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薔薇色の人生 Ⅲ

はてなダイアリーで書ききれないことを書きます。スピリチュアルなど。よろしく。

灰色の街~妄想彼女2~

2016年9月、俺は別れ話を高美(こうみ)に切り出す為に初めて、スナック

「FUMI」を訪れた。

横田基地の米兵の常連客が多かった。

店の内装は50~60年代のアメリカと日本を足して2で割ったような雰囲気でジャズが似合っていた。

カウンターに男が一人、背広姿のサラリーマン風の男が目立ってウィスキーのロックのグラスを手にしていた。

俺も同じ物を頼んだ。

まだ、残暑が厳しい季節だった。

店のママは冬子さんが言ってたとうり老婆が金髪で店をひとりで切り盛りしているようだった。

若い米兵と二人でひそひそ話をしてクスクス笑っていた。

想像以上に実年齢より若いファッションをしていたので驚いた。

壁には富士山の油絵が飾ってあった。

飲み物をコースターの上に置かれた。

孫はママ曰く「ガスステーション」の店員らしい。

普通にガソリンスタンドっていえと俺は舌打ちしたい気分になった。

ママやウェイターとウェイトレスのそんな話を聞いていたら、一人の女がサラリーマン風の男の隣に座った。

若いOL風の女性でこの店に寄ったようだった。

女は男が気に入ったらしく同じウィスキーを頼みながら口説いていた。

俺は横目で二人をみながら、2杯目のロックのおかわりをした。

あいつ、遅いなー。

高美のことを待ちながら、どう切り出そうかと迷っているうちに隣の男女は

もう店を出て行ってしまった。

男には孤独な背中を感じた。

新たな出会いの始まりなのに嬉しくないのか。

「あんたも女を待ってるのかい」と不意にママにはなしかけられた。

若い米兵にはいい年なのに「フミちゃん」と呼ばれていたのですぐその辺を言及したくなったが、さすがに怒られそうな空気を醸し出していたのでそこには触れず、

「いや、逆。別れ話」とつい話してしまい、しまったと顔をしかめた。

フミちゃんと呼ばれてるママは「出会いもあれば別れもある。ここも流れ者のたまり場だよ。特にあんたみたいなね。」とにやりと笑みを浮かべて2杯目のグラスを俺の前に置いた。

