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薔薇色の人生 Ⅲ

はてなダイアリーで書ききれないことを書きます。スピリチュアルなど。よろしく。

灰色の街~彼女と過ごした冬9~

女性の看護師が病室に入ってきて瞳の腕に点滴を投与し安定剤を飲むように促した。

瞳は素直に飲んだ。

看護師は瞳が眠りに入ると同時に出て行った。

トシヤは「蓮はまだ生きてるよ。安心しな。失敗して誰にも会わせる顔がないからこんなことしたんだよ。」といったので豹はほっと胸をなでおろした。

「よかったやん。止めをさしてたら余計にみんな救われへんしな」と豹が二人を慰めた。

「お前も以前、蓮に銃を向けたことあるよね。なんで?」とトシヤは豹に

瞳を見守りながらいきなり尋ねた。

豹は当時を振り返り「なんでって、、、あの時は蓮がむかついたからだよ、俺より

かっこええしええとこどりで元カノといちゃいちゃしよるし、記憶喪失なのをいいことに。てかなんで今更そんなこと聞くねん。」と焦って適当にはぐらかそうとした。

トシヤは「本当にそれだけ?お前らしくないじゃん。物書きのイメージ台無し。」とまでいった。豹はトシヤを睨んで「お前にだけはいわれたくないな、元絵描きの卵のジャンキーの癖に。」と言い返してしまった。

トシヤも頭にきて「俺はもっと深い理由や意味があるんじゃないかと思ったけどやっぱその程度だったんだな。もう詩人を名乗るなよ、

せっかく表紙を描いてやろうと思ったけどやめた」と、罵しった。

豹は激怒し「俺が海外嫌いなのにわざわざ見舞いにきてやったのにその態度はないやろ!誰も表紙の挿絵とか頼んでないわ、ぼけ」と帰ろうとしたら、

「ごめん」とトシヤが先に謝った。

「いや、もう過去のことやし。今はあんな誰とでも寝る女なんか嫌いや。

あの時はあいつの組織にまで俺は指図されてー」といいかけて慌てて口をつぐんだ。

「え?何?マヤさんがどうしたの」とトシヤがはっとしたように聞いた。

「過去にまで遡ることないやろ。それより瞳から何も知らされてないんか。本当に。

もしかしてこいつも単なるマフィアじゃないもっと大きい別の組織に命令されたとかいうてなかった?」と豹が逆に尋ねた。

「俺は何も聞いてない。何も話してくれなかった。でも、やっぱりそれだけじゃなかったんだね」とトシヤは豹に確認するかのように聞いた。

「ほんまは誰があいつを狙ってるかわかっとるやろ。なんではっきり言わへんねん」と

とだけ言って豹は下を向いた。

二人はそれっきり無口になり、それぞれ考え込んだ。

俺は空港でCIAに成りすましたテロリスト数人に撃たれて倒れた。

みていたのは、薫と偶然居合わせた豹だけ。

「お前、何やらかしたん?俺はとんだとばっちりや。お前撃たなきゃ殺すいわれて

仕方なくシンガポールで銃を向けるしかなかった。あの海岸で。マヤがいてもいなくても関係なかったんや。けどほんまごめんな。」とあとで香港に来る時豹に謝罪されたが、記憶を取り戻してた俺は何もいえず頭を軽く叩く事しかできなかった。

暗殺に失敗した理由もいわなかった。

俺はなんの思想ももってなかったし、ジョンレノンのファンでもなかったがあのDJには魅力を感じ、殺すには惜しいと思った。

今も元気でいるだろうか。

暇だったので凛にノートPCを持ってきてもらってたのを思い出した。

HPを開いて調べてみたら彼は俺がLAを出る前日に他のスナイパーに既に暗殺されていた。

じゃぁ、俺を狙った奴らは同じテロリストの仲間なのかー?

