薔薇色の人生 Ⅲ

はてなダイアリーで書ききれないことを書きます。スピリチュアルなど。よろしく。

灰色の街~香港編・彼女と過ごした春2~

そのころ、瞳はひさしぶりに夢を見た。

ある島に瞳は一人、丘の中をさまよいながら歩いていた。

もう長い事歩き続けていた。

誰もいない。

白いドレスを着ていた。

何かが足りないー。

彼自身、なぜ歩き続けているのかわからない。

霧が深く立ち込めていた。

静かな風の音がするだけ。

かすかに自分を呼ぶ声がした。

ある洞窟を見つけた。

水が飲めるかもと思い、中に入ったら何か光がみえた。

その光を目指して歩いていったら、何から天井から降ってきていた。

白い羽根だった。

瞳は両手を広げて羽根に手を伸ばした。

下をみたら、大きな翼があった。

瞳はそれを拾い背中につけてみた。

これできっと飛べる。

どこまでも。

いつの間にか場面が変わり崖の上にいた。

飛ぼうとした瞬間、目が覚めた。

白い壁の病室だった。

トシヤと豹が心配そうに顔を覗き込んでいた。

「喉乾いた」瞳はぶっきらぼうに言った。

トシヤは急いで水を取りにいった。

豹は「よう寝たな。8時間はたったで。」と無邪気な笑顔で言った。

瞳はふっ淋しげに笑った。

声はでなかった。

トシヤがミネラルウォーターを買って戻ってきた。

愛しい顔。

瞳はトシヤを眺めて安心した。

灰色の街~サイドストーリー9~薫とヨシキの出会い

薫は美術教師との不倫の末に恋が破れ、絶望した。

三上先生ー。彼は奥さんとは一年前から別居していて冷え切った関係にあった。

絵のモデルになったことがきっかけで3か月だが濃密な時間を過ごした。

初めての相手だった。

ラブホテルで逢引きを繰り返した。

ブスだとクラスメイトにからかわれていた薫はいつも体を褒めてくれて女として認められてすごく嬉しかった。

お互いに情熱的で真剣に愛し合った。

友也は当然知らない。

誰にも言えない恋。

自分の描く油絵も褒めてくれた。

先生は薫に執着していた。

彼も美青年でモテた。

女生徒に人気があった。

三上の妻はもう三上を愛していなかった。

そばにいるだけで邪魔だと思い、彼の死を願うほどだった。

今のようにSNSがあれば毎日投稿していただろう。

いっそ愛人でも作ってくれればせいせいすると。

死ねばいいのにと。

薫は誰もいない美術室でも放課後、三上と愛し合った。

お互いに必要としていた。

誰もクラスメイト達は薫に彼氏がいるとは思わなかった。

だが、ホテルから出てくるところをある女子生徒にみられてしまった。

彼女もまた三上に片想いだった。

彼女は嫉妬のあまり、三上がある女子生徒と不倫の関係にあると学校中にビラを学校の屋上から撒いた。

学校中で相手は誰かと話題になった。

三上は薫とアイコンタクトを取り、メールをした。

「何も心配するな」とだけあった。

彼は職員室に呼ばれて、事実確認をされた。

三上は薫の名前は出さなかったが認めてしまった。

妻も逆上した。

それまで邪険に扱っていたのに。

離婚届けを突き付けて出て行った。

三上は離婚届けを出し、学校にも辞職願いを出して、

薫になにも告げずに去って行ってしまった。

薫は絶望した。

死のうと思い、

その日の放課後、踏切りを超えて線路に飛び込もうとした瞬間、手を引っ張られて元に

戻された。

電車が目の前を通りすぎた。

「おい!何してんだよ!?」

横をみたら特攻服に身を包んだ、金髪のロンゲの男に声をかけられた。

クロムのKANONに瓜二つだったのでびっくりした。

立花も似ているから世界で3人目の男だろう。

「離して!」と言いながら薫は泣きじゃくっていた。

「俺、柳沢夜詩貴。ヨシキっていうんだ。隣街に住んでる」