俺は冬子(とうこ)さんが年を重ねたらこの人みたいになるんじゃないかとなんとなく思った。

高美がきた。

彼女は自然に俺の隣に座り、ジントニックを頼んだ。

年老いたママはROCKやヴィジュアル系の音楽に興味がないらしく高美のことを誰か知らないようだった。

高美はサングラスをしたままだった。

「ここ、貴方の趣味に合わなそうね」と一口呑みながらあたりを見回し、音楽を聴きながら言った。

「まぁな、そのほうが話しやすいから」と笑わずに俺は言った。

「場所、変えた方がよくない?」と高美。

「そうだな」と高美がジントニックを呑み終えるのをだまって待ちながら

近くのテーブルに移動した。

「で?話って何?」金髪の長い髪を赤いマニキュアの指でかき上げがら目をつむりながら聞かれた。

「お前、なんで俺がいるのに空広に浮気してんねん。順序違うやろ。もう寝たんか。あいつと」と重い口調で睨んで言った。

高美は無視して煙草に火をつけた。

「煙草を吸う女は嫌いや」と俺はそのまま睨み続けていた。

高美は吸いかけた煙草を灰皿に押しつけて火を消した。

「空広とはまだ寝てないわ」真っ赤な口紅で唇の端を上に曲げながら答えた。

「でも、貴方とはもう潮時ね。飽きちゃった。別れましょう」と先に言われ、

怒りのあまり殴りたくなったが、テーブルの下で右手を左手でなんとか抑えた。

「わかった。俺ももうお前とこのまま続けていくのは限界」と固く目と閉じながら言うのに精一杯だった。

高美はそんな俺をみて憮然として「最後の依頼があるんだけど、このアイドルを消してほしいの」と一枚の写真をテーブルの上に置いた。

写真をよくみたら、よく音楽TVでみかけるアイドルバンドのギター&ボーカルだった。

よくみたら割と可愛いかった。

年齢は21~2歳といったところか。

でもなんで高美が憎んでるのか。

「彼女、叩けば埃がたくさん出てくるの。面白いわよ。調べてみたら。

デビュー前まで男性関係派手だったけど、デビュー直前にすべての男と縁を切って今は独り身。でもジャンキーの噂がある。あんた達の仕事でしょ。」

高美の目が光った。

「わかった。最後くらいはお前の役にたつ仕事をするよ。」と俺はアイドルの写真を見ながら答えた。

「でも、なんでこいつのことを知ってるんや?とてもお前が正義感で動いてるとは思われへんな」と写真をみながら言った。

高美の性格は知り尽くしている。

空広の女だから邪魔なのだろうか。

「だって彼女は私よりも若くて肌もピチピチしてるでしょ。歌もギターも私よりも下手。TVだと口パクで当てふり。業界では評判悪いわよ」と高美。

俺はアイドルの目の奥を疑視しながら「過去にはやってる可能性は高そうやな。

一応、麻薬ルートの出どころは調べておく。これでこのアイドルは芸能界から干される。知りあいの記者に記事をリークさせる。これで満足だろ」

と俺は高美をみて言った。

「できれば命も消してほしいんだけど」と上目使いで更に言ってきた。

「もちろん、タダじゃないわ。このカードの口座からお金を引き出して貴方の口座に振り込む。」

俺は淋しくなった。

「もう会うことはないのか、俺達。それに命まで抹殺するほどのことはしてないだろ、この女は」と流石に不味いと思い殺害の依頼だけは断った。

ただでさえ、テロ関連のことで忙しいのにいちいち麻薬汚染のことまで関わってる暇はなかった。

しかし、建前は麻薬汚染をなくす目的で今の仕事を引き受けたのだからすべて断るわけにはいかない。

「もういい。2度と会うことはないから。さよなら」と残りのジントニックを俺の頭に思い切りかけて走って出て行ってしまった。

俺が振られたのにまるで悪者みたいな扱いをされるなんてなんて理不尽なんだ。

ウェイトレスにお手拭きをもってきてもらったが「いや、ええよ」と言って自分のハンカチで顔を拭いた。

「あんたも災難だねぇ、変な女に捕まっちゃって」とママは苦笑していた。

俺も苦笑して「今度は新しいまともな女を連れてくるよ」とだけ言って店をでた。

不思議と涙もでなかった。

悲しいはずなのに、虚しさのほうが残った。

後日、松田友美に会って事実を調べて記事をリークしたか、彼女の雑誌社にわざわざ出向いて行って確かめた。

「たしかに、妹さんは現役のジャンキーという噂がネット上に出回ってた。全部デマだけどね。バイなのは真実だった。あのアイドルの事務所とは揉めたくないから記事はたぶん出ないと思う。社長は一度過去にあの大手の事務所からでっかいスキャンダル記事もみ消された事があるからね。悔しいけど今回ばかりはね。訴訟事件起こされたら勝てる自信ないし。」とため息をついた。

