薔薇色の人生 Ⅲ

はてなダイアリーで書ききれないことを書きます。スピリチュアルなど。よろしく。

灰色の街~香港編・彼女と過ごした春~

俺は軽く舌打ちをした。

京子の姿は相変わらず視えていたが構ってる暇はなかった。

何かいいたげな表情をしていたが無視した。

本当は今直ぐ浄霊してすっきりしたいが別れたくない、ずっと俺の傍に居て欲しいという気持ちもあった。

とにかく、今起きている事件を解決することに集中しようー。

そう自分に言いきかせ振るい立たせて5人と待ち合わせした「フェイ」というBARに向かった。

中に入るとテーブルでまた連中は肴とお酒で飲んだくれていた。

「よう」俺は呆れつつも一人だけカウンターに座り、凛に声をかけてウォッカのロックを頼んだ。

凛は言われたとうりにウォッカをコースターの上に置いた。

「お前に大事な話があるんだ。マヤという女のことで」と凛に話しかけられた時に

携帯が鳴った。

アニソンの「1万年と2千年前から愛してる~」というフレーズと共に、凛はスーツの

ポケットから携帯を取り出し、英語で誰かと話していた。

こいつ、アニソンが着信音かよ。

俺は鼻で笑いながら一杯飲み干した。

誰かと話していた。

ミスター立花という単語とクロムハーツKANONという言葉が聞こえた。

あいつら何者なんや。

俺はさっき取り逃がした相手を思いだし、いらだってきた。

今どこにおるんやろ。

「bye,see you soon」と携帯を切り、凛は「大変やで」と話しを切り出した。

「なんやねん、トシヤのいうことなんか真に受けんなや。あの女とはもう切れてんで」

と上目使いで睨んで口を尖らせて関係を否定した。

凛は困ったように「それどころやない、大変なことになってもうた」と別の話題に切りかえた。

「は?」俺はまた今度は香港にイタリアンマフィアのボスが遊びに来たのかと思った。

「立花さん、自分がよくローマ市内でクロムのKANONに間違えられてサイン求められるからって悪のりして、その女ひっかけて酒飲まして遊びまくってんねん」と凛は半ば本当に困っていてため息をついていった。

俺はクロムのKANONといえばバンドのリーダーでドラムとピアノと作詞作曲をしているロックスターだと元カノに教えられていたのでよく知っていた。

おまけに香港ではバナナがなくてホテルを移動したエピソードが女子高生の間で

有名なのをネットニュースで知っていたので思いだして吹き出してしまった。

「何わろてんねん」と凛にしかめ面をしながらたしなめられたので「ほな、俺もよくドレインアウェイの上手ギターのリクに間違われて十代の子に声かけられるから今度かわええ子やったら、速攻でホテルにつれこもっかな」と酔った勢いで言ったら京子と凛が同時に俺を睨みつけた。

その瞬間、目の前の俺の空のグラスが割れた。

誰もそのグラスに触れていないのにも関わらずだ。

京子に「最低!」と怒鳴られた時だった。

凛はびっくりし、俺は凍り付いた。

俺は平静を装いながら「お前、立花さんと知り合いなんか?あの人はメイクしてないし

グラサン外したらすぐばれて捕まるはずや。それよりさっきのもう一杯くれ」と、

アンジェラ達をみながら言った。

凛は「クロムはワールドツアー終えたばかりや、イタリアに行かなくて正解やったな。

KANONさんは首の手術終えたばかりやし。ネットでファンが自慢してたらあっという間に日本やLAに広まるで。ただでさえ、アルバムまだでとらんのに。立花さんはイタリアマフィアのボスで以前よくここに呑みにきてたんや。今はローマにおる。」と身内のように言った。

「お前も立花さんと知り合いか?」と俺は心底驚いた。

香港はこんなに狭かったやろか。

「お前もってどこであの人と知り合ったんや?」と凛に逆に聞かれた。

「ちょっと雇われて一緒に仕事をしたんや。そういえば鼻とか口とか骨格とか輪郭とかそっくりやな。性格は全く違うからいくらファンでも途中で気づくやろ」と二人を比べて思いだした。

凛は「性格まで似とるわけないやろ。しかし世界には自分に似た人が3人もおるって話もあるし、あれ、ほんまやったんやな。つうかさっきの現象は何や、お前がやったんかグラス。弁償しろや」と少し考えこんでから我に返って言った。

「知らん。この店古いから怪奇現象ちゃう?俺ちゃうで」と後ろの京子を観ながら言った。

凛は青くなっていた。

「今夜はもう店しまおっかな」とドアに「CLOSE」と看板を裏返しにしに行った。

「あ、おいさっきの大事な話って何?」と俺は凛の背中に声をかけた。

凛は看板を裏返しにして戻ってきてから「マヤに気をつけたほうがええで。」と意味ありげに忠告された。

「あいつ、ロシアのテロ事件に関わってるんかな」と俺はマヤの銃さばきとバスタオル一枚だけ巻いた姿を思い出しながら凛に尋ねた。

「それはないやろ、別の組織と繋がりありそうや。なんで香港におるのか謎やけど」

と心配げに俺をみてつぶやいた。

「俺は大丈夫やって。今女どころやないし」と話してたら、アンジェラに声をかけられて、奥のテーブルに行ったら、クッシーに「この防弾チョッキにも星マークが書かれてあるけどなんか意味あるのか」と聞かれた。