夜詩貴はたまり場になってる自分の部屋に薫を招きいれた。

不良っぽい少女と少年がたくさんいた。

少しビビった。

夜詩貴から缶ビールをもらって初めてお酒を呑んだ。

とても苦かった。

「私は如月。。。薫」

次の週末に会う約束をした。

族の集会だった。

夜詩貴はその時、レディースの女と付き合っていた。

「薫ちゃん、、、だっけ?今度の週末きて」と笑顔で言って家までバイクで送ってくれた。

次の週末、湘南まで夜に出かけて行った。

もうどうにでもなれという気分だった。

それに、夜詩貴に少し興味を持った。

たくさんのバイクがあった、族の集会。

今どきいるんだ、と薫は驚いた。

薫は夜詩貴の後ろに乗った。

バイクを走らせながら夜詩貴は言った。

「薫ちゃん、俺と一緒に死ねる?」

「え?」薫は聞きなおした。

夜詩貴はスピードをあげてバイクを走らせた。

薫は必死に彼の背中にしがみついた。

彼女は嫉妬していた。

だが、夜詩貴が族のリーダーに可愛がられていた為に、レディースのみんなからも薫は

気にいられた。

バイクの乗り方を教えてもらった。

部活は休みがちになっていった。

茜は心配した。

薫の両親は放任主義だった為に何も子供の事は知らなかった。

母はピアニストなのでいつも海外に遠征でいなかったし父親も夜遅かった。

友也に惚れるまで集会に出続けた。

 

 

 

 

 

 

灰色の街~サイドストーリー~友也の苦悩~

友也は18になった頃、まだ薫とつきあっていた。

特に理由もないのに急に眩暈がしてよく倒れてしまうことがあってよく薫達を心配させた。

保健室に運ばれた。

失神したのだ。

保険の美人の先生は「原因がわからないけど、今度倒れた時は大学病院へ行ったほうがいいわ」と深刻な表情で言った。

そしてしばらくしてまた友也は眩暈がしてまた失神してしまった。

今度は体育の授業の時だった。

担任やクラスメイトのかすみ、義理の両親と一緒に友也は大学病院の診察を受けたが

どこも体には異常がなかった。

脳神経外科の教授に「たぶん、精神的なもんだろう。何かトラウマ的な物を抱えてるかもしれない。大学受験も控えてることだし。

心療内科に行くことをお勧めする」と言われた。

友也は全否定したがおばさんやおじさんに強く勧められて、初めて診療内科を訪れた。

俺はとうとう頭がいかれちまったのかー。

友也は自嘲気味にカウンセラーに色々話して、精神安定剤をもらった。

義理の両親は先生に尋ねてみた。

「彼は生まれた頃に両親を亡くし、貴方達が引き取って育てたそうですね。たぶん、彼もそのことを知ってるからトラウマに近い、寂しさから精神的に無意識に本当の両親の愛情に飢えていてこのような思春期に陥りやすい症状になってるのだと思います」と簡単に説明した。

おじさんとおばさんは言葉を失くしていた。

姉も弟も。薫や沢田アキラ、茜も心配した。

友也は無理に明るく振る舞い、「たいしたことねーよ。ただ、体力が落ちてるだけだから。受験も近いしな。俺勉強嫌いだから」と笑った。

アキラは「そっか。無理すんなよ」とだけ言った。

薫は事情をおばさん達から聞いて、心穏やかじゃなかった。

彼を支えてあげたい。

アキラ達も同じ気持ちだった。

友也は一旦、実家に帰ることになって荷物を整理していたら、実の父親が遺したフィルムを偶然みつけた。

急いで友也は別室に行ってネガを写真にした。

そこには生まれたばかりの友也と友明と美也が3人で仲良くソファに座っていた。

友也は美也に抱かれていた。

「親父。。。!」友也は涙が頬を伝って流れるのを感じた。

「こんな物遺して逝きやがって。。。へへ」

友也は泣き笑いの表情を浮かべた。

その現ぞうされた写真とフィルムをもってアパートを出た。

義理の両親にも誰にも言わなかった。

 

 

 

 

