薔薇色の人生 Ⅲ

はてなダイアリーで書ききれないことを書きます。スピリチュアルなど。よろしく。

灰色の街~新宿編~紫のナイフ~

俺はまたスマートフォンで高美に呼び出されてのこのこと会いにいってしまった。

別に未練があったからじゃない。

もう二人きりで会いたくなかったので凛と一緒にある日本料理店の待ち合わせの場所にむかった。

鏡月」と書かれた暖簾をくぐって中に入ったら彼女は一人でいた。

金色の長い髪は少し色落ちしていた。

「ここもお前には不似合いな感じがするけど」と俺は苦笑して挨拶した。

「失礼ね」と彼女は小悪魔のような笑顔をみせた。

凛も「押忍」と挨拶した。

お座敷に座り、おしながきをみて、凛と同じ鯖のフルコースを頼んだ。

「ここ、今の季節は松茸の御吸物が絶品なのよ」と高美は俺達にウィンクした。

凛は無視した。

今迄無理なお願いをしてきたのだから当然か。

そして勧められるまま、料理が運ばれてきたので3人はぎこちなく乾杯して食べた。

俺は熱燗は苦手なので一人だけビール、二人は熱燗を一本ずつ頼んで一口飲んだ。

御吸物は絶品で思わず「うま!」と声に出してしまった。

「ね?美味しいでしょ」高美は首をかしげてほほ笑む。

俺は凛と高美が打ち解けて食べ物について話し合っていたので意外に感じた。

凛は時々ちらりと俺をみた。

「3人で囲むなら鍋にすればよかったわ」と凛。

「まだ早いでしょ。秋刀魚の季節だし」と両目を瞬きしながら無表情で秋刀魚に舌鼓をうっていた。

「いや、鍋もええで。」と凛。

「じゃぁ、今度はアリサさんもいれて4人で鍋ものにしようか。」

高美がそういいかけたとき、若い板前が「らっしゃーい!」と威勢よく女性客二人に声をかけた。

「あら鏡(きょう)様、今夜も一段と男前ね」と一人の女子が浮かれて話しかけていた。

女性客はカウンターに座った。

俺はなんだか面白くなかった。

高美がまったく意にかえしていないようだったので狙ってないんかと意外に思えた。

俺達は他愛もない世間話をした。

ひととうり、料理を食べ終えた頃。

「もう帰ろうか」と高美は俺をみた。

凛は慌てて、「俺送るわ」と高美を促した。

「そう?ありがと。呑みすぎたみたい。」と凛を見つめた。

その眼はわずかに光っていて俺のほうが焦った。

「ほな行こか」と凛は高美の腕をつかんで立たせて、店をでた。

俺も後ろからついて行った。

嫌な予感がした。

冷たい汗が背中を伝って流れた。

凛に嫉妬しているわけではない。

初めて俺をホテルに呼び出した時の獲物を捕らえる時の目に似ていた。

「じゃぁ俺はこの辺で。凛、後は頼むね」と二人に背を向けて足早に去った。

もう一軒いこうと思い、トシヤをスマートフォンで呼び出し、彼の行きつけのBARに酔寄った。

凛はビルの最上階の綺麗な夜景の見えるBARに高美といた。

「なんや、ホテルやないんか」とわざと冗談をいう凛。

「そんなに急かさないでよ。大事な話があるんだから」とジョークで返す高美。

「まぁどんな話にせよ、内容によっては無理やから。どんなに大金を掴まれてもな」

と少し口を尖らせた。

「体で払っても?ふふ、嘘よ。貴方には可愛い奥さんがいるものね。

体に名前彫るくらい彼女に惚れこんでるんだって?」

今度は高美の言葉に凛の顔が火照った。

「蓮から聞いたんか!あいつ酔うとなんでもしゃべるし、あとで泣かしたる」といいつつ、一気に残りのグラスの焼酎を煽った。

高美は笑いを堪えながら、しかし真面目な表情に変わり、

「彼はそんなにおしゃべりじゃないわよ。私の友達に尚樹っていう元ホストが経営している歌舞伎町のホストクラブがあるの。そこの新人がやらかしちゃったの。」と重要な秘密を打ち明けるように言った。