俺は「いや、なんか描きたくなったから」と言って5人を呆れさせた。

「ねぇそれよりギター弾いてなんか歌ってよ。もう店閉まるみたいだし。」と酔ったアンジェラにいわれて仕方なく「ほな1曲だけ。もうここでようや」と笑顔で言って、凛からフォークギターを借りて幼い頃におふくろがよく歌っていた日本の女性歌手のフォークソングを弾き語りで日本語で歌った。

目を閉じて歌いながら両親を懐かしく思った。

5人と凛はしんみりと俺の歌声を聞いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

灰色の街~新宿編2 思い出~

HONEY-Xにドキュメンタリー映画の話が舞い込んだのはちょうどこの時期だった。

俺は部外者だったが自分のことのように嬉しかった。

高美も自分が映画になるのだからこのところ上機嫌なのはそれが原因だとわかってほっとした。

ラジオのDJのオファーもボーカル故にきているそうだ。

でも監督が樋口里緒と知り、衝撃が走った。

なんで今更俺の前に次々と昔の女が現れるんだ。

会わなくてすむといいんだが。

松田友美は空広が既婚者だと俺に教えてくれた。

だから高美との噂がないのか。

実際のところどうなのか問いただしたい思いだったが俺も薫に会うたび心が揺れ始めていたので聞くことができずにいた。

勿論、薫とは肉体関係はない。

息子に定期的に会ってるだけだ。

もし再会したあの時に今の仕事をやめていたら息子と薫と3人で仲良く暮らせていたかもしれないと思うと後悔した。

今更だけど。

二人で会うといつも付き合ってた頃に近い想いを抱いた。

それでいて、マヤのテロ組織を今捜査中で行方を捜していると、香港で再会したあとに

すぐに付き合ってテロ組織から彼女を奪って逃げてればあいつを捕まえずにすんだのにとも思った。

俺は気が多いのかもしれない。

更に五十嵐刑事に会いに湾岸署を訪れた時に京子に顔と髪型がそっくりな女性刑事と会い、思わず声をかけて名前を呼んでしまった。

女性には睨まれて掴んだ手を振り払われた。

「あんた、血の匂いがするわね」と謎の微笑でいうとその場を去っていって

しまった。

自首しにきた殺人犯だと絶対間違われたと思うとこんな自分に自己嫌悪が走った。

五十嵐刑事は彼女を嫌われる勇気をもって難事件に挑み、今は検挙率ナンバーワンの

凄腕刑事の西野かんなだと教えられた。

五十嵐刑事には去り際に「お前もっと上手いナンパをしろよな。

あんな手口じゃ誰も引っかからないぞ」と笑顔でいわれてしまった。

凛達には呆れられた。

俺は今の仕事をこの事件が解決したらやめるつもりだ。

もう潮時だと思った。

いつもマヤの組織から命を狙われる危険が何度かあってそのたびにマヤに対する憎しみも湧いていた。

この女は俺が必ず始末してやるー。

香港にいた頃を再び思いだした。

日本にきてから世界一治安がいいほうなので豹達と闇サイトの仕事をしている間は

今迄の自分の人生をこんな風に振り返る余裕があった。

日本はとてもこんなに狭い国だっけ。

知りあいの知り合いに遭遇しやすい。

最近は美人の元トルコの日本大使館で働いていた美人の女スパイの南条楓(かえで)が

うちで一緒に仕事をすることになった。

先祖は代々くノ一だそうだ。

俺はなぜかこの女にだけは色気をまったく感じなかった。

 

香港で俺はアンジェラ達の宿泊しているホテルを訪れ、5人に防弾チョッキと夜になると光る星印の小型拳銃5個と普通の拳銃5個を渡した。

チャドだけには言いにくそうに「あのう、これって逆に不利になりませんか?敵の目印になるというか、、、」と突っ込まれた。

俺はそこだけは盲点を突かれたと焦り「アホ、敵は必ず夜には光る星に目が嫌でもいくやろ、そこを狙うんや」と慌てて思いついたこと無表情で話した。

「なるほど、流石兄貴」と彼は妙に納得していたので安心した。

クッシーと美女二人もそこだけ気がかりで不安になっていたらしいが、俺が怖くていえなかったらしい。

リョウの部屋にも渡しに行ったらチャドと同じ痛い所を突かれたので全く同じ説明をしたら「親父もそういう過信があったから捕まったんだよな」と遠い目をしていた。

俺はそれには答えずに真剣に「なんでボスがテロリストごときに捕まったんや、普通に警戒するやろ他人は。特にお前らのような人間は」と逆に人質になってしまった原因を聞いた。