「それより私の連載の方をこっちでは重宝されてるの、あのアイドルが引退したら、

たぶん記事になると思う。他を当たってくれない?」と、友美は申し訳なさそうに俺に謝った。

「いや、いいよ。歌姫の言うことを鵜呑みにした俺がアホやった。」

松田友美と俺は互いに微笑んだ。

高美と仕事場で会った時にその事実を告げたら、「そう、わかったわ。ありがとう。その事実だけで十分よ。」ともうそのアイドルのことは気にしていないようだった。

空広と何か進展があったのだろうか。

高美は最近上機嫌だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

灰色の街~サイドストーリー7~奇跡~

カメラマンの松本友也はノンフィクションライターの松田友美を嫌っていた。

父親の松本友明の本を出したからだった。

取材にこられたが断った。

にも拘わらず父親の友人達の証言を元に不倫ネタまで書かれて内心不愉快だった。

仕事場の廊下ですれ違うたびに悪態をついたが、彼女は無視してほほ笑む程度でうまく交わされた。

しかし、最近友美の周辺であの造船事故の真相を暴く連載を始めたとたんに、

何者かに編集長が刺されたり、友美がそこの雑誌社を解雇されたのであきらめるだろうと思っていたが別の雑誌社が彼女の記事を高く評価していて連載を再会した。

智宏のことも取材されたこともあって、友美への怒りは消えて彼女の身が心配になってきた。

松田友美はあるドラマのヒロインに似ていた。

仕事の鬼みたいな女性。

美人ではないが、なんだか守ってあげたくなるタイプだった。

同じ雑誌で写真の撮影をしていただけに急接近していた。

もし友也が結婚していなかったら付き合っていたかもしれない。

そんな中、また事件がおきた。

2016年5月1日の深夜、たまたま二人で生存者の取材に行き、原稿と写真チェックをしていたときだ。

1人の美人のサングラスをかけたグラマーな女性がピストルをもって部屋に近づいてきた。

深夜になろうとしていた。

「その原稿をこちらに渡しなさい」と、友美に銃口を向けて言った。

友美は青くなりながらも「もし、いやだっていったら?」と尋ねたら

「仕方ないわね、無駄な血は流したくないんだけど」と銃を机に向けて撃った。

友也はとっさに友美の肩を抱き、左側に押しながら「逃げろ!」と叫んで原稿をとろうとしたら今度は友也に銃を向けられた。

友也は両手をあげて顔をひきつらせた。

女性はピストルの引き金を人差し指で引こうとした途端、一匹の蝶が彼女の目をかすめて横切ってまわりを飛んでいた。

「え?」と女性は目で蝶を追っているうちに今度は女性の背後に凛達がきて、女性と撃ち合いになった。

他にも数人原稿を奪いにきた男たちがいたが凛達と応戦した。

友也は松田に「今の内に逃げよう、あいつらに任せとこう」と言って友美の手をつないで、非常口から逃げた。

友美は原稿を手にして、友也に手をひかれて逃げた。

背後で聞きおぼえのある声がした。

「マヤ!なんでお前がここにいるんや!?」

蓮の声だった。

それまで凛達と銃撃戦をしていたマヤはすぐに逃げて姿を消してしまった。

蓮はあとを追いかけた。

男達は凛に撃たれて倒れていた。

しばらく部屋を舞っていた蝶は姿を消した。

後日、女性の行方はわからずじまいだった。

できるだけ遠くへ逃げて、繁華街のところで足を止めて二人は息を整えた。

「ここまでくれば大丈夫だろ」と友也は松田に話しかけた。

「そうね」と松田。

友也は松田を痛々しく感じた。

あいつら、いつも智宏が以前働いてた店の常連客だけど何者なんだー?

友也はまだ凛と蓮の正体を知らなかったがあとで会ったら礼を言おうと思った。

「今回は凛さん達に助けられたわね」と松田。

「ああ、そうだな」と友也は相槌を打ちながら腕時計をみた。

ちょうど、あの女性がきてからちょうど0時を過ぎていて午前一時になっていた。

その時、友也はもしかしたらクロムハーツというロックバンドの元ギタリストのRUIが自分と友美を助けにきてくれたのかとふと思った。

2日はRUIの命日だった。

そのことを友美に告げたら笑われた。

友也はむきになって「だって普通夜中に窓から入ってくるか、この時期に」と言い返した。

「そう思いたくなる気持ちもわからなくないけど、偶然よ。ここ数年は異常気象だもの。」と友美は夜空を見て言った。

友也は釈然としなかったがあれはきっとRUIだと思うことにした。

毎年、墓参りに行ってるが必ず自分の周りに蝶が舞っていた。

まるで歓迎するかのように。

今日はお礼をいいに行こう。

友也は心に誓った。

ありがとう、RUIさんー。

 

 

灰色の街~彼女と過ごした冬11~雪解け~

次の日豹はトシヤと一緒に凛の勤めてる店「フェイ」に向かった。

二人はカウンターの前に座った。

豹はお酒を呑めなかったのでメロンソーダを頼んだ。

トシヤはコロナのビールを頼んだ。

もう夜も深く、客もまだらだった。

店のBGMは洋楽のフェビメタがかかっていた。

凛は神妙な顔つきで事情を豹とトシヤから聞いてやっぱり嫌な予感が当たったと絶望した。

トシヤは「明日、瞳は退院するよ。しばらく自宅療養させるよ。組織からクビにされたしね。」

とわざと勤めて明るく言った。

凛は「つまり、瞳に命令したマフィアの背後にはアメリカのテロリストがいたってことなんやな?」とまわりに聞こえないように小声で聞いた。

豹は「そうらしい。回復したら本人に確かめるつもりやけどな。俺の時と一緒。」

凛はマヤも蓮もテロ集団に巻き込まれたと思っていたが、マヤがFBIを名乗って蓮とシンガポールで何度も会って、フェニックスを政府から横取りし、同じテロ組織の仲間のゆゆと協力して自分達の組織に渡したと確信した。

向こうにいた頃、FBIにマヤが渡したフェニックスが忽然とある日、姿を消していたからだ。

マヤが一度この店にきたときにその責任をとらされて香港に左遷されたと自嘲気味に語っていたが自作自演だったとはおもいもよらなかった。

でも、なぜ蓮の命が狙われてるのか3人は謎だった。

凛は「もしそれが本当ならやばいな、あの二人はこっちで男女の関係もってしもうたから。つくづくあいつは女に弱いな。自分が狙われてること知っとるはずやけどな」

豹は「なんだと!?やっぱり俺を裏切ったやんけ。まぁ、テロリストやからそっちのほうがショックやったけどな。つーか、あいつアホちゃう。俺は真面目にスパイの仕事を任されてたからLAにいた頃。だからテロ組織に目をつけられた」とため息をつきながら、ソーダのおかわりとチョコを頼んだ。

トシヤは「流石、モラルも何もかも踏み越えてしまったみたいだね。」と苦笑した。

凛は「笑い事やないやろ、下手したら事後に殺られてた可能性あるで。マヤのことだし、たぶん、そういうことして今まで何人もの男を殺してきたんやろな。」と暗い表情でつぶやいた。更に凛は京子と俺のことまで二人に話した。

「もしあんな事件がなかったらきっと俺みたいに今ごろ足洗ってたかもな」と蓮と呑んだことを思いだしていた。

トシヤは「そんなことがあったんだ。俺もショックだよ。なんか女は怖いね。裏表が激しすぎる。でも蓮の場合はどっちみちテロ達に命狙われてたんだからここにも追手がきてた可能性もあるし、

