薔薇色の人生 Ⅲ

はてなダイアリーで書ききれないことを書きます。スピリチュアルなど。よろしく。

灰色の街

俺は里緒との食事を楽しんだ。

こんなに心から笑ったのは久しぶりだ。

彼女は俺よりも3つ年上の元映画監督だった。

日本では有名で代表作をいくつか撮っていた。

そしてあの樋口美也の姪だった。

ジュニアの友也とも会ったことがあるそうだ。

樋口家に遊びにきて里緒に母親の面影をみて涙ぐんでいたらしい。

俺はその話を聞いて自分は実の母親に合わせる顔がないと後ろめたさと会いたさで胸が苦しくなった。

里緒には兄の高空(たかひろ)がいて、ドラマーをやってるそうだ。

樋口家からは松本家は嫌われていた。

愛人を作って子供まで孕ませてしまったのだから。

毎年個展やらTVで特集をやられると死人商売だと怒り狂いたくもあると里緒は語っていた。それに松田友美というノンフィクション作家までが調子に乗って松本友明の人生の本や樋口美也の一生まで赤裸々に書いたのだから利用されたと思ったのだろう。

樋口智宏の本名は水島といって2丁目でアルバイトして俳優になってドラマで

友明役までやったのだからますます美也の両親や叔母達は怒り狂っていた。

しかし訴訟まで起こすには至らなかった。

カメラマンは海外でも有名でピューリッツアー賞まで受賞していた。

里緒はいつか叔母の美也や友明の映画を撮るのが夢だった。

しかし、勝手にドラマ化されてショックを受けた。

「そりゃ、怒るわなぁ」と相槌を打った。

「俺、樋口美也のファンなんだ。彼女の写真集持ってるし映画もいつかみたいと思ってる。映画みるのが趣味なんだ。お前と一緒だな。」と遠回しに口説いた。

里緒は照れ臭そうに笑った。

「ずいぶんレトロな趣味なのね。おばさんのこと知ってるなんて。貴方は何をやってるの」と聞かれてつい「ギターが趣味。本場のロックに触れたくてここにきたんだ。呑み屋のバイトしながらメンバー探してる。曲聴いて耳コピしただけで全部弾けるんだ。凄いでしょ。」と言って里緒を笑わせた。

「貴方面白いわね。私はボサノバが好き」とあっさりかわされて焦った。

「俺も嫌いじゃないよ」と笑って合わせるしかなかった。

中華料理屋をあとにしてタクシーで彼女を家まで送り、俺もそのまま自宅へ戻った。

部屋に戻ってから教祖の写真をみてため息をついた。

いつ指令が来るんだろう。

次の日、瞳から小さな液体の入った小瓶を渡された。

倉庫を襲ったときに拾ったそうだ。

これを調べろというのか。

リンに頼んだら「CDを調べるだけでもうたくさんや。それにもうトニーさんと一緒に

初仕事するし今夜は。お前PC持ってるだろ。自分で調べろよ。」とアリサをみながら断られた。俺は仕方なく時間が空いたときに調べることにした。

アリサの様子が最近変だ。アリサはロスにくる直前まで俺と2年くらい一緒に住んでいた元恋人なのでみてるだけでなんでもわかる。

ロスに来る前に俺達には遠距離恋愛は無理だからと別れてきてしまった。

薫と出会ってなかったら今頃やり直していたかもしれない。

里緒と出会っても惚れることはなかったと思う。

アリサは仕事柄、男勝りの性格だったが、俺の前ではスナイパーじゃなくただの女だった。香港にいた頃、出会いは最悪で俺が彼女の標的だった。

何度もかわしたがしつこく俺を狙って撃ってきた。

いつも俺の仕事を邪魔された。しかし彼女を雇ったマフィア達は俺を雇ったマフィアに全員殺されてしまった。

俺のボスは何を考えたのかなぜか彼女を雇い、俺と仕事上のパートナーになって一緒に

組むことになった。

彼女は逃げ足が速かったので命は助かった。

お互いに屈辱を感じたが、一緒に仕事をしてるうちに息が合った最強コンビになっていった。いつも彼女といると空気が張り詰めた。

おまけに美人だったのでときどき親睦を深めようとして食事に誘った。

昨日の敵は今日の友。

お互いに距離を保っていたが、ある日二人の緊張感が緩んだときにお互いに恋に落ちていた。

あのどしゃぶりの夜に雨宿りしてるときに距離が縮まり、ぷつんと糸がきれたように

濡れた髪と服の下のブラジャーが透けてみえたときに抑えきれなくなってキスをしてしまった。雨音は更に激しくなり、ホテルに泊まる破目になった。

お互いにシャワーを浴びたあと、俺達は初めて結ばれた。

その後は仕事のあとに激しく抱き合ったり仕事のない日はお互いの家を行き来していたが、結局一緒に住むことになった。

クリスマスの日はアリサにティファニーの指輪をプレゼントした。

アリサはパリから香港にきた刺客だった。

日本とフランスのハーフ。

場所は教えてくれなかったがパリ以外のスナイパー養成所から脱走して逃げてきた。

だんだんと仲がマンネリ化してきたころLA行きの話がきた。

俺達は喧嘩することもなく別れた。

一歩間違えば俺達は綺麗に殺し合えて、そのほうがよかったのかもしれない。

もう彼女を愛していないはずなのに。

ディーンを見つめるアリサの目はうるんでいてスナイパーというよりはいつもよりも

女性らしく感じた。

複雑な気持ちだった。

リンもアリサに気があるようだ。

ディーンに盗られるくらいならリンと出来たほうがまだマシだと思った。

俺は少しいらだった。

瞳と瞳の彼氏は俺達のことをよく知ってたので瞳の彼氏に酔った勢いでつい愚痴をいってしまった。

「ああ、それは愛じゃなくて執着よ」とその彼氏にいわれた。

執着は愛や恋に似てるから錯覚しやすいが違うそうだ。

アリサはもう俺に未練はなさそうだった。

ディーンは彼女がいるのでアリサには見向きもしない。

でも、久しぶりにアリサと再会したときにお互いになつかしくて思わず

家に泊めて抱き合ってしまった。

まだ薫と付き合っていたときだ。

次の日はお互いに何事もなく店にきてお互いの仕事をこなした。

このことは二人だけの秘密にした。