リョウは「あるBARで呑んでたら美女3人と男4人が気さくに話しにきたから一緒に呑んだ。何回も乾杯してウォッカを呑んでた。その隙に親父のグラスだけ眠剤を入れられた。その直後に話をもちかけられて俺達は断って逃げようとした。親父は立ったとたん倒れるように寝てしまったところを奴らが連れ去ってしまった。奴らのほうが喧嘩も強いしたくさんの人数にいつのまにか取り囲まれた。卑怯だよ、やり方が。」と怒りを込めて言った。

俺は「そいつは危険だな、」と言いながら窓を見上げた。

ちょうど夜10時を回った頃だった。

向こう側のホテルの屋上から何か光るものが見えた。

嫌な予感がしてリョウに「伏せろ!」と叫び一緒に地べたに体を窓から見えないように隠れたが、銃弾が窓を割って壁に数発埋め込まれた。

リョウは青くなっていた。

「お前たちは早くこのホテルから逃げろ。明日居場所が落ち着いたら連絡してくれ。」

と言い残して俺は窓から飛び降りた。

敵は向かいのホテルの屋上にいた。

リョウはここは2階だったかなと思いながらも部屋を出て走った。

俺は運よく下のバルコニーに降りることができ、死なずにすんだ。

テロリストを狙って、長いライフルをもってスコープ越しに相手を捉えて銃で数発撃ち返した。

黒い影は消えていた。

相手が生きてるか確かめに行こうと窓を銃で割って入るとバスローブ姿の男女二人が悲鳴をあげたので「ごめん」とだけ言ってドアを開けて廊下に出た。

非常ベルを誰かが鳴らしたらしい。

俺はこのままではまずいと思い、急いでこのホテルをでて向かい側のホテルの

非常階段を上り、屋上に走っていったら誰もいなかった。

血痕が少し残っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

灰色の街~妄想彼女2~

2016年9月、俺は別れ話を高美(こうみ)に切り出す為に初めて、スナック

「FUMI」を訪れた。

横田基地の米兵の常連客が多かった。

店の内装は50~60年代のアメリカと日本を足して2で割ったような雰囲気でジャズが似合っていた。

カウンターに男が一人、背広姿のサラリーマン風の男が目立ってウィスキーのロックのグラスを手にしていた。

俺も同じ物を頼んだ。

まだ、残暑が厳しい季節だった。

店のママは冬子さんが言ってたとうり老婆が金髪で店をひとりで切り盛りしているようだった。

若い米兵と二人でひそひそ話をしてクスクス笑っていた。

想像以上に実年齢より若いファッションをしていたので驚いた。

壁には富士山の油絵が飾ってあった。

飲み物をコースターの上に置かれた。

孫はママ曰く「ガスステーション」の店員らしい。

普通にガソリンスタンドっていえと俺は舌打ちしたい気分になった。

ママやウェイターとウェイトレスのそんな話を聞いていたら、一人の女がサラリーマン風の男の隣に座った。

若いOL風の女性でこの店に寄ったようだった。

女は男が気に入ったらしく同じウィスキーを頼みながら口説いていた。

俺は横目で二人をみながら、2杯目のロックのおかわりをした。

あいつ、遅いなー。

高美のことを待ちながら、どう切り出そうかと迷っているうちに隣の男女は

もう店を出て行ってしまった。

男には孤独な背中を感じた。

新たな出会いの始まりなのに嬉しくないのか。

「あんたも女を待ってるのかい」と不意にママにはなしかけられた。

若い米兵にはいい年なのに「フミちゃん」と呼ばれていたのですぐその辺を言及したくなったが、さすがに怒られそうな空気を醸し出していたのでそこには触れず、

「いや、逆。別れ話」とつい話してしまい、しまったと顔をしかめた。

フミちゃんと呼ばれてるママは「出会いもあれば別れもある。ここも流れ者のたまり場だよ。特にあんたみたいなね。」とにやりと笑みを浮かべて2杯目のグラスを俺の前に置いた。

