薔薇色の人生 Ⅲ

はてなダイアリーで書ききれないことを書きます。スピリチュアルなど。よろしく。

灰色の街~6番目の痛み~

LAに住み始めて約半年がすぎた。

トニーさんにいろんな場所を案内してもらい、ここはNYや香港と違い、車がないと

移動が困難だと教えられた。

相変わらず、LAギャングと殺し合いの日々が続いていた。

白人や黒人は俺達東洋人より体がでかいから確実に心臓を狙わないとこっちがやられてしまう。殴り合いの喧嘩も香港のときと同じようにした。

剣道を習っていたので、その辺にあった棒で頭を殴り、気絶させたこともあった。

ここでも女には困らなかった。

俺は不思議と自分から口説いたことはないが向こうからよく呑んでるときに誘われる。

「下手くそ」とかいわれたこともない。

演技かどうかも声や汗でわかる。

向こうにいたころは仲間に冗談で「お前、この仕事よりも出張ホストのほうが向いてるよ」とからかわれたこともあるくらいだ。

それに惚れっぽい俺は、同じ女と一か月以上続くと仕事をやめたくなったときに「一緒に逃げよう」とささやき、実際に逃げた。しかしすぐにつかまってしまった。

銃をつきつけられ、「裏切者は容赦なく殺す」と女にも脅し文句をいう。

いつもそれで、ジ・エンド。

ホストに転職したとしても昔の仲間が殺しに来るだろうから平穏な生活は望めない。

薫と再会したのはここにきてあの事件から約一か月後だった。

やっとみつけた行きつけのカフェで、ビールを呑んでディーンと広東語で女の武勇伝を語ってたとき。千秋や女っぽい日本人男性と3人じっとこちらをうかがっていた。

薫は「いた!やっと見つけた!」と日本語で叫び、俺達の席に走ってきた。

あとの二人は後ろを追いかけてきた。

俺は身構えてコートの内側から銃を取り出そうとしたが、「会いたかった。あのとき私を助けてくれた人でしょ」といわれて思わず銃をしまった。

「知らない」と英語で答えた。でもどこかで見覚えのある顔だと千秋をみて思った。

千秋は可愛い顔をしていたが、薫は顔があまり美人でも可愛くもなかった。

しかし、足フェチの俺にとってはこいつは顔から下は色っぽいと見とれてしまった。

ミニスカをちょうど履いていた。「私は千秋、この子は如月薫っていうの。よろしく」と彼女を紹介された。「ずっとあなたを探してたのよ。どうしてもお礼がいいたくて」

と薫のことを説明した。だからなんだというんだ。俺は横を向いた。

ディーンは適当に相槌をうち、「へぇー、わざわざねぇ、意外と君たちけなげなんだね」と男をみつつ、千秋と薫に言った。

そして俺に広東語で3人にわからないように「ねぇ、今夜はこの子にお前の手練手管をしてやれば?泣いて喜ぶぜ」とニヤっと笑っていわれたが、「黙れ」と無表情で答えたのでそれ以上彼は何もいわなかった。

彼は肩をすくめた。

薫は「え、北京語も話せるの?すごい、日本語は?」と聞いてきたので「・・・今のは広東語」と日本語で答えた。面倒くさい女だなぁと思った。

しかし、女の名前は二人ともすぐに覚えた。

男は「俺、原タクヤ、3人とも美大生なんだ」と自己紹介したが、男の名前はそのときは忘れてしまった。「薫、スケブもって来ればよかったのに。」とタクヤは言った。

俺は薫に「・・・それがお前のいつも男を口説く手なのか」と聞いた。

「ちがう。本当に探したし、いつも持ち歩いてるわけじゃない。盗まれちゃう危険あるし」と薫は弁解した。「じゃ、俺達空いてる席で呑んでるから、帰るときは呼んでね。」と気をつかせたつもりで男と千秋は二人で別の席に行ってしまった。

様子を伺ってたディーンも「じゃ、俺買い物あるから」と帰ってしまった。

「おい!」焦って呼び止めたがもういなかった。

マジかよーと頭を抱えたが横には笑顔の薫がいる。

ウェイターにビールとつまみを頼んで、彼女は無口になった。

俺も同じのを頼んだ。「名前なんていうの?」と聞かれ「・・・ダイ」と答えた。

「年はいくつ?」と聞かれ27と答えた。「私は21」と返事の代わりに教えられた。

俺達はしばらく呑みながら何も話さなかった。夕暮れ時だった。

今夜は仕事はない。薫は「夕日綺麗ね」と言って足を組みなおした。

それを合図に俺は彼女にキスをしようと手をのばし、顎をくいとつかんだ。

薫は目を見開いた。顔を近づけたとき、不意に彼女を見つめ、キスをするのを思いとどまった。なぜか手が出なかった。「やめた」とつい口に出してしまった。

肩透かしをくらったような表情をした薫は「え?」と聞いてきた。

俺はあることをひらめき、薫の肩を抱き「今夜は朝まで時間あるからゆっくり広東語を教えてあげる。」と口説いてみた。薫は「え、でも、あの」と赤くなっていた。

こいつ面白いなと思った。ちょうど食べ物をもってきたウェイターは困ったように

いつテーブルに置くかタイミングを失っていた。そそくさとおいて急いでカウンターに歩いていった。薫は千秋のほうをみたら、すっかりタクヤと二人の世界に入っていた。

「何してる人なの?」と聞かれたので「いけない仕事」と答えたら「え、いえないようなヤバイことしてるの?」と聞いてきたので、彼女の頬を手でなでて、「俺みたいな男なんかやめて楽しいキャンパスライフおくったほうがいいよ」と思わせぶりに言って、

俺はその場を去った。薫は少し、ビビっていたようだったが、待ってとおいかけてきてメアドと電話番号を書いたペーパーを俺に渡して千秋達のほうに走っていった。

「何二人でいちゃついてるのよ。原くんは彼女いるでしょー」と3人ではしゃいでいた。俺はなぜかイラっとしてその光景をみながらタクシーに乗って、ディーンの家に帰った。薫だけは眩しく映った。

今夜は彼の家に泊めてもらおう。いつ仕事の依頼が急にくるかわからない。

ディーンに一部始終を話したら、笑われた。「何お前、中学生かよ」「うるせえな、なんか手が出なかったんだよ」「やっぱりあのブスじゃたつもんもたたないよな」と薫のことをいった。「いや俺はブスでもやれれば誰でもいいよ」彼は少し呆れた顔をしたが、「もしかしてマジになっちゃったとか?」と肘でわきを突かれた。

「いや、違う。たぶん、人前だからだよ。本当に二人きりじゃないと何もできねーじゃん?」と少し笑顔で切り返した。そして、渡されたペーパーをじっくり見て、捨てようとしたが、少し考えてジーンズのポケットにしまった。おかげでペーパーはくしゃくしゃになってしまった。今度の仕事の依頼はいつ来るだろう。酔いが回った頭で考えた。