仕事はしなくても殺し合いならしてたかもね。自分達の身を守る為に。でもなんで蓮は狙われてるんだろ?フェニックスを作るロイの手下だったからか」と2杯目のコロナを吞みながら二人に尋ねた。

豹は「せやな。あの件だけじゃない、もっと裏がある気がする。空港で蓮を撃った連中もテロリスト達の仕業かもしれんな。それにしても死んだ恋人のことは気の毒やな」と二人に言った。

凛は豹に「明日、お前と病院に行ってあいつに確かめる。」といい、トシヤに「お前は蓮にしばらく顔をださないほうがええ。完全に瞳とグルになってると疑がわれてる可能性あるさかいな。下手に刺激しないほうがええで。」と念を押した。

トシヤはため息をついて「そうだね」とがっかりした表情でうなづいた。

俺はそんなことも知らずに今夜は退院したばかりなので景気づけにアリサの働いてる「ジャッキー」に行き、激辛ラーメンをほおばった。

ハイボールも一杯だけ頼んだ。

まだ本調子じゃないのであまり呑めないのが辛い。

アンジェラ達と一緒に同行していた。

5人は本場の台湾料理に舌鼓みをうっていた。

アリサもちょくちょく見舞いにきてくれていた。

食事が終わったあとに何か殺気を感じたが5人には黙っていた。

武器はもう調達してもらった。

彼らもわざと明るく振る舞っていた。

帰り道、やはり背後に人の気配がした。

5人と別れを告げたあと、アンジェラ達の後をこっそり追った。

すると彼らめがげて近づいてくる人影がみえた。

暗がりでみえなかったが白人だった。

俺はそいつに近づき、銃で奴を狙って撃った。

奴も俺に気が付き、銃乱射しながらこっちに歩いてきた。

アンジェラ達はもうホテルの部屋の中に入っていた。

こいつはかなり鍛えられてるスナイパーだな。

久しぶりに血が騒いだ。

俺は弾をよけながらも相手を狙って数発撃ちまくった。

奴はあっさりと地面にあおむけになって倒れて即死した。

俺は自分の銃口に息をふきかけて「ふう、あぶなかった。吞みすぎてたら確実にやられてたわ」一部始終を息を飲んで見守っていた京子は「とりあえず無事でよかった。この辺は阿片中毒患者でいっぱいだものね」とまた意味不明なことを言った。

「それは100年以上前の話だろ」と聞いたら、「まだ成仏してないみたい。死んだことも気づいてないみたい。」と答えたので俺は「まだ吸いたりねえのか」と呆れた。

京子も肩をすくめて「そうみたい」と答えて俺の後ろについてきた。

次の日、凛と豹が病院に行ったら俺がもう退院したことを医者に聞かされてびっくりしていた。

瞳もトシヤに付き添われて退院した。

しばらく精神科に通院することになったらしい。

トシヤもこの機会に薬抜きしようと試みた。

 

 

 

 

 

 

灰色の街~彼女と過ごした冬10・雪解け~

クッシーは少し怯えたような表情を浮かべて話し始めた。

「実はあるロシアの反政権のテロリスト達と呑んでて、そいつらから国家転覆の計画を

打ち明けられた。それで武器を貸してくれと頼まれたんだ。

俺達はそんな革命の英雄とか興味ないし、かっこ悪いから断ったんだ。

あいつらそのとたんに態度が変わって俺らに銃を向けてきやがった。

怖くなったから応戦して命からがら逃げてきた。

助けてほしい。

こんな仕事はしてても命は惜しいからな。」

といわれた。

俺は嗚呼やっぱりと思いながらも「ちょっと待ってくれ。俺、病み上がりなんやけど」と少し困ったような表情をわざとした。

しばらく間をおいてから「そいつらはお前らが香港にいること知ってるのか」

とクッシー達に聞いた。

「ええ、知ってるわ。実際に5~6年前にモスクワ辺りでテロ事件があったの知ってるでしょ。その生き残りよ。奴らは。KGBみたいな連中がやつらを逮捕しようとしてるから国外逃亡してきたの。私達に計画話しちゃったから始末しようとしてるんだわ。