俺は冬子(とうこ)さんが年を重ねたらこの人みたいになるんじゃないかとなんとなく思った。

高美がきた。

彼女は自然に俺の隣に座り、ジントニックを頼んだ。

年老いたママはROCKやヴィジュアル系の音楽に興味がないらしく高美のことを誰か知らないようだった。

高美はサングラスをしたままだった。

「ここ、貴方の趣味に合わなそうね」と一口呑みながらあたりを見回し、音楽を聴きながら言った。

「まぁな、そのほうが話しやすいから」と笑わずに俺は言った。

「場所、変えた方がよくない?」と高美。

「そうだな」と高美がジントニックを呑み終えるのをだまって待ちながら

近くのテーブルに移動した。

「で?話って何?」金髪の長い髪を赤いマニキュアの指でかき上げがら目をつむりながら聞かれた。

「お前、なんで俺がいるのに空広に浮気してんねん。順序違うやろ。もう寝たんか。あいつと」と重い口調で睨んで言った。

高美は無視して煙草に火をつけた。

「煙草を吸う女は嫌いや」と俺はそのまま睨み続けていた。

高美は吸いかけた煙草を灰皿に押しつけて火を消した。

「空広とはまだ寝てないわ」真っ赤な口紅で唇の端を上に曲げながら答えた。

「でも、貴方とはもう潮時ね。飽きちゃった。別れましょう」と先に言われ、

怒りのあまり殴りたくなったが、テーブルの下で右手を左手でなんとか抑えた。

「わかった。俺ももうお前とこのまま続けていくのは限界」と固く目と閉じながら言うのに精一杯だった。

高美はそんな俺をみて憮然として「最後の依頼があるんだけど、このアイドルを消してほしいの」と一枚の写真をテーブルの上に置いた。

写真をよくみたら、よく音楽TVでみかけるアイドルバンドのギター&ボーカルだった。

よくみたら割と可愛いかった。

年齢は21~2歳といったところか。

でもなんで高美が憎んでるのか。

「彼女、叩けば埃がたくさん出てくるの。面白いわよ。調べてみたら。

デビュー前まで男性関係派手だったけど、デビュー直前にすべての男と縁を切って今は独り身。でもジャンキーの噂がある。あんた達の仕事でしょ。」

高美の目が光った。

「わかった。最後くらいはお前の役にたつ仕事をするよ。」と俺はアイドルの写真を見ながら答えた。

「でも、なんでこいつのことを知ってるんや?とてもお前が正義感で動いてるとは思われへんな」と写真をみながら言った。

高美の性格は知り尽くしている。

空広の女だから邪魔なのだろうか。

「だって彼女は私よりも若くて肌もピチピチしてるでしょ。歌もギターも私よりも下手。TVだと口パクで当てふり。業界では評判悪いわよ」と高美。

俺はアイドルの目の奥を疑視しながら「過去にはやってる可能性は高そうやな。

一応、麻薬ルートの出どころは調べておく。これでこのアイドルは芸能界から干される。知りあいの記者に記事をリークさせる。これで満足だろ」

と俺は高美をみて言った。

「できれば命も消してほしいんだけど」と上目使いで更に言ってきた。

「もちろん、タダじゃないわ。このカードの口座からお金を引き出して貴方の口座に振り込む。」

俺は淋しくなった。

「もう会うことはないのか、俺達。それに命まで抹殺するほどのことはしてないだろ、この女は」と流石に不味いと思い殺害の依頼だけは断った。

ただでさえ、テロ関連のことで忙しいのにいちいち麻薬汚染のことまで関わってる暇はなかった。

しかし、建前は麻薬汚染をなくす目的で今の仕事を引き受けたのだからすべて断るわけにはいかない。

「もういい。2度と会うことはないから。さよなら」と残りのジントニックを俺の頭に思い切りかけて走って出て行ってしまった。

俺が振られたのにまるで悪者みたいな扱いをされるなんてなんて理不尽なんだ。

ウェイトレスにお手拭きをもってきてもらったが「いや、ええよ」と言って自分のハンカチで顔を拭いた。

「あんたも災難だねぇ、変な女に捕まっちゃって」とママは苦笑していた。

俺も苦笑して「今度は新しいまともな女を連れてくるよ」とだけ言って店をでた。

不思議と涙もでなかった。

悲しいはずなのに、虚しさのほうが残った。

後日、松田友美に会って事実を調べて記事をリークしたか、彼女の雑誌社にわざわざ出向いて行って確かめた。

「たしかに、妹さんは現役のジャンキーという噂がネット上に出回ってた。全部デマだけどね。バイなのは真実だった。あのアイドルの事務所とは揉めたくないから記事はたぶん出ないと思う。社長は一度過去にあの大手の事務所からでっかいスキャンダル記事もみ消された事があるからね。悔しいけど今回ばかりはね。訴訟事件起こされたら勝てる自信ないし。」とため息をついた。