青い血の香り

翌日、栞奈達は田口英子が通っていた高校に出向き、教師や校長、クラスメイト達に

事情聴取をした。

校長や担任は事件が公になることを渋っていたが栞奈が熱心に聞きこみ調査をしたおかげで少しばかりの収穫を得た。

女子高だけど私服で登校する者もいる不良もいれば、今だにこの女子高は子ギャル風の

制服だったので山下にとっては目の保養になり、栞奈に睨まれた。

栞奈達は田口が半グレと呼ばれるグループとつるんでいたことを知り呆然とした。

クラスメイト達から聞いた。

とても外見からは想像がつかなかった。

いつも塾に行くふりをして渋谷センター街や池袋、新宿方面で遊びまくっていたそうだ。

真面目生徒からカツアゲまでされたとある女子生徒は怯えながら供述をしてくれた。

結構怖がられていた。

イジメはしていないみたいだ。

成績はいつもトップで優秀だったそう。

栞奈は今度はいつも遊び歩いていたグループの1人に事件当日のことと、喧嘩していたある女性について何か心あたりがないか聞いてみた。

「ああ、知ってる、英子はあの女性の付き合ってた彼氏と出来ちゃって元カノと修羅場になって喧嘩したけどもう自分の物だからって憤慨してたわ。

うちらもよく相談された。

ヤバイ系の男だったからやめとけっていったんだけど、あの子は惚れっぽいからね。」

それ以上は栞奈達を警戒したのかすべてを話してはくれなかった。

今は自粛してそこには行ってないようだった。

念の為に池袋に行ったかも栞奈は聞いてみた。

彼氏とカラオケBOXに行ったことはあるらしかった。

自慢されたらしい。

「なんだか、意外ですね」と山下。

「そうね。この年齢は思春期だし、窮屈で退屈な学校生活に息がつまりそうだったから逃げ出したかったんじゃないの。すべて日教組が悪いのよ」と栞奈。

「へ?」ときょとんと山下。

「まともな日本の近代史も教えてないし、自虐史観とか叩きこまれると非行化もありえるわ。元文科省大臣の言動に賛同する」と栞奈。

「蒼井さん、ネットに踊らされすぎじゃないですか。」と山下。

「これは私の主観よ」と反論しつつ、山下の前を歩いてタクシーに乗って今日も報告をしに署に戻った。

山下はスマートフォンでまたMITSUKIのバンドの曲を聴いていた。

タクシーを降りて、栞奈は署に報告書をデスクに座り、昨日と同じようにノートPCに報告書をまとめて書き、プリントアウトとUSBにコピーしてから上司に渡してから帰る時に玄関で山下と一緒になった。

山下はまたスマートフォンで五月蠅いメタルを聴いてるようだった。

「あんた、またなんとかっていうメタルを聴いてるの。少しは真面目に仕事しなさいよ」と注意せずにいられなかった。

「いや、さっきの事情聴取をしていて思ったんですけどやっぱりこれは名曲だなぁと思って。特にこの歌詞、聴いてみてくださいよ」と山下は片方のヘッドホンを栞奈に渡した。

栞奈は仕方なくヘッドホンをして聴いてみた。

サビの英詩が妙に心に響いた。

爆音で音は嫌いだったが。

「これがどうかしたの」と栞奈は山下が何をいいたいのか知りたくなった。

「この歌詞は何かに縛られてる奴らが聴いたら開放されるんじゃないかと思うんです。

例えば、好きでもないことを無理やり強いられて毎日自分を偽って生きてたら自由になりたいとか、例えばロボットみたいに命令されたことばかりに従って生きてた人達がこの曲を聴いたら覚醒して本来の自分に戻れるかもしれないって思うんです。さっきの女子高生達や教師達をみててなんとなくそう思った。」といつになく山下は熱く語った。