背中に戦慄が走った。

京子も覗いてて「何?死んだDJに興味あるの?」と聞かれたので「昔俺が取り逃がした相手を思い出して。」と答えて頬ずえをついた。

それを聞いた彼女は「やだ怖ーい」といいながらは俺とPC画面を交互にみた。

「お前も死んでるやろ。」といわずにいられなかった。

「あ、DJが後ろにいる。」と京子がいうので「怖いこというな」と怒鳴った。

「あんたが殺した人達今でもここにたくさんいるわよ。

私にわざわざ場所まで教えてくれるの。あのシナばあさんは半分くらい祓ってたわ」

俺は退院したらまた祓ってもらいに行こうかとまで思い詰めた。

「ちょっとこの人達を外に連れてくわね」と京子は出て行った。

少しは役に立つもんだな、幽霊も。

また今日はロシアンマフィアが見舞いにきた。

「退院したら頼みたいことがあるんだけど、ちょっとここにきたのは訳ありでね」

とクッシーにいわれて「ん?なんでもいいからいうてみ」と相談にのるつもりで聞いた。

仲間と顔を見合わせてたのでまた悪いことでもして逃げてきたのかと心配になった。

 

 

 

 

灰色の街~彼女と過ごした冬8~

俺は一か月怪我を完治させるまで入院せざるおえない破目になった。

この間、瞳に殺されかけたやるせなさと恐怖とトシヤの行方も気になったり、自分もLAにいた頃に彼らに銃を向けて店を破壊したことも思い出していた。

まだ、恨まれていたのだろうか?

でもあの時は仕方がなかった。

ロイは冷酷で里緒と薫の命人質にしたのだった。

仲間を裏切ってしまったのは瞳達の命を守りたかったから。

マヤと寝たのは、彼女がわざと俺が逃げないように誘惑してきたから騙されたふりを

して、彼女の心をロイから自分に振り向かせて逃げようと思ったから。

意外にもマヤはあっさりと自分の正体を明かし、新薬の設計図をロイから奪って自分の組織に渡すときに隙をみて逃げて好きにすればいいといってきた。

なんで急にそんなことをいうのか尋ねた。

「貴方の気持ちが今なら痛いほどわかるから」といい、豹の詩集をみせながら「貴方、言ったわよね。なんで好きでもない男の本をいつも持ち歩いて読んでるのかって。

ずっと考えてた。本当は愛してた。今でも忘れられないの。あんなひどい事して傷つけたのにね」と独り言のように言いながら目の奥が揺れていた。

その時からお互いに利害が一致し、機会を伺いながら付き合ってる風を装った。

ロイが設計図を手に入れたのと同時にこっそりマヤは夜中に設計図を盗み、手下にみつかり、銃を向けてるうちに俺は隙をみて逃げた。

俺があの時に豹が俺の組織の仲間になったことを言わなかったら多分、気を許したり、

そんなことまで白状しなかったかもしれない。

夕方、凛とアリサが帰ったあとにそんなことまで思い出してたら、マヤが花をもって

見舞いにきた。

「蓮の花にしようかと思ったけどなかったから」といいながら、花瓶に花を挿した。

マヤを睨みながら「おい、その花は葬式用だろ」と悪態をついた。

彼女は黒いコートを着ていた。

マヤに「そうね。香港にきてから何があったの?」と聞かれて俺はしばらく無口になった。

横にいる京子に目をやりながら話すべきかどうか迷った。

京子は「好きにすればいいわ」と無表情で答えた。

もちろんマヤにはみえないし聞こえない。

「いや、別に何も。お前こそ、あいつのことが好きだったはずなのになんで俺と」と

シンガポールでの日々も思い出しながら逆に聞いた。

「あの時は、記憶を失ったあんたがいたいけにみえちゃって。豹と再会した時はまた心が揺れたけど、彼にだけは人を殺すような真似はしてほしくなかったから止めたの。

この街で再会した貴方は、まるで瞳と同じ目をしてる」と俺を見据えて答えた。

俺は「お前、今日はいやに素直だな。それにあいつと一緒にするな。」

と、瞳を思い出しながらふざけるなという気持ちで一杯になりながら反論した。

「そうじゃなくて、初めて瞳と出会った頃のことよ。あの子の経歴を当時聞かされたから、だから失うものが何もないような怖い物知らずのような印象を受けた。今の貴方もそんな感じがする。」と言われたのでうろたえた。

