薔薇色の人生 Ⅲ

はてなダイアリーで書ききれないことを書きます。スピリチュアルなど。よろしく。

灰色の街~現在・過去~

俺は紫音のソロライブに参加した高美のライブを東京だけ観に行った。

あの夜以来、お互いに逢引きしていた。

バンド以外の彼女の歌を聴くのは初めてだった。

普段の彼女よりも数倍色っぽく声もハスキーで魅了された。

ステージの上の彼女がすごくほしいと切望した。

でも、それはかなわない。

涙がでそうになった。

打ち上げにも参加させてもらったがやはりステージから降りた彼女に魅力はあまり感じなかった。

彼女自身も仕事を終えた俺にしか興味を示さない。

お互い様だった。

それでも彼女を抱いてるときは彼女のいる世界に触れてる気がして

心地よかった。

彼女も同じで俺に抱かれてるときだけ持て余している他人への憎悪を打ち消すことができた。

初めて抱いた夜は結局自分の恋愛遍歴と最近、殺した相手の特徴を数人しかあげなかった。

この仕事をやめたいとも打ち明けた。

すると彼女はこともなげに俺と別れて同じスナイパーのリンやタクヤを口説くといいだした。「やめちゃだめ!私の居場所がなくなっちゃう」俺は嫉妬した。

「じゃぁ俺もお前が歌をやめたら他の女性シンガーに乗り換えるよ。リリィとか」

と嘘を言った。

二人とも安らぎを求めてるはずなのに、言ってることがめちゃくちゃだ。

俺達は利害が一致していた。

俺は彼女の気持ちも自分の気持ちもわからなかった。

いつかこの仕事をやめようと思ってたのに深みにはまっていく。

恋に似ていた。

ある日、紫音のツアーが終わり、ひと段落したときに高美と横浜の中華街をデートした。

二人手を繋ぎながら、街並みを歩いた。

お互いに冗談を言って笑いあった。

俺は幼少の頃、神戸の中華街に住んでたことを何気なく彼女に話した。

日本に戻ってきてから華僑に行くのは久しぶりだった。

思い出したくなかった。

あの惨劇の夜。

でも今は女を連れてきている。

高美を堕としたくもなった。

胸が痛くなった。

彼女を憎んでさえいた。

露店で売ってた指輪を二つ買ってそのうちのひとつを彼女に渡した。

「やるよ」笑顔で彼女をみた。

「ありがと。せっかくだからもらっておく」

と嬉しそうに彼女は薬指にはめた。

これで何個目のリングを今までの恋人にあげただろう。

ここは神戸の中華街に似ている。

幼少の頃を思い出す。

彼女は人目を気にしてサングラスをかけていた。

俺達はこのままはかなく消えてしまいそうな気がした。

終わりにしたくないから情事を繰り返しながら別れを告げるのを先延ばしにしていた。

俺は一か月後にはロンドンに高跳びするつもりでいた。

彼女を連れていくことはできない。

永遠に関係が続く気もしていた。

そのとき、複数のチンピラに囲まれた。

ぶつかっただけなのに。

いちゃもんつけられた。

俺はおびえている彼女にある店に逃げるように耳打ちをして

素手で殴られたので殴り返した。

彼女は一目散に逃げた。

スキャンダルになるのを恐れて。

ここでチャカをだしたらまずい。

俺は相手を拳でボコボコに殴って足で倒れた相手を蹴って逃げた。

口の中は血の味がした。

ある中華料理店に高美はいて外の俺の様子を窓から伺っていた。

「銃は今日はもってないんだ」とつぶやいた。

テーブルのほうを向き直って出されたジャスミンティーを震えた手でもって

一口飲んだ。

「大丈夫?」とチャイナドレスを着たウェイトレスに聞かれた。

「ええ。なんともないです。」と答えたがレンが心配でたまらなかった。

そのウェイトレスをどこかでみたことがあると思った。

男が店に入ってきた。

「レン!大丈夫?」高美は口を切って血がでてる俺を心配していた。

「ああ。こんなのは日常茶飯事だから平気」と親指で口からにじみ出た血をぬぐって平静を装った。

ここもずいぶんと物騒になったものだ。

「あんたはいつも絡まれやすいものね」という声がした。

「アリサ。ここにいたんか」とチャイナドレスのアリサに見惚れつつも声をかけた。

「ここは私の取り締まりだからね。」と俺にもジャスミンティーを用意してくれた。

俺は「また一緒にコンビ組もうぜ。ここのマフィアの依頼は俺に任せろ。お前ひとりじゃやりにくいだろ」と高美のテーブルに座り、腕を組んで笑みを含んで言った。

高美は新宿2丁目の智宏の店にいた美人を思い出した。

彼女が昔の蓮の恋人の1人のスナイパーだったんだー。

嫉妬心が湧きあがった。

古い付き合いらしい。別れたと言っても。

「私一人で十分よ。それに何かあったらリンに助けを求めるから安心して」

「ああ、お前ら、籍いれたんだっけ。子供はまだつくらへんの?」

アリサはそれには答えずただほほ笑んだだけだった。

「新倉アリサか。絶対安藤アリサのほうがよかったのに」とレンは残念そうだ。

「逃がした魚は大きかったわね」とレンに顔を近づけてアリサは茶目っ気たっぷりにいい、二人はお互いに笑った。

高美は話についていけず一人取り残された気分だった。

プロになる前の私ならプライドズタズタだったはず。

今は世間が自分が男一人のために取り乱すことを許さなかった。

「アリサ、こいつを送ってやって。まだその辺にヤバイ奴おるかもしれへんから」

高美を指さして頼んだ。

ちょうど休憩中だったので送ってもらうことにした。

高美は笑顔を作ってアリサと一緒に店をでた。

「あなた、もしかしてHONEY-XのVO?いつからレンと?」とアリサのほうから訪ねてきた。

「よく似てるって言われる」と高美は笑わずに答えた。

「そういうことにしとく。」アリサはそれ以上何も聞かなかった。

この人もたしかスナイパーだったはず。

リン。あのセクシーなルックスの男か。

高美はアリサと別れてからため息をついた。

お似合いかもしれないと思った。

「DRAIN AWAY」下手ギタリストの健(たける)に似てると思った。