「そんな厨二病みたいなこと考えてたの?そんなんで少年犯罪が減るとでも?」と

一緒に渋谷署をでてある居酒屋で生ビールを呑みながら焼き鳥を食べながら話した。

「そこまでは考えてないですけどね。」と山下もビールを呑んだ。

「音楽で世の中が変わったら誰も苦労はしないわ」と栞奈は田口英子の顔を思い出しながら言った。

マンションに戻ってからその曲のサビのフレーズの歌詞だけ気になった。

(自由になる為に生まれてきた、か、、、それで人生が変わったら少しは犯罪も減るかしら。)酔った頭でぼんやり考えた。

栞奈の本棚には二人の生死を分けた映画化された特攻隊の原作本が置かれていた。

彼らにも未来があったはず。

今の日本の現状を知ったらどう思うだろう。

久しぶりにページをめくりながら、眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

青い血の香り

翌日の午後、新大久保にガイシャの写真を持って栞奈達は向かった。

飲食店街をたくさんの人々が歩いていた。

いつもの風景。

「この女性をみかけませんでしたか?」

韓国料理店のウェイターやウェイトレス達に聞いた。

「いやぁ、たくさんの客が毎日くるから覚えてないねぇ。

よっぽどの有名人でない限りは」とそっけなく返答が返ってきた。

「そうですか。お手数かけました。」と栞奈は仕方なく返事をして軽く会釈して店をでた。

「それにしても冷麺は美味しかったですねぇ」と呑気に言ってる山下。

「そう?プライベートでは絶対にこない店だわ。」と栞奈。

外にでてから無表情で山下に言った。

ゲームセンターやティッシュ配りの人にまで聞いて歩き回った。

もうすぐ3月。

喫茶店に入り、珈琲を注文して一休みをした。

「やっぱりここはいつきても日本人離れした人達が多いわね。

どう?夜にまたポンシンタンでも食べる?」と悪戯っぽく山下に話しかけた。

山下は顔がひきつって「いやぁ、あれは癖がありすぎるしちょっと」と遠慮した。

肉の材料を聞いて耳を疑ったが日本語訳を知ってドン引きした。

唐辛子とニラをたくさん入れた韓国独特の肉鍋。

山下は無理やりビールで流しこんだ。

「あれは韓国の食文化だし、民族性がよくでてる。

否定はできない」と流石の栞奈も悔しそうだった。

あの時栞奈は別の料理を頼んで食べながら山下の反応を興味深そうに見ていた。

「ま、私もイルカやくじらを食べる地域で育ったから非難される痛みはよくわかるけどね。それでも食文化だけは大事にするわ。食べてこそ供養」と栞奈。

山下はうかつにも一度だけ試してみようかと思ってしまった。

彼はグルメだった。

「ところで食事代もみんな経費で払うんですか?」と山下。

「当たり前でしょ。」と当然のように珈琲を飲みながら答えた。

勘定を済ませて店を出るときに「この女性を見かけませんでしたか」と栞奈は警察手帳と田口英子の写真を見せて質問した。

「あ、夜にみかけましたよ。道の真ん中で」とレジの女性。

「え!?」と顔を見合わせた二人。

「なんかお水系の女性と殴り合いの喧嘩をしてたねぇ、2~3日前に。」

「そうですか。なんででしょうね」と山下。

「まぁこの辺ではよくみかけるからね。珍しく制服姿だったから覚えてますよ。

それがどうかしたんですか。」と店員。

「実は港区の埠頭で死体で発見されたんです。」と栞奈。

店員は青くなった。

「物騒な世の中ねぇ」といっただけでそれ以上は言わなかった。

栞奈はその喧嘩相手の特徴と服装を詳しく聞いてから店をでた。

「今日はあたりね。ガイシャの友人関係も調べたいからこの制服の高校にも行ってみるわ」と目が光った。

山下は「なんでこんな夜遅くにこの街にきてたんだろ?」

と不思議に思った。

栞奈は「塾帰りに遊びに寄ったんじゃないかしら、友達と。なんで喧嘩になったのかわからないけど」と顎に手を当ててしばらく考えた。

ここは新宿駅から近い。

喧嘩相手は歌舞伎町にいる可能性が高かった。

彼女の仕業じゃないのは確かだろう。

だとしたら女の常連客か男ー?

