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薔薇色の人生 Ⅲ

はてなダイアリーで書ききれないことを書きます。スピリチュアルなど。よろしく。

灰色の街~彼女と過ごした冬5・~

俺は今日もいつもの場所へ行き、スコープ越しに警備員を狙っていた。

亡命者の男が一人国境を越えて逃げてきた。

つれもどそうとする警官を遠くから狙い、一人、狙撃した。

俺はため息をつき、新しい弾を入れた。

「相変わらずのいい腕前ね」と聞きおぼえのある声がした。

振り向いたら神崎マヤがいて俺の横で腕を組んで見つめていた。

俺は驚いた。

「なんでここにお前がいるんだ」

マヤは笑顔を浮かべて「今は香港の警察よ。中共政府が不審な動きが北との国境であるらしいと疑ってるみたいね。また会えて嬉しいわ」と答えた。

おれはいぶかし気に彼女に聞いた。

「今度は中共のスパイってわけか。また金目当てか。」と軽く笑みを浮かべてみせた。

久しぶりに再会したマヤは相変わらず胸が大きく、年齢も感じさせないほど美しかった。

「ここにきたのはただの偶然よ。今は他の不審者を探しに来たの。貴方とは無関係よ。他に貴方とおなじ事をしてる殺し屋が何人もいた。奇遇ね」。

「そうなんや」俺達は互いに見つめ合った。

瞳やトシヤが偶然、その現場に居合わせたが、慌てて建物の影に隠れた。

「みつけた」、と瞳は駆け寄ろうとしたがトシヤに引き留められて仕方なく様子を伺った。

俺とマヤは二人で国境付近をあとにした。

トシヤは「なんで撃たなかったの。らしくないね」と皮肉たっぷりに言った。

瞳は軽く不敵な笑みを浮かべて「最期の逢瀬だもの。楽しんでからのほうが彼も思い残すことはないと思うの。マヤの真意は測りかねるけど」と言ってのけた。

「あの二人がそうなるとは思えないんだけどな」と少し考えてからトシヤは瞳に尋ねた。

「女の勘。あの二人はお似合いよ。マヤと一緒にあの世へ逝けたら本望じゃないの。

あの女、昔からずっと蓮だけをいつもみてた。」とこともなげに言う瞳。

トシヤは仰天した。

瞳はそんなトシヤを一瞥して「鈍感」と一言だけ言って二人の跡をしばらく目で追っていたがすぐに香港へ戻った。トシヤも「ねぇ、いつから気付いてたの!?」と瞳を追いかけて走った。

たしかに俺は死と隣合わせにいつもぎりぎりで生きてきた。

マヤもそうだっただろう。

俺達はあの時はどうかしていた。

いつ死ぬかわからない極限の状態で再会した。

京子の存在を忘れて、夜の街をマヤと歩き、マヤの宿泊しているホテルに泊まり

見つめ合いながら抱き合った。

今度こそ生身の女だと思った。

マヤは何もいわずに身を任せてきた。

その夜はお互いに激しく求め合った。

あんなにも憎みあっていたはずなのに。

事が終わったあともずっと抱き合っていた。

これから俺達はどうなるんだろう。

マヤはずっと無口だった。

俺も何も話さなかった。

朝がきた。

「帰るわ。仕事に戻らなきゃ」マヤは素早く着替えて部屋を出ようとした。

俺も素早く着替えて「じゃ、また。いつ会えるかわからへんけど」としか言えなかった。

マヤは後ろ姿で手を振って廊下を歩いて去っていった。

自分が宿泊しているホテルの部屋に戻り、煙草を吸った。

「あの女、誰なの?」と声がした。

ぎょっとして後ろをみたら京子がいた。

「ずっとみてたんか。」焦った。

「私は何もみてないし貴方にも未練なんかないわ

安心して。でもまだ成仏できないから帰ってくるのを待ってた。」

と意外に冷静だった。

「じゃぁ、なんでここにおるん!?俺はあいつの事はなんとも思ってないしずっとご無沙汰だったし」と幽霊相手に言い訳しつつ聞き返した。

「こっちが知りたい。なんでここにいるのかわからない」と言われて困惑した。

「あの女は警察にチクったりしないから大丈夫よ。彼女は他の人のスパイで頭がいっぱいだから」。俺は呆気にとられた。

京子は他に理由があってまだこの世をさまよっているらしい。