薔薇色の人生 Ⅲ

はてなダイアリーで書ききれないことを書きます。スピリチュアルなど。よろしく。

灰色の街

俺は薫の住むアパートメントの前に立っていた。

石を窓に投げた。

薫が窓を開けてこちらをみて、

一目散にドアからでてきて抱き着いた。

俺も彼女をきつく抱きしめた。

「よかった、生きてたのね。無事でよかった。一体何があったの?」

俺は苦笑したがまだ素性を明かすこともできず「俺の仕事仲間を助けるために戻った。」とだけ伝えておいた。リンとはいずれそうなることだろう。

「今夜、大丈夫か?朝まで傍にいてやるよ。」

俺は本気でそう思った。

「ううん、平気。顔みれたから。それよりも仲間のところへ行ってあげて。心配なんでしょ。」と薫はいってくれたが、

「俺は誰よりもお前のことが心配なんだよ!」

と思わず大声でいってしまった。

薫は顔を赤くして「すごく嬉しいけど、、、声がでかいよ。」とあたりをみて突っ込まれた。

千秋は気を利かせて、「あ、あたし、彼氏とクラブ行く約束してたんだっけ。」

と慌ててでかけて行った。

ジョージの部屋で千秋は薫とダイのことを話した。

二人のことを彼も案じていた。

「ごめん。なんか今日は色々あって・・・」と俺は薫に謝った。

薫は笑顔を作って「おなか空かない?好物のカレー作ってあげる」

「いや俺食欲ないし」といったがお腹が鳴った。

二人で笑い、「じゃぁ決まりね。」と言って中に入った。

あいつらは俺を拉致しようとしていた。

薫を人質にされたらと思うと気が気じゃなかった。

早くネガを取り戻さなくては。

カレーはとても美味しかった。

薫のベッドで二人抱き合ってから寝室を見回した。

CDと画集が並んであった。

「クロム・ハーツ」と「ルナ・マティーノ」と滝沢みちろうのバンドと

ルイのソロ関連のCDに目がいった。

リンのバンドのCDも並べていた。

マスカレード所属バンドのCD。

バッドトリップのCDまである。

当時はまだSEIJIは生きていた。

新倉凛の資料を読んでるときに10代の自分を重ねていた。

俺も高校時代にコピーバンドを組んでギターを弾いていた。

滝沢さんになりきって「Lotus」というバンドに影響されて。

今思うと恥ずかしい過去だ。

 

女と一緒に逃げてたときもいつもギターケースを抱えていた。

初めてロックを聴いたとき、殺し屋以外の選択技もあるんだと目が覚めた。

15の夜。

17歳の時はドラムからギターに転向し、俺の未来地図はバンドマンになることを

思い描いていた。

しかし、道楽だと思い込んでた俺がプロになるといいだしたとき、義理の父親は怒り狂った。

「この恩知らずめ」と言って俺に銃を向けたかと思うとアンプやギターを撃って蜂の巣にした。

義理の母親まででてきて、部屋のポスターを破り捨てた。

俺は殺されるかと思い怖かった。

高校卒業後、父親の仕事の見張りをしているときに隙をみて家出をした。

女と一緒に。

父親の手下が追ってきてみつかり銃を撃ってきたがギターケースを盾にしてよけ、

逃げ続けた。

女は、その後どうなったかわからない。

すぐに見つかり、連れ戻された。

今度は父親に何度も殴られた。

「2度とこういう真似をしたら命はないと思え」といわれ、しばらくそこにとどまるしかなかった。

結局俺はこっち側の人間なんだとあきらめてしまった。

しかし、初めて人を殺した時は怖かった。

やっぱりカタギに戻ってバンドをやりたい。

父親の跡をつぎたがっていたスナイパーの義理の兄はチャンスとばかりに俺の味方をして仕事をやめて夢を叶えるように励ましてくれた。

俺は偽造パスポートをつくり、いつでも日本の東京と京都に行けるように準備していた。いつも新しい女にギターを聴かせてはその気にさせて逃げた。

高校時代のバンド仲間も俺を心配してくれていて、「一緒に逃げよう、東京に」と言ってくれた。インディーズレーベルに知り合いのヤクザの息子がいると知って俺は連絡を

取った。一緒に行く予定だった。

しかし、やはりライブの打ち上げの次の日にマフィアに捕まり、銃を撃って逃げたが

捕まってしまい、地元に連れ戻されて、近くの倉庫に監禁された。

女とバンド仲間とはそれきり会っていない。

彼らが殺されなかったのが救いだと今は思っている。

そのレーベルから4人はCDを出したが、売れないまま活動を続けていると風の便りで聞いた。

その後、何度も仕事を続けては女と逃げて日本へいくチャンスを伺っていたが

必ず捕まった。

そんな日々が数年続き、LA行きの話がきてこっちへきた。

こっちへきて、ライブハウスによく行ったが本場はやはり違う。

プロ顔負けのバンドばかりがプレイしていてやっぱり俺ら東洋人は勝てないと思った。

それでも日本のバンドが好きな理由は白人にはない表現や魅力を感じたからだ。

家族旅行で行った祇園で遊んだ幼い日々を思い出させた。

次の日、薫とハグをして香龍へ向かった。

リンの面倒はトニーさんが見ることになった。

俺は凛の様子を観にディーン宅へいった。

彼はおきていて観念したようにこちらをみた。

もう動けるようだった。

胴体を包帯で巻かれていた。

俺は「暇だろ、これでも読んどけ」とその辺においてあった西村豹の詩集をベッドの

ふとんの上に放り投げた。

ディーンの最近の愛読書だった。

リンは素直に本を受け取り、パラパラとページをめくってしばらく目を通していたが、

急に鼻歌を歌い出したので、気でも狂ったのかと目を見張った。

聴いたこともないメロディーだった。

リンは「なんか録音するものない?」と聞いてきた。

「んなもんねーよ、ここには。」といいつつ、Macを思い浮かべた。

「新曲ができた。最高傑作な奴」と彼は笑わずにいった。

「あきらめろ。お前はもうカタギじゃないんだ。元にはもどれない。」と自分にもいいきかせるようにいった。

彼は「・・・一人にしてくれないか。もう逃げないから安心しろよ」といわれたのでドアを閉めて下の階に降りていった。

リンは詩集を右手で乱暴に毛布の上におき、左手で顔を覆い、涙を流した。

アリサは2階をみて「いいの?一人にしておいて」と心配そうに聞いた。

「ほっとけ。感傷に浸ってるだけだ」と俺は酒を呑みながら言った。

今はビールを呑まなきゃやってられない気分だ。

アリサは「でも、せっかくの彼の音楽的な才能をつぶしていいのかしら。

ブタ箱からでてもLAだとやり直せると思う、彼なら」と残念そうにつぶやいた。

「才能?ないよ。この国にはどれだけうまくても音楽だけで食ってけない奴がごろごろいるんだぜ」と鼻で笑って言った。

2杯目のビールをついで俺は呑んだ。

さっきの曲は俺も思わず聞きほれてしまった。

ギターがあったら弾いていたかもしれない。

「それにトニーが彼を逃がさないよ。こっちの才能もあるんだから。天は2物を与えるってね。」とディーンはハジキを取り出して冷笑した。