まだ、血の匂いは感じなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

青い血の香り

MITSUKIは今年こそ再結成してからまだ1枚も出ていないアルバムのレコーディングの佳境に熱を入れていた。

今日は㏠中新曲のミックスダウンをした。

たくさんの機材に囲まれながら、真剣に音を聴きながらエフェクトをかけたり、微妙な音のチューニングをしたりその作業は夜中まで続いた。

一週間後には自分達の映画のプレミア試写会の為に日本に一時帰国する。

それまでに仕上げなければ間に合わない。

でも妥協はしたくない。

1人葛藤していた。

もう3日間も寝ていない。

こんなのは日常茶飯事だった。

体力の限界が来ると貧血気味になる。

鉄分をなるべく多く採るようにしているがどうしても足りなくなって時には倒れてしまうこともあった。

今日はもう限界だー。

彼はマネージャーでもある弟の龍樹(たつき)に「ねぇ、あとで、休憩に入るからその時に牛乳をもってきてくれ」と頼んだ。

龍樹は「はい、わかりました」と心配気に答えた。

彼もまた万年鉄分が不足していた。

更に2時間が経過した。

そろそろ休憩にしようとMITSUKIが椅子から立ち上がった時に眩暈や立ちくらみを覚え、そのまま椅子から床に倒れてしまった。

秘書の白人女性が「MITSUKI!」と口に両手をあてて、叫んだ。

MITSUKIが再び意識を取り戻したらそこは白い壁の部屋だった。

また病室に運ばれたのか。

これで何度目の輸血だろう。

MITSUKIは世界的に類をみない奇病の「鮮血欠乏症」という持病をうまれつきもっていた。

完治する見込みはない。

先祖代々から受け継いだ持病だった。

第一子にだけ罹る奇病だった。

毎年最低一回でも輸血をしないと彼は死んでしまうのだった。

まるでヴァンパイアみたいだー。

MITSUKIはそうひとりごちてほほ笑んだ。

 

一方、東京で蒼井栞奈はわざわざ、昔流行ったドラマ「フェアじゃない」という刑事ドラマシリーズのブルーレイを部下の山下にレンタルさせてもってきてもらい、一緒に徹夜で観た。

誰もいない、署内の部屋で。

ガイシャの名前は田口英子(えいこ)。イニシャルはT。

犯人が自分の名前をわざわざ教えるような浅はかな人間には思えなかった。

十代の美少女だった。

血はほとんど搾り取られていた。

おそらく犯人は血に飢えたサイコパスの男性に違いないと睨んだ。

「なんだか吸血鬼みたいな星ですね」と山下が一言。

全部見終わった栞奈が一言。

「このドラマを忠実に再現するなら犯人の狙いは私ね。そして犯人はー。」と山下を

見据えていいかけた。

山下は慌てて「やめてくださいよぉ。僕は蒼井さんに恨みなんかひとつもないですよ」と否定した。

「でも、貴方は私の思想が嫌いでしょ。それに貴方が大切にしていたCDを踏んで割ってしまったこともあるし恨まれても仕方ないわ。ある意味踏み絵ね、根に持たれても仕方がないわ」と顔色ひとつ変えずに言った。

「たしかにあの時は軽く殺意を感じましたけど、、、て、違います!僕がそんなことで人生を無駄にするような人間にみえますか!?」と栞奈の目を見て全力で否定した。

「そのように思わせて私達警察官の団結力を奪うのが犯人の目的よ。わざと捜査を混乱させようとしてるみたい。悪かったわ、疑うようなことをわざと言ってしまって」ときっぱりと言いきった。

「でも、わざわざ参上とかって俺達に挑戦状を送り付けるような犯行はなんだか舐められてる気がするんですけど」と山下は疑いが晴れて安堵してから推理を始めた。

「まったくだわ、パクるあたりがいかにも不逞鮮人らしい。明日新大久保に行くわよ。」と言って警察署をあとにした。

不逞鮮人!またか。

山下は半ば呆れた。

いつも彼女はまず最初に在日コリアンを疑ってかかる。

「不逞鮮人」とはいつも犯人探しの際に必ずでてくる栞奈の口癖みたいなものだった。

ほとんど当てが外れているのだが。

確かに年間の外国人犯罪率の統計1位はダントツで在日コリアンだった。

次に栞奈の口から出てくるのが「支那人」という言葉。

山下はてっきりラーメンの種類かと思った。

池袋と新大久保を捜査してから血の匂いとやらの正体を探すのが栞奈のやり方だった。

山下は自分達の捜査の仕方を外部には漏れないように注意した。

レイシスト扱いされかねないからだった。

新米の山下は最初から血の匂いの勘に頼ってほしいものだとため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小説2~青い血の香り~