「俺を見くびってるのか」と言い返すだけで精いっぱいだった。

「そういう男はとても魅力的」と悪戯っぽい笑みを浮かべながらいわれて頬が熱くなった。

「じゃぁ明日も早いからもう帰るわね。」とマヤは忙しそうに帰ってしまった。

京子は「なんだか謎めいた人ね。彼女は何者?」としばらく彼女をみていたが俺の方をみて聞いてきた。

「FBIの2重スパイ。今はバランスをとって仕事をしてる悪女」とだけ答えた。

「そんな女と関係もったのは誰よ」と京子は両手をあげて呆れたようにいった。

窓が開いていて風がこちらに向かって吹いた。

自分でもよくわからず答えにつまった。

次の日、なぜかロシアンマフィアのアンジェラ達が香港にきていて、俺の兄貴に連絡先を聞いたのか見舞いにきてくれて周りがにぎやかになった。

個室で安心した。

 

瞳は別の病院の白い1人用の病室にいて呆然自失といった表情をしてベッドから起きて座っていた。

トシヤと知らせを受けて飛んできた豹が瞳の様子を見守っていた。

事の成り行きを聞いて豹は「なんでそんなことしたんや。断ればよかったやろ。他に仕事はたくさんあるはずやで」と絶句していた。

「俺達はボスに可愛がられてたから期待に応えたかったんだよ。

こっちにきてしばらく面倒をみてもらったから。蓮は敵も多いしやってる仕事の内容も許せなかった。蓮もおかしいよ、なんであんな仕事してたんだろ」とトシヤなりの見解を示した。

 

「とにかく、また妙な気起こさないように見張っとくか」と豹は瞳を心配した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