凛はだまって聞いていた。

「でね、ホステスに入れあげて、彼女の借金を肩代わりしたの。そこまではよくある話ね。でもそれ、全部嘘。半グレのヒモ男に貢いでたの。ブラジリアンに。可哀そうでしょ。彼。自殺未遂しちゃったのよね。許せないって尚樹がいってたわ。」

凛はその新人ホストを気の毒に思ったが、何故自分に話すのか謎だった。

「で、借金取りが尚樹の店にきちゃってね。そのクレジット会社は暴力団に頼んで今週中に払わないと店と潰すと脅されたの」と高美は凛に助けを求めるように見て相談した。「その暴力団を貴方一人で始末してほしいの。貴方なら簡単にできるでしょ。こんなこと、蓮には頼めない。だって昔の男だもの。ね、お願い」と、両手を挟んですがるような目つきで嘆願した。

凛は冷静になって「悪いけど、他当たってや。今俺ら忙しいし。わかるやろ。例のテロ事件や。」と席を立とうとしたとき、いきなり腕を掴まれて耳元で「ね、元ドーリスのギタリストのRINさん。お願い」といわれ、驚いて高美の方を振り返ったらドーリスのCDとDVDをカウンターの上に置かれた。「私の耳はごまかせないわよ。健(たける)の後輩でしょ、あんた。よく似てると思ったわ。声までそっくり。動画にUPされたギターと声。BooKOutに行ったら中古で売られてた」と無邪気に笑っていた。

「もし断ったら?」とごくりと唾を飲み込んで凛は聞くと「誰に教えても信用してもらえなかったけどね。」とスパーリングワインを呑みほした。

凛はほっとした。「ほな、帰るで」と席をたった。「お勘定。払っといて」と恨めしそうに言った。

凛はため息をついて「わかった。昔のことは忘れといてな。」と言い残して勘定を払ってからBARをでた。

エレベーターがきて中に入ったら滑り込むように高美は入ってきた。

凛はぎょっとした。

エレベーターの中で高美は凛に抱き着いて唇を強く当ててきて、舌を流し込んできた。

狭い空間の中で凛は抵抗できず、きつい香水の匂いの中で力が抜けた。

下半身が反応するのがわかった。

エレベーターが止まり、ドアが開くのと同時に二人は体を離した。

白人達数人が入ってきた。

そのまま一階のフロントまでエレベーターは降りていった。

廊下に二人はでて外の出口を無言で歩いて行った。

「安心して。アリサさんには何もいわないから。私も今彼氏いるから知られたくないの。」高美の強い視線にたじろいだ。

凛は観念して「わかった。奴らの組織は?場所はどこがええ?」

高美は何事もなかったように「あとでLINEで知らせる」と髪をかき上げて答えた。

凛は急いで絨毯を敷かれた廊下を歩いた。

「ねぇ」後ろから高美の声がした。

「どこまでが友達でどこからが浮気だと思う?」と聞かれて「キス以上が浮気や」と振り向いてい答えたら高美は「そう、わかった」と凛をみないでどこか遠い目をしていた。

(なんやこいつ。わけわからん)と凛は香水の匂いをアリサにどう言い訳しようか必死に考えを巡らせた。

蓮はトシヤと呑みながら高美に初めてホテルに呼び出された日のことを思いだしていた。「BooKoutに寄ったらね、私達のCDが置かれてたの。中古で。今をときめくHONEY-Xよ。私それみたらなんか今までやってきたことすべて否定された気がしてやりきれなかった。気づいたら全部買ってた。」高美の言った言葉がなぜか頭から離れなかった。「なんでそんなんで死にたくなるねん」とひとりごちた。トシヤが「何?」と聞いた。「いや、こっちの話」と一杯飲み干した。トシヤは首を傾げた。