どっちにもつかまりたくないの。事情聴取なんてされても死刑になってしまう」

と今度はアンジェラまでいきなり顔を寄せてきた。

いい香りがして思わずたじろいでしまった。

「いや、待て、わかったよ。お前らの命は必ず守ってやるよ、ただし俺が退院してからだ。それまでは無事に逃げ延びてくれ。」と

俺はアンジェラの肩を掴み彼女から離れてからターニャに視線を向けながら答えた。

「よかった。さすが蓮。貴方なら頼りになると思ったわ。」とターニャ。

リョウは病室のドアを少し開けて、廊下に誰かきていないか辺りを伺っていた。

俺はリョウの親父さんがこのマフィアのボスなのを知っていたから様子を聞いた。

「親父を人質にとられた。」とうなだれた。

その瞬間、俺は怒りがこみ上げた。

あいつら、絶対に許さへん。

「俺がお前らを守ってやるけん。親父さんの名にかけて」

「おい、落ち着け、お前香港育ちなのに広島弁訛りになってるぞ」とクッシーが慌てて言った。

俺は意に介さず「モスクワとっちゃるけん」と言ったら今度はリョウに「とらなくていいよ」と引きつった笑顔でなだめられた。

一度は行ってみたいものだ、ロシアに。

「じゃ、私達帰るわ。お大事にね」とマーガレットの花束を花瓶に刺しながらアンジェラはいうと、チャドを残して4人は出て行ってしまった。

「チャド、お前は一人でも敵は倒せるから大丈夫やろ。4人守るだけで精一杯なんや、すまん」と俺は申し訳なく思いながら言った。

「そんなぁ、俺はこの先どうなるんですか」と顔が青くなった。

「甘えるな。自分の身は自分で守れ。」と俺は睨んで言った。

「それはないっすよ、蓮さん」とチャドは今にも泣きそうな顔をしていたので

笑いを堪えるのに大変だった。

「嘘に決まっとるやろ。お前がいないとあいつら悲しむしな。アンジェラは報酬はいくらいうとった?」というとチャドは安堵した表情を浮かべながら、「えっと札束で鞄1個分くらいと言ってました」俺はにやりと笑い「その金で武器も買うからな。お前も足手まといにならないように今から逃げとき。あ、今チーズ買ってきて。もう病院食はまずくてたまらん」と命令した。

「あ、はい。今すぐもってきます」と急いで買いに走って戻ってきた。

「サンキュー。ほな、また。危なくなったら連絡するようにアンジェラに伝えといて」とチャドに念を押していった。

「兄貴じゃないんですか?」と不思議そうに尋ねた。

「別にいいだろ、お前ら別行動じゃないんだし、女ならすぐに助けを求めてくるはず。」と俺はアンジェラの胸を思い出しながら答えた。

「わかりました。では」とそそくさと大柄な体型をしているのに背中を丸めて出て行った。

その間、京子はみえない相手と話をしていたが、いきなりこっちを向いて

「大丈夫なの?またそんな安請け合いしちゃって。それに彼だけからかうなんて。

それに今度こそ神崎マヤとかいうスパイにつかまってしまうわよ。」と心配そうに言った。

「大丈夫や。なんかあいつみてるといじりたくなるねん。あいつ可愛いやろ。

みんなのスターやし。それにマヤは表向きはスパイやけど、正体はFBIにもぐりこんだ美人テロリストの1人やから」と俺はチーズを食べながらさりげなく話した。

「テロリスト!?」京子は驚いていた。

俺も最初はマヤに騙されていた。

FBIのLA支部のHPの名簿をみたらマヤとゆゆの名前がなかった。

同じ顔の別の名前が存在した。

「瀧沢クリステル」。

 

その頃、豹は瞳の病院に見舞いに行き、ホテルの部屋に戻ってからスマートフォン

凛に電話をかけた。

「ほんまに蓮は生きてるんか?」と確認した。

凛は仕事中だが、左肩で耳にスマートフォンをあて「ああ、ぴんぴんしとるで。まだ傷は浅いし回復に時間かかるやろうけど。

病院行くとたまに独り言をぶつぶつ言っててなんか頭のほうが心配やけど、まぁ大丈夫やろ。それよりお前は今何しとるん?」と呑気に凛は応えた。

「実は瞳とトシヤにおうた。マヤのことで話があるねん。」と豹は真剣な顔で話した。

「それ、どういうことや?」と聞きながら手に携帯を右手に持ち替えて凛の表情が険しくなった。

「会って話したい。店の場所はどこ?」と豹は聞いて電話を切った。

すぐ凛から場所と時間を知らせるメールがきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

灰色の街~彼女と過ごした冬9~

女性の看護師が病室に入ってきて瞳の腕に点滴を投与し安定剤を飲むように促した。

瞳は素直に飲んだ。

看護師は瞳が眠りに入ると同時に出て行った。

トシヤは「蓮はまだ生きてるよ。安心しな。失敗して誰にも会わせる顔がないからこんなことしたんだよ。」といったので豹はほっと胸をなでおろした。

「よかったやん。止めをさしてたら余計にみんな救われへんしな」と豹が二人を慰めた。

「お前も以前、蓮に銃を向けたことあるよね。なんで?」とトシヤは豹に

瞳を見守りながらいきなり尋ねた。

豹は当時を振り返り「なんでって、、、あの時は蓮がむかついたからだよ、俺より

かっこええしええとこどりで元カノといちゃいちゃしよるし、記憶喪失なのをいいことに。てかなんで今更そんなこと聞くねん。」と焦って適当にはぐらかそうとした。

トシヤは「本当にそれだけ?お前らしくないじゃん。物書きのイメージ台無し。」とまでいった。豹はトシヤを睨んで「お前にだけはいわれたくないな、元絵描きの卵のジャンキーの癖に。」と言い返してしまった。