灰色の街~彼女と過ごした冬7

「今度から気を付けるわ」

「どういう意味」俺はいぶかし気に思って尋ねた。

「私の仕事の邪魔をしないでほしい。今までのような仕事は引き受けないで。

米中に不利になるような標的は避けたほうがいい。」

マヤのいいたい事は何を意味しているかはだいたいわかったがわざと理由を聞いてみた。

「なんで」

「これからもたまに会って連絡をとったほうがお互いにもいいと思うし安全だから。仕事以外で。」

俺は京子をちらりとみながら「他の男にしといたほうがいい。俺とは今日が最期になるかもしれない」と一応断った。

「そうかもね。じゃぁやめておく。さっきのことは忘れて」マヤは何事もなかったように出て行こうとした。

マヤの腕をつかんだ。「待て、」。意外な顔をしている目をみつめて「じゃぁ、暇が

できたら連絡する。お前も会いたくなったらいつでも電話でもメールでも送って」と答えた。

彼女は共犯者のような微笑を浮かべて「交渉成立ね、また連絡する」とキスをしてドアを閉めてでていった。

京子は「さっぱりわからないわ。どういうことなの」

と呆然としていた。自分がいるのにといいたいのか。

「京子、お前は俺がずっとお前のことだけ思いながらずっと独り身でいろとでもいいたいわけ。貞操をしぬまで守ってほしいわけ?」

「そうよ。骨まで愛してほしいの。死ぬまで私のこと忘れないで。」

俺はため息をついた。

「俺はたぶん一生お前のことは忘れないし、お前以上に好きな女にも出会うことはないから安心しろ。もう恋はしない」

「嬉しい」京子は俺にだきついたが、体をすり抜けてしまった。

二人で苦笑した。

マヤへの恋心は芽生えかけたがそっと封印しようとした。

彼女との恋愛は危険すぎる。

もう誰のことも失いたくなかった。

でもたまに会うくらいなら。。。いいかもしれない。

早くこの目の前の女を成仏させなければ彼女と連絡がとれない。

どうしたらいいか迷った。

急に凛の顔が浮かんだ。

あいつに相談してみよう、信じてもらえるかわからないが。

久しぶりに「フェイ」に寄ったが彼は今日は非番できていなかった。

仕方なくアリサのいる店に行った。

「アリサ」ちょうどいた。

「また少し呑んできたでしょ」

「まぁね、あいつは?」

「ときどき来るけど、仲直りしたの?」とアリサ。

「謝ろうと思って。あいつのいうとうりかもしれへんし。実際捕まりそうになったしな」と当たり障りのないことを言った。

そうだ、あのことも謝らなきゃ。

しばらく、お茶を頼んで待ってたがなかなか来ない。

あいつ遅いな。

ドアが開いた。

凛かと思い、振り向いたら瞳とトシヤがきた。

「おう、久しぶり」と手を振り声をかけてしまった。

気が緩んでいたのかもしれない。

トシヤは「よう。昨日マヤさんと一緒だったでしょ」と開口一番にいわれて絶句した。

「なんで知ってるんや。別になにもないし会って話しただけ。偉い目におうたけどな。」「例えば?」と目を光らせながらトシヤは聞いた。

俺はなぜか焦ってしまい、秘密にしたかったので「あいつ今はこの辺のスパイでこの辺を調べてるから気をつけたほうがええで」とさりげなく言った。

「口封じのために寝たんだ?」トシヤは煙草に火をつけた。

なんでそこまで知ってるんだろう。

「いや、寝てないし、なんでもないし」と言い訳をした。

トシヤは笑って「わかりやすいね、マヤさんに言い寄られて断る男がこの世にいるの。

俺なら一度はお願いしたいね」とまでいわれ返答に困った俺は「いるだろ、横に。」と瞳をみたらいなかった。「あれ?あいつは?」「さぁ、トイレじゃない?初めてきたから場所に迷ってるかもしれない。」

と運ばれてきたお茶を呑みながら答えた。

「しょうがないな、」俺は席を立って瞳を探しにトイレに行った。

女子トイレだろうか、男子トイレだろうか、

迷いながら男子トイレに入ろうとしたら瞳にぶつかった。

「なんだ、いたじゃない。。か。。。」俺は脇腹に鋭い痛みを感じてその場に倒れこんだ。

「ごめん」瞳は小さく言ってその場を逃げていった。

急いで後を追いかけようとしたが意識が朦朧として動けなかった。

トシヤはその間に「あ、俺大事な用事思い出したから帰る。瞳達によろしく」とアリサに言って勘定をテーブルにおいて慌てて店を出て行ってしまった。

アリサは客の悲鳴を聞いてトイレの入り口に走って行った。

凛はアリサから電話で蓮が血だらけで倒れてると知り指定先の病院へ車を走らせた。

ナイフを太ももに戻して瞳は店をでていた。

既に外にでていたトシヤと一緒にタクシーを拾って逃げた。

俺は気絶する前にアリサの悲鳴を聞いた。

他の客も騒いでいたように思う。

記憶はそこで途切れた。

ホテルに戻った瞳はすぐにバスルームに入った。

トシヤはため息をついて、ベッドに座り込んだ。

(蓮。。。許してくれ、)両手を組んで顔を覆った。

瞳は中々バスルームからでてこなかった。

シャワーを浴びる時間にしては流すぎる。

様子を見に行った。

トシヤは息を飲んだ。

「おい!何してんだよ!?」急いで体を抱き起した。

瞳は手首を深く切っていた。

血がバスタブに広がる。

トシヤは急いで救急車を呼んだ。

俺もその頃病院に運ばれていて意識を取り戻していた。

「大丈夫!?」凛とアリサが同時に叫んだ。

「あいつ、何考えてんだ?」瞳のことを考えた。

「今はしゃべっちゃダメ。傷口が開いちゃう」とアリサは気遣ってくれた。

凛も「今は何も考えるな。ゆっくり休め」と心配そうに言った。

京子は真っ青な顔をしていた。元々青白い顔をしてたが。

その後のことはよく覚えてない。

なんであんなことをしたのかあいつに聞きたかった。

 