「それより私の連載の方をこっちでは重宝されてるの、あのアイドルが引退したら、

たぶん記事になると思う。他を当たってくれない?」と、友美は申し訳なさそうに俺に謝った。

「いや、いいよ。歌姫の言うことを鵜呑みにした俺がアホやった。」

松田友美と俺は互いに微笑んだ。

高美と仕事場で会った時にその事実を告げたら、「そう、わかったわ。ありがとう。その事実だけで十分よ。」ともうそのアイドルのことは気にしていないようだった。

空広と何か進展があったのだろうか。

高美は最近上機嫌だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

灰色の街~サイドストーリー7~奇跡~

カメラマンの松本友也はノンフィクションライターの松田友美を嫌っていた。

父親の松本友明の本を出したからだった。

取材にこられたが断った。

にも拘わらず父親の友人達の証言を元に不倫ネタまで書かれて内心不愉快だった。

仕事場の廊下ですれ違うたびに悪態をついたが、彼女は無視してほほ笑む程度でうまく交わされた。

しかし、最近友美の周辺であの造船事故の真相を暴く連載を始めたとたんに、

何者かに編集長が刺されたり、友美がそこの雑誌社を解雇されたのであきらめるだろうと思っていたが別の雑誌社が彼女の記事を高く評価していて連載を再会した。

智宏のことも取材されたこともあって、友美への怒りは消えて彼女の身が心配になってきた。

松田友美はあるドラマのヒロインに似ていた。

仕事の鬼みたいな女性。

美人ではないが、なんだか守ってあげたくなるタイプだった。

同じ雑誌で写真の撮影をしていただけに急接近していた。

もし友也が結婚していなかったら付き合っていたかもしれない。

そんな中、また事件がおきた。

2016年5月1日の深夜、たまたま二人で生存者の取材に行き、原稿と写真チェックをしていたときだ。

1人の美人のサングラスをかけたグラマーな女性がピストルをもって部屋に近づいてきた。

深夜になろうとしていた。

「その原稿をこちらに渡しなさい」と、友美に銃口を向けて言った。

友美は青くなりながらも「もし、いやだっていったら?」と尋ねたら

「仕方ないわね、無駄な血は流したくないんだけど」と銃を机に向けて撃った。

友也はとっさに友美の肩を抱き、左側に押しながら「逃げろ!」と叫んで原稿をとろうとしたら今度は友也に銃を向けられた。

友也は両手をあげて顔をひきつらせた。

女性はピストルの引き金を人差し指で引こうとした途端、一匹の蝶が彼女の目をかすめて横切ってまわりを飛んでいた。

「え?」と女性は目で蝶を追っているうちに今度は女性の背後に凛達がきて、女性と撃ち合いになった。

他にも数人原稿を奪いにきた男たちがいたが凛達と応戦した。

友也は松田に「今の内に逃げよう、あいつらに任せとこう」と言って友美の手をつないで、非常口から逃げた。

友美は原稿を手にして、友也に手をひかれて逃げた。

背後で聞きおぼえのある声がした。

「マヤ!なんでお前がここにいるんや!?」

蓮の声だった。

それまで凛達と銃撃戦をしていたマヤはすぐに逃げて姿を消してしまった。

蓮はあとを追いかけた。

男達は凛に撃たれて倒れていた。

しばらく部屋を舞っていた蝶は姿を消した。

後日、女性の行方はわからずじまいだった。

できるだけ遠くへ逃げて、繁華街のところで足を止めて二人は息を整えた。

「ここまでくれば大丈夫だろ」と友也は松田に話しかけた。

「そうね」と松田。

友也は松田を痛々しく感じた。

あいつら、いつも智宏が以前働いてた店の常連客だけど何者なんだー?

友也はまだ凛と蓮の正体を知らなかったがあとで会ったら礼を言おうと思った。

「今回は凛さん達に助けられたわね」と松田。

「ああ、そうだな」と友也は相槌を打ちながら腕時計をみた。

ちょうど、あの女性がきてからちょうど0時を過ぎていて午前一時になっていた。

その時、友也はもしかしたらクロムハーツというロックバンドの元ギタリストのRUIが自分と友美を助けにきてくれたのかとふと思った。

2日はRUIの命日だった。

そのことを友美に告げたら笑われた。

友也はむきになって「だって普通夜中に窓から入ってくるか、この時期に」と言い返した。

「そう思いたくなる気持ちもわからなくないけど、偶然よ。ここ数年は異常気象だもの。」と友美は夜空を見て言った。

友也は釈然としなかったがあれはきっとRUIだと思うことにした。

毎年、墓参りに行ってるが必ず自分の周りに蝶が舞っていた。

まるで歓迎するかのように。

今日はお礼をいいに行こう。

友也は心に誓った。

ありがとう、RUIさんー。

 

 

灰色の街~彼女と過ごした冬11~雪解け~

次の日豹はトシヤと一緒に凛の勤めてる店「フェイ」に向かった。

二人はカウンターの前に座った。

豹はお酒を呑めなかったのでメロンソーダを頼んだ。

トシヤはコロナのビールを頼んだ。

もう夜も深く、客もまだらだった。

店のBGMは洋楽のフェビメタがかかっていた。

凛は神妙な顔つきで事情を豹とトシヤから聞いてやっぱり嫌な予感が当たったと絶望した。

トシヤは「明日、瞳は退院するよ。しばらく自宅療養させるよ。組織からクビにされたしね。」

とわざと勤めて明るく言った。

凛は「つまり、瞳に命令したマフィアの背後にはアメリカのテロリストがいたってことなんやな?」とまわりに聞こえないように小声で聞いた。

豹は「そうらしい。回復したら本人に確かめるつもりやけどな。俺の時と一緒。」

凛はマヤも蓮もテロ集団に巻き込まれたと思っていたが、マヤがFBIを名乗って蓮とシンガポールで何度も会って、フェニックスを政府から横取りし、同じテロ組織の仲間のゆゆと協力して自分達の組織に渡したと確信した。