  1. 蒼井栞奈(あおいかんな)は検挙率ナンバー1の女性の刑事だ。

    犯人を血の匂いで感じ、その直感に従って状況証拠を揃えると必ず真犯人を捕まえることができた。

    実際に匂いを感じたことはない。

    観念的なものだ。

    彼女以外にそれを感じることはできない。

    周りの刑事達や上司や部下には呆れられるが必ず成果をあげることができたので誰も彼女の捜査の仕方に最初は抵抗するが、最終的に成果を上げるので、驚愕される。

    彼女の部下で最近この部署に配属された、山下警部は彼女を最初の事件で一緒に捜査をしていて敬愛されている。

    彼は世界的に有名なロックバンド「ROSE-X」の熱狂的なファンで特にドラムとピアノと作詞作曲担当しているMITSUKIをほぼオタクと言ってもいいくらいに応援している。学生時代は海外までライブの追っかけとバンドのコピーまでしていたくらいだから筋金入りだ。

    コスプレまでしていたほど。2年前の日本ツアーは全部行ったと豪語していた。栞奈にもしつこく布教してくるのでうんざりしていた。

    栞奈はもうひとつ、ある思想を大事にしていた。

    それは日本を愛する心だった。

    毎回逮捕した犯人の中には在日韓国人やがいて、いつも本名でなく通名でTVでニュースで事件のテロップに本名じゃなく通名で流されることにいつも抵抗を覚えていた。

    いつも上司とそのことで揉めることがあった。

    日本人はちゃんと本名で新聞やTVで報道されるのになぜ在日の犯罪者だけ日本名で報道されるのか、納得がいかなかった。

    もちろん、韓国や中国は全員敵だと思っていた。

    そして歴史認識も保守と呼ばれる層と同じだった。

    毎年8月15日には英霊の為に靖国神社に参拝していた。

    知覧の特攻隊記念館や、広島の大和ミュージアムにも行ったことがある。

    国の為に散っていったたくさんの先人達ー。

    栞奈はいつも彼らに思いを馳せていた。

    今の仕事は左派よりの刑事に嫌われる勇気をもって自分の思想をつらぬかなければいけないから仕事上、やりにくかった。

    台湾は親日なので好きな国のひとつだ。

    今の地位に上りつめるまでに死体処理だけの仕事も任せられたこともあった。

    その中で一番やるせなかったのが自殺者の遺体処理だ。

    逮捕したくても自分で自分を殺してしまったのだから解決できない。

    どんな死体も美しいと感じたことはなかった。

    死の匂いは好きじゃない。

    もう2度とあの仕事には戻りたくなかった。

    そんな彼女に新たな殺人事件が発生した。

    現場に駆け付けると、刺殺死体の横に「T参上」とダイイングメッセージが書かれていた。

    「なんでしょうね?これは」と山下が尋ねた。

    栞奈は「なんかのドラマの観すぎで模倣したんじゃないの、字が下手だからたぶん外国人の仕業に違いない」と唇の端を上にあげて言った。

    死体とは違う血の匂いがした。

    「すぐに血痕の血液を採って鑑識に回して」と無表情で栞奈は周りにいた警官に命令をした。

    1人の警官は死体と血文字をカメラに収めた。

    当然事故現場の周りには黄色いロープが張られていた。

    次の日、丸井のデパートの中を歩いていたら部下の山下が

    香水売り場の所で立ち止まった。

    「あ、ROSEのMITSUKIの新しい香水だ。僕初回限定で買ったんですよ~。自分の血を一滴入れようとしていたみたいですよ。」また一個買おうかな。」といいつつ、一本の香水を手に取り、腕につけて薫りを嗅いでいた。

    栞奈は山下を白い目で彼をみながら看板の女装みたいな化粧をした男の顔を見て思った。

    自分の血ねぇ、面白い発想をする男だわ。

    もっとも彼は犯罪をするような血の匂いを発することはないから

    興味をそそらない。

    困ったことに栞奈は恋に落ちるときも相手の男に血の匂いを感じてしまうのだった。この場合は澄んだ血の匂いだが。

    栞奈はジャズピアノが大好きで寝る前もジャズが流れているスナックやBARに寄って一杯ひっかけるのが好きだった。

    「早く行くわよ、彼女にもプレゼントしたら」と笑いながら山下を

    からかいながら警察署に戻った。

    山下は慌ててあとを追って走ってきた。

    署内では死体の男の写真が白いボードに貼られてあり、その隣に血文字の写真が並んでピンで止められていて、上司が説明していた。

    栞奈は腕組みをして近くのクラブや夜間に起きた事件の詳細を熱心に聞いた。

    ここから血の匂いに無事たどりつけるだろうかー。