 

 

 

 

 

灰色の街~彼女と過ごした冬6~

「でも貴方が私がいるのに他の女とホテルに入ったのをみたときはすごく悲しかったわ。彼女の体を借りたいくらいだった。でも、私にその能力はなかった。

どうして私のことを半年で忘れてしまえるの」と俺を責めるように言った。

俺はもう開き直り、「俺は未亡人ちゃうわ。もう俺のことは忘れて成仏してくれ。

恨んでるなら今すぐ連れてってもいい。」とつい勢いで怒鳴った。

あの夜はマヤに京子が憑依したんじゃないかと錯覚を覚えたがやはり彼女と反応が違った。間違いなくマヤと寝たのだ。

マヤも多少、動揺していた。「今夜はどうかしてる。きっとお酒のせいだわ。」とつぶやいていた。ホテルに着く前に今どんな仕事をしてるか聞いたが「それは極秘任務だから言えない。命に係わることだから。貴方には関係ないことよ」としか教えてくれなかった。

昨日のことを少し思い出した。

京子は、「そうよね。死んでまで貴方をいつまでも縛り付けておくことはできないわね。貴方を迎えにきたんじゃないけど、もう一度会いたかっただけ」とため息をついた。

長い沈黙が続いた。

京子は話題を変えて「今日は仕事ないの」と聞いてきた。

「指示待ち」とだけ答えた。

そういえば、今日は誰からも連絡がこない。

マヤからも。お互いに連絡先を交換した。

次の日も指示はこなかった。

俺は仕方なくアジトへ行った。

誰もいなかった。

どういうことだ!?

ボスに電話をしたが、なかなか出ない。

嫌な予感がした。

急いで近くのインターネットカフェに入り、組織名を検索した。

案の定、香港警察に人身売買のことで摘発されていた。

彼らは大陸に拉致されるかもしれない可能性が高かった。

たぶん、生きて帰れないだろう。

あの国はすぐに死刑にされてしまうのだから。

どういうわけか俺にそっくりな男が雇った殺し屋として逮捕されていた。

偽名を使ってたので同じ名前の男がたまたま捕まったらしい。

そいつは半グレで香港をブラついていたそうだが警察側は嘘をついてると断定していた。

「糞!」拳でマウスのそばの台を叩いた。

「でも捕まらなくてよかったじゃない」と京子は呑気に言ったが無視した。

とりあえず、カフェをでて、近くの店に入って紅茶を頼んだ。

もしかして、マヤが密告したのか。。。?