トシヤも頭にきて「俺はもっと深い理由や意味があるんじゃないかと思ったけどやっぱその程度だったんだな。もう詩人を名乗るなよ、

せっかく表紙を描いてやろうと思ったけどやめた」と、罵しった。

豹は激怒し「俺が海外嫌いなのにわざわざ見舞いにきてやったのにその態度はないやろ!誰も表紙の挿絵とか頼んでないわ、ぼけ」と帰ろうとしたら、

「ごめん」とトシヤが先に謝った。

「いや、もう過去のことやし。今はあんな誰とでも寝る女なんか嫌いや。

あの時はあいつの組織にまで俺は指図されてー」といいかけて慌てて口をつぐんだ。

「え?何?マヤさんがどうしたの」とトシヤがはっとしたように聞いた。

「過去にまで遡ることないやろ。それより瞳から何も知らされてないんか。本当に。

もしかしてこいつも単なるマフィアじゃないもっと大きい別の組織に命令されたとかいうてなかった?」と豹が逆に尋ねた。

「俺は何も聞いてない。何も話してくれなかった。でも、やっぱりそれだけじゃなかったんだね」とトシヤは豹に確認するかのように聞いた。

「ほんまは誰があいつを狙ってるかわかっとるやろ。なんではっきり言わへんねん」と

とだけ言って豹は下を向いた。

二人はそれっきり無口になり、それぞれ考え込んだ。

俺は空港でCIAに成りすましたテロリスト数人に撃たれて倒れた。

みていたのは、薫と偶然居合わせた豹だけ。

「お前、何やらかしたん?俺はとんだとばっちりや。お前撃たなきゃ殺すいわれて

仕方なくシンガポールで銃を向けるしかなかった。あの海岸で。マヤがいてもいなくても関係なかったんや。けどほんまごめんな。」とあとで香港に来る時豹に謝罪されたが、記憶を取り戻してた俺は何もいえず頭を軽く叩く事しかできなかった。

暗殺に失敗した理由もいわなかった。

俺はなんの思想ももってなかったし、ジョンレノンのファンでもなかったがあのDJには魅力を感じ、殺すには惜しいと思った。

今も元気でいるだろうか。

暇だったので凛にノートPCを持ってきてもらってたのを思い出した。

HPを開いて調べてみたら彼は俺がLAを出る前日に他のスナイパーに既に暗殺されていた。

じゃぁ、俺を狙った奴らは同じテロリストの仲間なのかー?

背中に戦慄が走った。

京子も覗いてて「何?死んだDJに興味あるの?」と聞かれたので「昔俺が取り逃がした相手を思い出して。」と答えて頬ずえをついた。

それを聞いた彼女は「やだ怖ーい」といいながらは俺とPC画面を交互にみた。

「お前も死んでるやろ。」といわずにいられなかった。

「あ、DJが後ろにいる。」と京子がいうので「怖いこというな」と怒鳴った。

「あんたが殺した人達今でもここにたくさんいるわよ。

私にわざわざ場所まで教えてくれるの。あのシナばあさんは半分くらい祓ってたわ」

俺は退院したらまた祓ってもらいに行こうかとまで思い詰めた。

「ちょっとこの人達を外に連れてくわね」と京子は出て行った。

少しは役に立つもんだな、幽霊も。

また今日はロシアンマフィアが見舞いにきた。

「退院したら頼みたいことがあるんだけど、ちょっとここにきたのは訳ありでね」

とクッシーにいわれて「ん?なんでもいいからいうてみ」と相談にのるつもりで聞いた。

仲間と顔を見合わせてたのでまた悪いことでもして逃げてきたのかと心配になった。

 

 

 

 

灰色の街~彼女と過ごした冬8~

俺は一か月怪我を完治させるまで入院せざるおえない破目になった。

この間、瞳に殺されかけたやるせなさと恐怖とトシヤの行方も気になったり、自分もLAにいた頃に彼らに銃を向けて店を破壊したことも思い出していた。

まだ、恨まれていたのだろうか?