向こうにいた頃、FBIにマヤが渡したフェニックスが忽然とある日、姿を消していたからだ。

マヤが一度この店にきたときにその責任をとらされて香港に左遷されたと自嘲気味に語っていたが自作自演だったとはおもいもよらなかった。

でも、なぜ蓮の命が狙われてるのか3人は謎だった。

凛は「もしそれが本当ならやばいな、あの二人はこっちで男女の関係もってしもうたから。つくづくあいつは女に弱いな。自分が狙われてること知っとるはずやけどな」

豹は「なんだと!?やっぱり俺を裏切ったやんけ。まぁ、テロリストやからそっちのほうがショックやったけどな。つーか、あいつアホちゃう。俺は真面目にスパイの仕事を任されてたからLAにいた頃。だからテロ組織に目をつけられた」とため息をつきながら、ソーダのおかわりとチョコを頼んだ。

トシヤは「流石、モラルも何もかも踏み越えてしまったみたいだね。」と苦笑した。

凛は「笑い事やないやろ、下手したら事後に殺られてた可能性あるで。マヤのことだし、たぶん、そういうことして今まで何人もの男を殺してきたんやろな。」と暗い表情でつぶやいた。更に凛は京子と俺のことまで二人に話した。

「もしあんな事件がなかったらきっと俺みたいに今ごろ足洗ってたかもな」と蓮と呑んだことを思いだしていた。

トシヤは「そんなことがあったんだ。俺もショックだよ。なんか女は怖いね。裏表が激しすぎる。でも蓮の場合はどっちみちテロ達に命狙われてたんだからここにも追手がきてた可能性もあるし、

仕事はしなくても殺し合いならしてたかもね。自分達の身を守る為に。でもなんで蓮は狙われてるんだろ?フェニックスを作るロイの手下だったからか」と2杯目のコロナを吞みながら二人に尋ねた。

豹は「せやな。あの件だけじゃない、もっと裏がある気がする。空港で蓮を撃った連中もテロリスト達の仕業かもしれんな。それにしても死んだ恋人のことは気の毒やな」と二人に言った。

凛は豹に「明日、お前と病院に行ってあいつに確かめる。」といい、トシヤに「お前は蓮にしばらく顔をださないほうがええ。完全に瞳とグルになってると疑がわれてる可能性あるさかいな。下手に刺激しないほうがええで。」と念を押した。

トシヤはため息をついて「そうだね」とがっかりした表情でうなづいた。

俺はそんなことも知らずに今夜は退院したばかりなので景気づけにアリサの働いてる「ジャッキー」に行き、激辛ラーメンをほおばった。

ハイボールも一杯だけ頼んだ。

まだ本調子じゃないのであまり呑めないのが辛い。

アンジェラ達と一緒に同行していた。

5人は本場の台湾料理に舌鼓みをうっていた。

アリサもちょくちょく見舞いにきてくれていた。

食事が終わったあとに何か殺気を感じたが5人には黙っていた。

武器はもう調達してもらった。

彼らもわざと明るく振る舞っていた。

帰り道、やはり背後に人の気配がした。

5人と別れを告げたあと、アンジェラ達の後をこっそり追った。

すると彼らめがげて近づいてくる人影がみえた。

暗がりでみえなかったが白人だった。

俺はそいつに近づき、銃で奴を狙って撃った。

奴も俺に気が付き、銃乱射しながらこっちに歩いてきた。

アンジェラ達はもうホテルの部屋の中に入っていた。

こいつはかなり鍛えられてるスナイパーだな。

久しぶりに血が騒いだ。

俺は弾をよけながらも相手を狙って数発撃ちまくった。

奴はあっさりと地面にあおむけになって倒れて即死した。

俺は自分の銃口に息をふきかけて「ふう、あぶなかった。吞みすぎてたら確実にやられてたわ」一部始終を息を飲んで見守っていた京子は「とりあえず無事でよかった。この辺は阿片中毒患者でいっぱいだものね」とまた意味不明なことを言った。

「それは100年以上前の話だろ」と聞いたら、「まだ成仏してないみたい。死んだことも気づいてないみたい。」と答えたので俺は「まだ吸いたりねえのか」と呆れた。

京子も肩をすくめて「そうみたい」と答えて俺の後ろについてきた。

次の日、凛と豹が病院に行ったら俺がもう退院したことを医者に聞かされてびっくりしていた。

瞳もトシヤに付き添われて退院した。

しばらく精神科に通院することになったらしい。

トシヤもこの機会に薬抜きしようと試みた。

 

 

 

 

 

 

灰色の街~彼女と過ごした冬10・雪解け~

クッシーは少し怯えたような表情を浮かべて話し始めた。

「実はあるロシアの反政権のテロリスト達と呑んでて、そいつらから国家転覆の計画を

打ち明けられた。それで武器を貸してくれと頼まれたんだ。

俺達はそんな革命の英雄とか興味ないし、かっこ悪いから断ったんだ。

あいつらそのとたんに態度が変わって俺らに銃を向けてきやがった。

怖くなったから応戦して命からがら逃げてきた。

助けてほしい。

こんな仕事はしてても命は惜しいからな。」

といわれた。

俺は嗚呼やっぱりと思いながらも「ちょっと待ってくれ。俺、病み上がりなんやけど」と少し困ったような表情をわざとした。

しばらく間をおいてから「そいつらはお前らが香港にいること知ってるのか」

とクッシー達に聞いた。

「ええ、知ってるわ。実際に5~6年前にモスクワ辺りでテロ事件があったの知ってるでしょ。その生き残りよ。奴らは。KGBみたいな連中がやつらを逮捕しようとしてるから国外逃亡してきたの。私達に計画話しちゃったから始末しようとしてるんだわ。