だとしたら、昨夜は嵌められたのか。

急いで彼女にも電話をした。

留守電だった。

瞳達は国境付近に行ったが、俺の姿を見つけられなかったので

「もしかして、捕まったのかな」とトシヤはつぶやいた。

瞳は無言だった。

俺はマヤのいるホテルに行って部屋番号にまだいるのか確かめに行った。

「何?」マヤはこれから出かける恰好をしていたが、無理やり部屋に戻した。

「どういうことだ?俺のいる組織が捕まった。おかげで今は無職だ。」

マヤは「それは残念ね。次の雇い主を探せばいいでしょ」

と他人事のようにいわれた。

それ以上の質問を彼女は拒んでいるように見えたので苛立った。

マヤはまだアメリカのスパイ組織にいて、アメリカと中国との良好関係を維持するためにも反共の記事を書く香港の雑誌記者やその他の反政治的なことをしている組織を

調べ上げて密告していた。

キャリアも上がるし実績も認められつつあるのでやりがいがあった。

最近密告して捕まったマフィアが蓮のいた組織だと今知り、内心動揺を覚えた。

「不幸中の幸いね。これに懲りてまっとうな道を歩んだら?」平静を装って答えた。

「お前の仕事がまっとうには思えないけどな」マヤを睨んで言った。

マヤは目を伏せ、

「協力しあえるような関係ならよかったのにね、私達」と言った。

俺はそれ以上何も言えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

灰色の街~彼女と過ごした冬5・~

俺は今日もいつもの場所へ行き、スコープ越しに警備員を狙っていた。

亡命者の男が一人国境を越えて逃げてきた。

つれもどそうとする警官を遠くから狙い、一人、狙撃した。

俺はため息をつき、新しい弾を入れた。

「相変わらずのいい腕前ね」と聞きおぼえのある声がした。

振り向いたら神崎マヤがいて俺の横で腕を組んで見つめていた。

俺は驚いた。

「なんでここにお前がいるんだ」

マヤは笑顔を浮かべて「今は香港の警察よ。中共政府が不審な動きが北との国境であるらしいと疑ってるみたいね。また会えて嬉しいわ」と答えた。

おれはいぶかし気に彼女に聞いた。

「今度は中共のスパイってわけか。また金目当てか。」と軽く笑みを浮かべてみせた。

久しぶりに再会したマヤは相変わらず胸が大きく、年齢も感じさせないほど美しかった。

「ここにきたのはただの偶然よ。今は他の不審者を探しに来たの。貴方とは無関係よ。他に貴方とおなじ事をしてる殺し屋が何人もいた。奇遇ね」。

「そうなんや」俺達は互いに見つめ合った。

瞳やトシヤが偶然、その現場に居合わせたが、慌てて建物の影に隠れた。

「みつけた」、と瞳は駆け寄ろうとしたがトシヤに引き留められて仕方なく様子を伺った。

俺とマヤは二人で国境付近をあとにした。

トシヤは「なんで撃たなかったの。らしくないね」と皮肉たっぷりに言った。

瞳は軽く不敵な笑みを浮かべて「最期の逢瀬だもの。楽しんでからのほうが彼も思い残すことはないと思うの。マヤの真意は測りかねるけど」と言ってのけた。

「あの二人がそうなるとは思えないんだけどな」と少し考えてからトシヤは瞳に尋ねた。

「女の勘。あの二人はお似合いよ。マヤと一緒にあの世へ逝けたら本望じゃないの。

あの女、昔からずっと蓮だけをいつもみてた。」とこともなげに言う瞳。

トシヤは仰天した。

瞳はそんなトシヤを一瞥して「鈍感」と一言だけ言って二人の跡をしばらく目で追っていたがすぐに香港へ戻った。トシヤも「ねぇ、いつから気付いてたの!?」と瞳を追いかけて走った。

