薔薇色の人生 Ⅲ

はてなダイアリーで書ききれないことを書きます。スピリチュアルなど。よろしく。

青い血の香り

MITSUKIは今年こそ再結成してからまだ1枚も出ていないアルバムのレコーディングの佳境に熱を入れていた。

今日は㏠中新曲のミックスダウンをした。

たくさんの機材に囲まれながら、真剣に音を聴きながらエフェクトをかけたり、微妙な音のチューニングをしたりその作業は夜中まで続いた。

一週間後には自分達の映画のプレミア試写会の為に日本に一時帰国する。

それまでに仕上げなければ間に合わない。

でも妥協はしたくない。

1人葛藤していた。

もう3日間も寝ていない。

こんなのは日常茶飯事だった。

体力の限界が来ると貧血気味になる。

鉄分をなるべく多く採るようにしているがどうしても足りなくなって時には倒れてしまうこともあった。

今日はもう限界だー。

彼はマネージャーでもある弟の龍樹(たつき)に「ねぇ、あとで、休憩に入るからその時に牛乳をもってきてくれ」と頼んだ。

龍樹は「はい、わかりました」と心配気に答えた。

彼もまた万年鉄分が不足していた。

更に2時間が経過した。

そろそろ休憩にしようとMITSUKIが椅子から立ち上がった時に眩暈や立ちくらみを覚え、そのまま椅子から床に倒れてしまった。

秘書の白人女性が「MITSUKI!」と口に両手をあてて、叫んだ。

MITSUKIが再び意識を取り戻したらそこは白い壁の部屋だった。

また病室に運ばれたのか。

これで何度目の輸血だろう。

MITSUKIは世界的に類をみない奇病の「鮮血欠乏症」という持病をうまれつきもっていた。

完治する見込みはない。

先祖代々から受け継いだ持病だった。

第一子にだけ罹る奇病だった。

毎年最低一回でも輸血をしないと彼は死んでしまうのだった。

まるでヴァンパイアみたいだー。

MITSUKIはそうひとりごちてほほ笑んだ。

 

一方、東京で蒼井栞奈はわざわざ、昔流行ったドラマ「フェアじゃない」という刑事ドラマシリーズのブルーレイを部下の山下にレンタルさせてもってきてもらい、一緒に徹夜で観た。

誰もいない、署内の部屋で。

ガイシャの名前は田口英子(えいこ)。イニシャルはT。

犯人が自分の名前をわざわざ教えるような浅はかな人間には思えなかった。

十代の美少女だった。

血はほとんど搾り取られていた。

おそらく犯人は血に飢えたサイコパスの男性に違いないと睨んだ。

「なんだか吸血鬼みたいな星ですね」と山下が一言。

全部見終わった栞奈が一言。

「このドラマを忠実に再現するなら犯人の狙いは私ね。そして犯人はー。」と山下を

見据えていいかけた。

山下は慌てて「やめてくださいよぉ。僕は蒼井さんに恨みなんかひとつもないですよ」と否定した。

「でも、貴方は私の思想が嫌いでしょ。それに貴方が大切にしていたCDを踏んで割ってしまったこともあるし恨まれても仕方ないわ。ある意味踏み絵ね、根に持たれても仕方がないわ」と顔色ひとつ変えずに言った。

「たしかにあの時は軽く殺意を感じましたけど、、、て、違います!僕がそんなことで人生を無駄にするような人間にみえますか!?」と栞奈の目を見て全力で否定した。

「そのように思わせて私達警察官の団結力を奪うのが犯人の目的よ。わざと捜査を混乱させようとしてるみたい。悪かったわ、疑うようなことをわざと言ってしまって」ときっぱりと言いきった。

「でも、わざわざ参上とかって俺達に挑戦状を送り付けるような犯行はなんだか舐められてる気がするんですけど」と山下は疑いが晴れて安堵してから推理を始めた。

「まったくだわ、パクるあたりがいかにも不逞鮮人らしい。明日新大久保に行くわよ。」と言って警察署をあとにした。

不逞鮮人!またか。

山下は半ば呆れた。

いつも彼女はまず最初に在日コリアンを疑ってかかる。

「不逞鮮人」とはいつも犯人探しの際に必ずでてくる栞奈の口癖みたいなものだった。

ほとんど当てが外れているのだが。

確かに年間の外国人犯罪率の統計1位はダントツで在日コリアンだった。

次に栞奈の口から出てくるのが「支那人」という言葉。

山下はてっきりラーメンの種類かと思った。

池袋と新大久保を捜査してから血の匂いとやらの正体を探すのが栞奈のやり方だった。

山下は自分達の捜査の仕方を外部には漏れないように注意した。

レイシスト扱いされかねないからだった。

新米の山下は最初から血の匂いの勘に頼ってほしいものだとため息をついた。