でもあの時は仕方がなかった。

ロイは冷酷で里緒と薫の命人質にしたのだった。

仲間を裏切ってしまったのは瞳達の命を守りたかったから。

マヤと寝たのは、彼女がわざと俺が逃げないように誘惑してきたから騙されたふりを

して、彼女の心をロイから自分に振り向かせて逃げようと思ったから。

意外にもマヤはあっさりと自分の正体を明かし、新薬の設計図をロイから奪って自分の組織に渡すときに隙をみて逃げて好きにすればいいといってきた。

なんで急にそんなことをいうのか尋ねた。

「貴方の気持ちが今なら痛いほどわかるから」といい、豹の詩集をみせながら「貴方、言ったわよね。なんで好きでもない男の本をいつも持ち歩いて読んでるのかって。

ずっと考えてた。本当は愛してた。今でも忘れられないの。あんなひどい事して傷つけたのにね」と独り言のように言いながら目の奥が揺れていた。

その時からお互いに利害が一致し、機会を伺いながら付き合ってる風を装った。

ロイが設計図を手に入れたのと同時にこっそりマヤは夜中に設計図を盗み、手下にみつかり、銃を向けてるうちに俺は隙をみて逃げた。

俺があの時に豹が俺の組織の仲間になったことを言わなかったら多分、気を許したり、

そんなことまで白状しなかったかもしれない。

夕方、凛とアリサが帰ったあとにそんなことまで思い出してたら、マヤが花をもって

見舞いにきた。

「蓮の花にしようかと思ったけどなかったから」といいながら、花瓶に花を挿した。

マヤを睨みながら「おい、その花は葬式用だろ」と悪態をついた。

彼女は黒いコートを着ていた。

マヤに「そうね。香港にきてから何があったの?」と聞かれて俺はしばらく無口になった。

横にいる京子に目をやりながら話すべきかどうか迷った。

京子は「好きにすればいいわ」と無表情で答えた。

もちろんマヤにはみえないし聞こえない。

「いや、別に何も。お前こそ、あいつのことが好きだったはずなのになんで俺と」と

シンガポールでの日々も思い出しながら逆に聞いた。

「あの時は、記憶を失ったあんたがいたいけにみえちゃって。豹と再会した時はまた心が揺れたけど、彼にだけは人を殺すような真似はしてほしくなかったから止めたの。

この街で再会した貴方は、まるで瞳と同じ目をしてる」と俺を見据えて答えた。

俺は「お前、今日はいやに素直だな。それにあいつと一緒にするな。」

と、瞳を思い出しながらふざけるなという気持ちで一杯になりながら反論した。

「そうじゃなくて、初めて瞳と出会った頃のことよ。あの子の経歴を当時聞かされたから、だから失うものが何もないような怖い物知らずのような印象を受けた。今の貴方もそんな感じがする。」と言われたのでうろたえた。

「俺を見くびってるのか」と言い返すだけで精いっぱいだった。

「そういう男はとても魅力的」と悪戯っぽい笑みを浮かべながらいわれて頬が熱くなった。

「じゃぁ明日も早いからもう帰るわね。」とマヤは忙しそうに帰ってしまった。

京子は「なんだか謎めいた人ね。彼女は何者?」としばらく彼女をみていたが俺の方をみて聞いてきた。

「FBIの2重スパイ。今はバランスをとって仕事をしてる悪女」とだけ答えた。

「そんな女と関係もったのは誰よ」と京子は両手をあげて呆れたようにいった。

窓が開いていて風がこちらに向かって吹いた。

自分でもよくわからず答えにつまった。

次の日、なぜかロシアンマフィアのアンジェラ達が香港にきていて、俺の兄貴に連絡先を聞いたのか見舞いにきてくれて周りがにぎやかになった。

個室で安心した。

 

瞳は別の病院の白い1人用の病室にいて呆然自失といった表情をしてベッドから起きて座っていた。

トシヤと知らせを受けて飛んできた豹が瞳の様子を見守っていた。

事の成り行きを聞いて豹は「なんでそんなことしたんや。断ればよかったやろ。他に仕事はたくさんあるはずやで」と絶句していた。

「俺達はボスに可愛がられてたから期待に応えたかったんだよ。

こっちにきてしばらく面倒をみてもらったから。蓮は敵も多いしやってる仕事の内容も許せなかった。蓮もおかしいよ、なんであんな仕事してたんだろ」とトシヤなりの見解を示した。

 

「とにかく、また妙な気起こさないように見張っとくか」と豹は瞳を心配した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