たしかに俺は死と隣合わせにいつもぎりぎりで生きてきた。

マヤもそうだっただろう。

俺達はあの時はどうかしていた。

いつ死ぬかわからない極限の状態で再会した。

京子の存在を忘れて、夜の街をマヤと歩き、マヤの宿泊しているホテルに泊まり

見つめ合いながら抱き合った。

今度こそ生身の女だと思った。

マヤは何もいわずに身を任せてきた。

その夜はお互いに激しく求め合った。

あんなにも憎みあっていたはずなのに。

事が終わったあともずっと抱き合っていた。

これから俺達はどうなるんだろう。

マヤはずっと無口だった。

俺も何も話さなかった。

朝がきた。

「帰るわ。仕事に戻らなきゃ」マヤは素早く着替えて部屋を出ようとした。

俺も素早く着替えて「じゃ、また。いつ会えるかわからへんけど」としか言えなかった。

マヤは後ろ姿で手を振って廊下を歩いて去っていった。

自分が宿泊しているホテルの部屋に戻り、煙草を吸った。

「あの女、誰なの?」と声がした。

ぎょっとして後ろをみたら京子がいた。

「ずっとみてたんか。」焦った。

「私は何もみてないし貴方にも未練なんかないわ

安心して。でもまだ成仏できないから帰ってくるのを待ってた。」

と意外に冷静だった。

「じゃぁ、なんでここにおるん!?俺はあいつの事はなんとも思ってないしずっとご無沙汰だったし」と幽霊相手に言い訳しつつ聞き返した。

「こっちが知りたい。なんでここにいるのかわからない」と言われて困惑した。

「あの女は警察にチクったりしないから大丈夫よ。彼女は他の人のスパイで頭がいっぱいだから」。俺は呆気にとられた。

京子は他に理由があってまだこの世をさまよっているらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

灰色の街~彼女と過ごした冬4 「IV」~

トシヤは香港に来た頃、ルナマティーノが再結成記者経験をしたので香港のTVで観れて感激した。

それと同時にもうあのころの自分には戻れない淋しさも感じた。

でも、また絵を描いてみようと思い、油絵用の絵具とカンヴァス、スケッチブック、4Bの鉛筆を用意して書き始めた。

モデルはもちろん瞳。

前みたいに裸婦像を描けないので残念だった。

瞳以外の人間を描く気にはなれなかった。

でも画家としてもう一度やり直すには名前と顔を出すのはもう不可能だった。

自分の絵を気に入ってくれてなおかつ、名前を売りたいと思っていて信頼できる

人間をネット上で探したがなかなか返信が来なかった。

自分はゴースト画家として生きていこうと決めた。

ジョージに連絡してみようかと思った。

彼なら信頼できるし、いいパートナーになってくれそうだった。

しばらく瞳だけを描いていたが、レンを描きたくなった。

地べたに寝ていて蓮の花びらがたくさん体の上に置かれている絵だ。

デッサンを描いてる最中に不意に涙がこぼれた。

生きていてほしいー。

そう願いながら瞳とレンの対決を阻止したい気分だった。

 

一方、西村 豹も2010年にLAから日本の京都に帰国していた。

一時期は東京にいたが、如月薫の個展や松本友也の個展をみて、

刺激を受けた。

いい詩が書けそうな気がした。

それに「DRAIN AWAY」の京也の詩集も読んでみたが、プロ顔負けの

文才と詩人という概念にとらわれない自由な表現に衝撃を受けた。

こいつは面白いと思い、個展を見に行ったら写真や絵もあり、友也の写真と薫やトシヤの絵とは違う魅力を感じた。

周囲にいる詩人と違って豹は京也に邪道だとかいう怒りや嫉妬はなかった。

豹は詩人デビュー後、毎年行っていた退屈な自作の「朗読会」をsukerinoという名前の仲間とやったあとに食事をして、次の日に生まれて初めて自分の出版される詩集の表紙の挿絵を自分で描いた。

中身は今までLAやNY、シンガポールで書き溜めていた詩にした。

発売記念のサイン会が終わった次の日、京都に里帰りした。

自分の原点に戻りたいー。

そんな気分だった。

今は1人でいたかった。

そんな彼が11年末に香港に出向いた理由は瞳が病み気味だというトシヤのメールが

届いたので見舞いがてら、観光に興味ないが、リンの店にも行こうと思ったからだ。

レンとマヤのことなど思い出したくなかった。

皮肉にも一緒にまたトシヤ達と仕事をすることになった。

トシヤ達の話を聞いてるうちにこの裏社会を詩に書いてみたいと思った。

 