どっちにもつかまりたくないの。事情聴取なんてされても死刑になってしまう」

と今度はアンジェラまでいきなり顔を寄せてきた。

いい香りがして思わずたじろいでしまった。

「いや、待て、わかったよ。お前らの命は必ず守ってやるよ、ただし俺が退院してからだ。それまでは無事に逃げ延びてくれ。」と

俺はアンジェラの肩を掴み彼女から離れてからターニャに視線を向けながら答えた。

「よかった。さすが蓮。貴方なら頼りになると思ったわ。」とターニャ。

リョウは病室のドアを少し開けて、廊下に誰かきていないか辺りを伺っていた。

俺はリョウの親父さんがこのマフィアのボスなのを知っていたから様子を聞いた。

「親父を人質にとられた。」とうなだれた。

その瞬間、俺は怒りがこみ上げた。

あいつら、絶対に許さへん。

「俺がお前らを守ってやるけん。親父さんの名にかけて」

「おい、落ち着け、お前香港育ちなのに広島弁訛りになってるぞ」とクッシーが慌てて言った。

俺は意に介さず「モスクワとっちゃるけん」と言ったら今度はリョウに「とらなくていいよ」と引きつった笑顔でなだめられた。

一度は行ってみたいものだ、ロシアに。

「じゃ、私達帰るわ。お大事にね」とマーガレットの花束を花瓶に刺しながらアンジェラはいうと、チャドを残して4人は出て行ってしまった。

「チャド、お前は一人でも敵は倒せるから大丈夫やろ。4人守るだけで精一杯なんや、すまん」と俺は申し訳なく思いながら言った。

「そんなぁ、俺はこの先どうなるんですか」と顔が青くなった。

「甘えるな。自分の身は自分で守れ。」と俺は睨んで言った。

「それはないっすよ、蓮さん」とチャドは今にも泣きそうな顔をしていたので

笑いを堪えるのに大変だった。

「嘘に決まっとるやろ。お前がいないとあいつら悲しむしな。アンジェラは報酬はいくらいうとった?」というとチャドは安堵した表情を浮かべながら、「えっと札束で鞄1個分くらいと言ってました」俺はにやりと笑い「その金で武器も買うからな。お前も足手まといにならないように今から逃げとき。あ、今チーズ買ってきて。もう病院食はまずくてたまらん」と命令した。

「あ、はい。今すぐもってきます」と急いで買いに走って戻ってきた。

「サンキュー。ほな、また。危なくなったら連絡するようにアンジェラに伝えといて」とチャドに念を押していった。

「兄貴じゃないんですか?」と不思議そうに尋ねた。

「別にいいだろ、お前ら別行動じゃないんだし、女ならすぐに助けを求めてくるはず。」と俺はアンジェラの胸を思い出しながら答えた。

「わかりました。では」とそそくさと大柄な体型をしているのに背中を丸めて出て行った。

その間、京子はみえない相手と話をしていたが、いきなりこっちを向いて

「大丈夫なの?またそんな安請け合いしちゃって。それに彼だけからかうなんて。

それに今度こそ神崎マヤとかいうスパイにつかまってしまうわよ。」と心配そうに言った。

「大丈夫や。なんかあいつみてるといじりたくなるねん。あいつ可愛いやろ。

みんなのスターやし。それにマヤは表向きはスパイやけど、正体はFBIにもぐりこんだ美人テロリストの1人やから」と俺はチーズを食べながらさりげなく話した。

「テロリスト!?」京子は驚いていた。

俺も最初はマヤに騙されていた。

FBIのLA支部のHPの名簿をみたらマヤとゆゆの名前がなかった。

同じ顔の別の名前が存在した。

「瀧沢クリステル」。

 

