しに相手を捉えて銃で数発撃ち返した。

黒い影は消えていた。

相手が生きてるか確かめに行こうと窓を銃で割って入るとバスローブ姿の男女二人が悲鳴をあげたので「ごめん」とだけ言ってドアを開けて廊下に出た。

非常ベルを誰かが鳴らしたらしい。

俺はこのままではまずいと思い、急いでこのホテルをでて向かい側のホテルの

非常階段を上り、屋上に走っていったら誰もいなかった。

血痕が少し残っていた。