「フェイ」にレンが来ないと知った瞳とトシヤは今度は「ジャッキー」という店にレンを暗殺しに行った。

アリサとも久しぶりに会ったが二人はとても食欲がわかなかったので飲茶だけ頼んだ。

台湾料理店にも中華料理コーナーがあった。

「レンはよくここに来るの?」と瞳が聞いた。

「来るけど、昨日と今日はみかけなかったわ。」

「そう」瞳がいい、トシヤはため息をついた。

トシヤはいつになく饒舌にアリサと会話をした。

「そういえば今はカタギなんだってね」

「まぁね。貴方達も色々と大変みたいね。」とアリサ。

「それほどじゃないよ」とトシヤは笑顔で言った。

飲茶を食べた後も瞳は無言でレンが来るのを待ったが来なかった。

今日はこの店が血祭りにならなくてよかったー。

トシヤは安心した。

瞳は相変わらずあまりしゃべらず、笑顔だけみせてたが、その表情はいつになく固かった。

「美味しかったよ」とトシヤは気さくにアリサに挨拶をし、瞳は「また来るね」と一言だけ言ってそれぞれ帰った。

アリサはウェイトレス仲間から色々噂を聞いていたがレンのおかしな言動をトシヤや

リンには伝えなかった。

レンは今までずっと隠れていた。

「あいつら、もう帰った?」とレン。

「ええ、帰ったしもう来ないと思うけどあんた達どうしたの、喧嘩でもした?」とアリサ。

「ま、そんなとこ。俺も理由は知らないけどね。」

「瞳は気まぐれだから貴方のどこが癪にさわったのかしら」

「さぁ(こっちが知りたい)」とレンはいい、サングラスをかけてあたりを伺いながら裏口から出て行った。

京子から気をつけろとはいわれてたが、なかなか理由を教えてくれなかった。

急に隠れろと言われて、アリサにいたことを言わないように頼んで影に隠れて様子を伺っていた。

たしかに何かがおかしかった。

俺を探してるみたいだったがー。

殺し屋の勘が働いて今は瞳達に会っても声をかけたくないと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

灰色の街~彼女と過ごした冬3~

俺は霊能者を探しても見つからなかったので仕方なくホテルにチェックインした。

やはり受付係には京子はみえてないらしく「シングルですね。」といわれた。

京子は「セミダブルがいいなー。」と自分は寝る必要もないのにつぶやいていたが

聞こえないふりをした。

部屋に入り、ベッドに座って、ライフルに新しい弾を入れた。

自動銃の拳銃にも入れて弾が入ってる部分を手で回した。

そして撃つ仕草をした。

ため息がでた。

部屋をでるときに用心深くあたりを見回しながら外にでた。

電話ボックスに入り、シャオミンに電話をした。

リックと義理の兄が名乗っていたのでその名前で呼んだ。

「香港で有名な霊能者いないか」と俺は聞いた。

リックは「なんだ、変なもんに憑かれたか。」と笑っていた。

「本当にヤバイんだ。女性で」とだけいった。

「女の霊にまでモテるのか。羨ましいな」とからかわれたので

「冗談いうな。知ってるなら教えろ」と聞いた。

「あのばあさんなら知ってるよ。シナという霊能者。」

と電話番号と場所を教えてくれた。

九龍にいったらシナという霊能者がいた。

彼女に霊視とお祓いを頼んだ。

お金ならいくらでもある。

シナは「悪い霊でもなさそうだね。あんたを守ろうとしてくれている。

しかし、いつまでも一緒にいたら身がもたないだろうから一応除霊してみるよ」と

言って、別室に案内されて、俺はベッドに寝かされた。

そして太くて長い線香に火をつけて煙で全身を包んだ。

何かの灰を体に撒かれた。

ばあさんはお経を唱え始めた。

しばらく経ったあとすごい勢いでシナは風で吹き飛ばされた。

その間俺は京子に抱きつかれていた。

体が透けて感触を感じなかった。

京子は白いワンピースをいつも着ていた。

どうやらお祓いは失敗したようだ。

俺に水をかけたあと、「彼女はあんたに危険がなくなるまで離れる気はないようだ。

彼女を成仏させるにはあんた次第だね。」といわれて、いつもの半額を要求されて金を払って店をでた。

俺はなんだか落ち込んで「ジャッキー」に行き、台湾料理を一人分注文して食べた。

ホテルに戻ったあと、京子を抱きしめようとして手を伸ばしたが体が透けて通りすぎてしまった。

なんで最初だけ感触があったのか謎だ。

京子に聞いてみた。

「ああ、それは私が強く念じたからよ。今は体力が落ちてきちゃった。

ずっと貴方のそばにいたのに気づかなかったの?」としょうがないという表情でいった。

俺は呆然としてしまった。

「とにかく余計なことはするなよ」と言ってシャワーを浴びてベッドに寝た。

京子はバスルームを覗きにこなかったので複雑な気分だった。

なんだか怖さよりも切なさがこみあげてきた。

もう抱くこともできないのか。