その頃、豹は瞳の病院に見舞いに行き、ホテルの部屋に戻ってからスマートフォン

凛に電話をかけた。

「ほんまに蓮は生きてるんか?」と確認した。

凛は仕事中だが、左肩で耳にスマートフォンをあて「ああ、ぴんぴんしとるで。まだ傷は浅いし回復に時間かかるやろうけど。

病院行くとたまに独り言をぶつぶつ言っててなんか頭のほうが心配やけど、まぁ大丈夫やろ。それよりお前は今何しとるん?」と呑気に凛は応えた。

「実は瞳とトシヤにおうた。マヤのことで話があるねん。」と豹は真剣な顔で話した。

「それ、どういうことや?」と聞きながら手に携帯を右手に持ち替えて凛の表情が険しくなった。

「会って話したい。店の場所はどこ?」と豹は聞いて電話を切った。

すぐ凛から場所と時間を知らせるメールがきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

灰色の街~彼女と過ごした冬9~

女性の看護師が病室に入ってきて瞳の腕に点滴を投与し安定剤を飲むように促した。

瞳は素直に飲んだ。

看護師は瞳が眠りに入ると同時に出て行った。

トシヤは「蓮はまだ生きてるよ。安心しな。失敗して誰にも会わせる顔がないからこんなことしたんだよ。」といったので豹はほっと胸をなでおろした。

「よかったやん。止めをさしてたら余計にみんな救われへんしな」と豹が二人を慰めた。

「お前も以前、蓮に銃を向けたことあるよね。なんで?」とトシヤは豹に

瞳を見守りながらいきなり尋ねた。

豹は当時を振り返り「なんでって、、、あの時は蓮がむかついたからだよ、俺より

かっこええしええとこどりで元カノといちゃいちゃしよるし、記憶喪失なのをいいことに。てかなんで今更そんなこと聞くねん。」と焦って適当にはぐらかそうとした。

トシヤは「本当にそれだけ?お前らしくないじゃん。物書きのイメージ台無し。」とまでいった。豹はトシヤを睨んで「お前にだけはいわれたくないな、元絵描きの卵のジャンキーの癖に。」と言い返してしまった。

トシヤも頭にきて「俺はもっと深い理由や意味があるんじゃないかと思ったけどやっぱその程度だったんだな。もう詩人を名乗るなよ、

せっかく表紙を描いてやろうと思ったけどやめた」と、罵しった。

豹は激怒し「俺が海外嫌いなのにわざわざ見舞いにきてやったのにその態度はないやろ!誰も表紙の挿絵とか頼んでないわ、ぼけ」と帰ろうとしたら、

「ごめん」とトシヤが先に謝った。

「いや、もう過去のことやし。今はあんな誰とでも寝る女なんか嫌いや。

あの時はあいつの組織にまで俺は指図されてー」といいかけて慌てて口をつぐんだ。

「え?何?マヤさんがどうしたの」とトシヤがはっとしたように聞いた。

「過去にまで遡ることないやろ。それより瞳から何も知らされてないんか。本当に。

もしかしてこいつも単なるマフィアじゃないもっと大きい別の組織に命令されたとかいうてなかった?」と豹が逆に尋ねた。

「俺は何も聞いてない。何も話してくれなかった。でも、やっぱりそれだけじゃなかったんだね」とトシヤは豹に確認するかのように聞いた。

「ほんまは誰があいつを狙ってるかわかっとるやろ。なんではっきり言わへんねん」と

とだけ言って豹は下を向いた。

二人はそれっきり無口になり、それぞれ考え込んだ。

俺は空港でCIAに成りすましたテロリスト数人に撃たれて倒れた。

みていたのは、薫と偶然居合わせた豹だけ。

「お前、何やらかしたん?俺はとんだとばっちりや。お前撃たなきゃ殺すいわれて

仕方なくシンガポールで銃を向けるしかなかった。あの海岸で。マヤがいてもいなくても関係なかったんや。けどほんまごめんな。」とあとで香港に来る時豹に謝罪されたが、記憶を取り戻してた俺は何もいえず頭を軽く叩く事しかできなかった。

暗殺に失敗した理由もいわなかった。

俺はなんの思想ももってなかったし、ジョンレノンのファンでもなかったがあのDJには魅力を感じ、殺すには惜しいと思った。

今も元気でいるだろうか。

暇だったので凛にノートPCを持ってきてもらってたのを思い出した。

HPを開いて調べてみたら彼は俺がLAを出る前日に他のスナイパーに既に暗殺されていた。

じゃぁ、俺を狙った奴らは同じテロリストの仲間なのかー?

背中に戦慄が走った。

京子も覗いてて「何?死んだDJに興味あるの?」と聞かれたので「昔俺が取り逃がした相手を思い出して。」と答えて頬ずえをついた。

それを聞いた彼女は「やだ怖ーい」といいながらは俺とPC画面を交互にみた。

「お前も死んでるやろ。」といわずにいられなかった。

「あ、DJが後ろにいる。」と京子がいうので「怖いこというな」と怒鳴った。

「あんたが殺した人達今でもここにたくさんいるわよ。

私にわざわざ場所まで教えてくれるの。あのシナばあさんは半分くらい祓ってたわ」

俺は退院したらまた祓ってもらいに行こうかとまで思い詰めた。

「ちょっとこの人達を外に連れてくわね」と京子は出て行った。

少しは役に立つもんだな、幽霊も。

また今日はロシアンマフィアが見舞いにきた。

「退院したら頼みたいことがあるんだけど、ちょっとここにきたのは訳ありでね」

とクッシーにいわれて「ん?なんでもいいからいうてみ」と相談にのるつもりで聞いた。

仲間と顔を見合わせてたのでまた悪いことでもして逃げてきたのかと心配になった。