灰色の街~彼女と過ごした冬7

「今度から気を付けるわ」

「どういう意味」俺はいぶかし気に思って尋ねた。

「私の仕事の邪魔をしないでほしい。今までのような仕事は引き受けないで。

米中に不利になるような標的は避けたほうがいい。」

マヤのいいたい事は何を意味しているかはだいたいわかったがわざと理由を聞いてみた。

「なんで」

「これからもたまに会って連絡をとったほうがお互いにもいいと思うし安全だから。仕事以外で。」

俺は京子をちらりとみながら「他の男にしといたほうがいい。俺とは今日が最期になるかもしれない」と一応断った。

「そうかもね。じゃぁやめておく。さっきのことは忘れて」マヤは何事もなかったように出て行こうとした。

マヤの腕をつかんだ。「待て、」。意外な顔をしている目をみつめて「じゃぁ、暇が

できたら連絡する。お前も会いたくなったらいつでも電話でもメールでも送って」と答えた。

彼女は共犯者のような微笑を浮かべて「交渉成立ね、また連絡する」とキスをしてドアを閉めてでていった。

京子は「さっぱりわからないわ。どういうことなの」

と呆然としていた。自分がいるのにといいたいのか。

「京子、お前は俺がずっとお前のことだけ思いながらずっと独り身でいろとでもいいたいわけ。貞操をしぬまで守ってほしいわけ?」

「そうよ。骨まで愛してほしいの。死ぬまで私のこと忘れないで。」

俺はため息をついた。

「俺はたぶん一生お前のことは忘れないし、お前以上に好きな女にも出会うことはないから安心しろ。もう恋はしない」

「嬉しい」京子は俺にだきついたが、体をすり抜けてしまった。

二人で苦笑した。

マヤへの恋心は芽生えかけたがそっと封印しようとした。

彼女との恋愛は危険すぎる。

もう誰のことも失いたくなかった。

でもたまに会うくらいなら。。。いいかもしれない。

早くこの目の前の女を成仏させなければ彼女と連絡がとれない。

どうしたらいいか迷った。

急に凛の顔が浮かんだ。

あいつに相談してみよう、信じてもらえるかわからないが。

久しぶりに「フェイ」に寄ったが彼は今日は非番できていなかった。

仕方なくアリサのいる店に行った。

「アリサ」ちょうどいた。

「また少し呑んできたでしょ」

「まぁね、あいつは?」

「ときどき来るけど、仲直りしたの?」とアリサ。

「謝ろうと思って。あいつのいうとうりかもしれへんし。実際捕まりそうになったしな」と当たり障りのないことを言った。

そうだ、あのことも謝らなきゃ。

しばらく、お茶を頼んで待ってたがなかなか来ない。

あいつ遅いな。

ドアが開いた。

凛かと思い、振り向いたら瞳とトシヤがきた。

「おう、久しぶり」と手を振り声をかけてしまった。

気が緩んでいたのかもしれない。

トシヤは「よう。昨日マヤさんと一緒だったでしょ」と開口一番にいわれて絶句した。

「なんで知ってるんや。別になにもないし会って話しただけ。偉い目におうたけどな。」「例えば?」と目を光らせながらトシヤは聞いた。

俺はなぜか焦ってしまい、秘密にしたかったので「あいつ今はこの辺のスパイでこの辺を調べてるから気をつけたほうがええで」とさりげなく言った。

「口封じのために寝たんだ?」トシヤは煙草に火をつけた。

なんでそこまで知ってるんだろう。

「いや、寝てないし、なんでもないし」と言い訳をした。

トシヤは笑って「わかりやすいね、マヤさんに言い寄られて断る男がこの世にいるの。

俺なら一度はお願いしたいね」とまでいわれ返答に困った俺は「いるだろ、横に。」と瞳をみたらいなかった。「あれ?あいつは?」「さぁ、トイレじゃない?初めてきたから場所に迷ってるかもしれない。」

と運ばれてきたお茶を呑みながら答えた。

「しょうがないな、」俺は席を立って瞳を探しにトイレに行った。

女子トイレだろうか、男子トイレだろうか、

迷いながら男子トイレに入ろうとしたら瞳にぶつかった。

「なんだ、いたじゃない。。か。。。」俺は脇腹に鋭い痛みを感じてその場に倒れこんだ。

「ごめん」瞳は小さく言ってその場を逃げていった。

急いで後を追いかけようとしたが意識が朦朧として動けなかった。

トシヤはその間に「あ、俺大事な用事思い出したから帰る。瞳達によろしく」とアリサに言って勘定をテーブルにおいて慌てて店を出て行ってしまった。

アリサは客の悲鳴を聞いてトイレの入り口に走って行った。

凛はアリサから電話で蓮が血だらけで倒れてると知り指定先の病院へ車を走らせた。

ナイフを太ももに戻して瞳は店をでていた。

既に外にでていたトシヤと一緒にタクシーを拾って逃げた。

俺は気絶する前にアリサの悲鳴を聞いた。

他の客も騒いでいたように思う。

記憶はそこで途切れた。

ホテルに戻った瞳はすぐにバスルームに入った。

トシヤはため息をついて、ベッドに座り込んだ。

(蓮。。。許してくれ、)両手を組んで顔を覆った。

瞳は中々バスルームからでてこなかった。

シャワーを浴びる時間にしては流すぎる。

様子を見に行った。

トシヤは息を飲んだ。

「おい!何してんだよ!?」急いで体を抱き起した。

瞳は手首を深く切っていた。

血がバスタブに広がる。

トシヤは急いで救急車を呼んだ。

俺もその頃病院に運ばれていて意識を取り戻していた。

「大丈夫!?」凛とアリサが同時に叫んだ。

「あいつ、何考えてんだ?」瞳のことを考えた。

「今はしゃべっちゃダメ。傷口が開いちゃう」とアリサは気遣ってくれた。

凛も「今は何も考えるな。ゆっくり休め」と心配そうに言った。

京子は真っ青な顔をしていた。元々青白い顔をしてたが。

その後のことはよく覚えてない。

なんであんなことをしたのかあいつに聞きたかった。