薔薇色の人生 Ⅲ

はてなダイアリーで書ききれないことを書きます。スピリチュアルなど。よろしく。

灰色の街~香港編・彼女と過ごした春~

俺は軽く舌打ちをした。

京子の姿は相変わらず視えていたが構ってる暇はなかった。

何かいいたげな表情をしていたが無視した。

本当は今直ぐ浄霊してすっきりしたいが別れたくない、ずっと俺の傍に居て欲しいという気持ちもあった。

とにかく、今起きている事件を解決することに集中しようー。

そう自分に言いきかせ振るい立たせて5人と待ち合わせした「フェイ」というBARに向かった。

中に入るとテーブルでまた連中は肴とお酒で飲んだくれていた。

「よう」俺は呆れつつも一人だけカウンターに座り、凛に声をかけてウォッカのロックを頼んだ。

凛は言われたとうりにウォッカをコースターの上に置いた。

「お前に大事な話があるんだ。マヤという女のことで」と凛に話しかけられた時に

携帯が鳴った。

アニソンの「1万年と2千年前から愛してる~」というフレーズと共に、凛はスーツの

ポケットから携帯を取り出し、英語で誰かと話していた。

こいつ、アニソンが着信音かよ。

俺は鼻で笑いながら一杯飲み干した。

誰かと話していた。

ミスター立花という単語とクロムハーツKANONという言葉が聞こえた。

あいつら何者なんや。

俺はさっき取り逃がした相手を思いだし、いらだってきた。

今どこにおるんやろ。

「bye,see you soon」と携帯を切り、凛は「大変やで」と話しを切り出した。

「なんやねん、トシヤのいうことなんか真に受けんなや。あの女とはもう切れてんで」

と上目使いで睨んで口を尖らせて関係を否定した。

凛は困ったように「それどころやない、大変なことになってもうた」と別の話題に切りかえた。

「は?」俺はまた今度は香港にイタリアンマフィアのボスが遊びに来たのかと思った。

「立花さん、自分がよくローマ市内でクロムのKANONに間違えられてサイン求められるからって悪のりして、その女ひっかけて酒飲まして遊びまくってんねん」と凛は半ば本当に困っていてため息をついていった。

俺はクロムのKANONといえばバンドのリーダーでドラムとピアノと作詞作曲をしているロックスターだと元カノに教えられていたのでよく知っていた。

おまけに香港ではバナナがなくてホテルを移動したエピソードが女子高生の間で

有名なのをネットニュースで知っていたので思いだして吹き出してしまった。

「何わろてんねん」と凛にしかめ面をしながらたしなめられたので「ほな、俺もよくドレインアウェイの上手ギターのリクに間違われて十代の子に声かけられるから今度かわええ子やったら、速攻でホテルにつれこもっかな」と酔った勢いで言ったら京子と凛が同時に俺を睨みつけた。

その瞬間、目の前の俺の空のグラスが割れた。

誰もそのグラスに触れていないのにも関わらずだ。

京子に「最低!」と怒鳴られた時だった。

凛はびっくりし、俺は凍り付いた。

俺は平静を装いながら「お前、立花さんと知り合いなんか?あの人はメイクしてないし

グラサン外したらすぐばれて捕まるはずや。それよりさっきのもう一杯くれ」と、

アンジェラ達をみながら言った。

凛は「クロムはワールドツアー終えたばかりや、イタリアに行かなくて正解やったな。

KANONさんは首の手術終えたばかりやし。ネットでファンが自慢してたらあっという間に日本やLAに広まるで。ただでさえ、アルバムまだでとらんのに。立花さんはイタリアマフィアのボスで以前よくここに呑みにきてたんや。今はローマにおる。」と身内のように言った。

「お前も立花さんと知り合いか?」と俺は心底驚いた。

香港はこんなに狭かったやろか。

「お前もってどこであの人と知り合ったんや?」と凛に逆に聞かれた。

「ちょっと雇われて一緒に仕事をしたんや。そういえば鼻とか口とか骨格とか輪郭とかそっくりやな。性格は全く違うからいくらファンでも途中で気づくやろ」と二人を比べて思いだした。

凛は「性格まで似とるわけないやろ。しかし世界には自分に似た人が3人もおるって話もあるし、あれ、ほんまやったんやな。つうかさっきの現象は何や、お前がやったんかグラス。弁償しろや」と少し考えこんでから我に返って言った。

「知らん。この店古いから怪奇現象ちゃう?俺ちゃうで」と後ろの京子を観ながら言った。

凛は青くなっていた。

「今夜はもう店しまおっかな」とドアに「CLOSE」と看板を裏返しにしに行った。

「あ、おいさっきの大事な話って何?」と俺は凛の背中に声をかけた。

凛は看板を裏返しにして戻ってきてから「マヤに気をつけたほうがええで。」と意味ありげに忠告された。

「あいつ、ロシアのテロ事件に関わってるんかな」と俺はマヤの銃さばきとバスタオル一枚だけ巻いた姿を思い出しながら凛に尋ねた。

「それはないやろ、別の組織と繋がりありそうや。なんで香港におるのか謎やけど」

と心配げに俺をみてつぶやいた。

「俺は大丈夫やって。今女どころやないし」と話してたら、アンジェラに声をかけられて、奥のテーブルに行ったら、クッシーに「この防弾チョッキにも星マークが書かれてあるけどなんか意味あるのか」と聞かれた。

俺は「いや、なんか描きたくなったから」と言って5人を呆れさせた。

「ねぇそれよりギター弾いてなんか歌ってよ。もう店閉まるみたいだし。」と酔ったアンジェラにいわれて仕方なく「ほな1曲だけ。もうここでようや」と笑顔で言って、凛からフォークギターを借りて幼い頃におふくろがよく歌っていた日本の女性歌手のフォークソングを弾き語りで日本語で歌った。

目を閉じて歌いながら両親を懐かしく思った。

5人と凛はしんみりと俺の歌声を聞いていた。