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薔薇色の人生 Ⅲ

はてなダイアリーで書ききれないことを書きます。スピリチュアルなど。よろしく。

灰色の街 ~現在・過去~4

次の日も高美に呼ばれてホテルの一室にいた。

彼女は「殺したい人物の依頼をしにきたわ。」と神経質に髪をかきあげて写真を無造作にテーブルの上に置いた。

俺は息を飲んだ。

それは彼女自身だった。

「お前何を考えてる!?みんなほしい物手に入れて満足したんじゃないのか?

これ以上いったい何が不満なんだ?何をお前は求めてる?」

俺は彼女に対する怒りと憎しみと悲しみでいっぱいになった。

いっそのこと願いを叶えてやってやろうとも。

しかし、仕事に私情は挟めない。

西村を通せとあれほど言っておいたのに。

それに彼女は俺の憧れでもあった。

俺にできないことをすべて叶えていて恋人もいて、血の繋がった家族にも恵まれていてロック界でいうところのジャパニーズドリームを体現した女性ロックシンガーだった。

初めて会ったときも「俺こいつと結婚するかもしれない」などと甘い夢さえみていた。

「私に足りないものはたくさんあるのよ。平凡に結婚して子供もほしかった。すべて犠牲にして今の地位を手に入れた。でも、それでもこのドス黒い感情は消えないの。貴方が止めて。すべてを終わらせたいの。報酬は印税の半分。あとは家族にあげて。遺産として。私にとって生きることは歌うことだった。でも、もう疲れちゃった。」彼女は下を向いて声を震わせて言った。目を固くつぶっていた。俺は彼女をいつのまにか抱きしめていた。高美も背中に腕を絡めてきた。深いため息をして。

「リクとは別れたわ。彼じゃ駄目なの。心の隙間を埋めることはできない。スナイパーのことがもっと知りたい」と体を離していきなりキスをしてきた。

俺は不覚にも舌を絡めてしまい、我に返って突き放した。

二人とも息が荒くなっていた。

「俺はお前の願いは叶えてやれない。他を当たれ。頭を冷やせ。それに一か月後には大事な用事があるからもう会うことはない」と言って帰ろうとした。

「シャワーを浴びてくるわ」と言って彼女はバスルームに消えた。

俺はその隙に部屋をでた。外にでた。夜空を見上げたら満月だった。

首を振って歩き始めた。なんでキスをしてしまったんだろう。

しかし、ふと彼女をひとり置き去りにしてしまったことに嫌な予感がした。

もし、自殺を本気で考えていたなら止めたほうがいいかもしれない。

とにかく戻ろう。急いでさっき来た道を走ってホテルのほうへ向かった。

エレベーターのボタンを急いで押して中に入り、部屋の番号が書かれた部屋の呼び鈴を押して、ドアを叩いた。「おい!開けろ!早まるな!」ガチャっとドアが開き、「何よ。」と高美はバスローブ姿で濡れた髪をタオルでふきながら姿をみせた。

「よかった、まだ生きてたか。」という俺の腕をつかみ強引に部屋にいれた。

「さっきのは嘘よ。貴方がチャカで私を脅したからちょっと意地悪しただけ。振られたのは事実だけど」と笑いながら言った。(この女。。。!)

俺は思わず高美の頬を強く平手でぶった。

そして押し倒してしまった。

俺は熱にうかされたように彼女に抵抗されても行為を止めることができなかった。

そしてお互いに着ているものを全部脱いで、彼女は背中にしがみついて最中は離れなかった。二人とも震えていた。

情事が終わって余韻にひたりつつ「ごめん」と謝った。

「どうして謝るの。誘惑したのは私のほう」と高美は俺の胸に顔をうずめて言った。

俺は彼女の髪を優しくなでて、ゆっくりとそのまま手を背中まで伸ばしていった。

「ねぇ、あなたのこと聞かせて。」「・・・何が知りたい?」

「今まで何人の人間を殺してきたのか。どうしてこの仕事を始めたのか」

「そんなに知りたいのか」俺は迷いながらゆっくりと記憶をたどり始めた。

俺は許されたかった。

でも何に?誰に?わからなかった。

自白は朝まで続くかもしれない。

携帯の電源を切った。

後で知ったことだが高美も俺に初めて会ったときにリクがいたのにも関わらず俺と結婚するかもしれないと思ったそうだ。

 

西村豹は俺の帰りが遅いので不審に思った。

そして、チョコレートと飴玉を比べて飴を選び口の中で転がした。

豹の家庭環境は最悪だった。

父親は酒乱でいつも母親をDVしていた。

毎日のように。

母親はストレス発散のために幼い豹を幼稚園から帰ってきてから

体にあざがみえないように虐待した。

そのうち、母親は他に男を作って家をでていってしまった。

豹は父と母を憎んでいた。

警察は児童福祉施設に保護されたとき、心からほっとした。

中卒後、高校に行かず、バイトをしながら当時ハマっていたV系に影響されてバンドのボーカルをしてバンギャからかなりの人気を博していたが彼自身はどこか冷めていた。

このころから作詞をしていた。

そして気まぐれに書いた詞をある出版社に応募して新人賞を受賞して今に至る。

マヤは今頃どこにいるだろう。

母親の行方も父親もその後どうなったか知らない。

もうそんな昔のことはどうでもよかった。