薔薇色の人生 Ⅲ

はてなダイアリーで書ききれないことを書きます。スピリチュアルなど。よろしく。

灰色の街~紫のナイフ12~

最近、俺達のテロ対策本部宛に尚樹から「K・ワイン」とボジョレー・ヌーヴォーが届いた。

この前の事件が解決したことへのお礼だった。

俺はミリコの影響でシャンパンを毎晩嗜む程度だったが、両方、今年解禁の赤ワインだったのでボジョレーは赤、Kワインは白を選んで今夜は自棄酒することにした。

松田友美と一緒に部屋で「ツィンピークス」シリーズを観る約束をしたからだ。

高美と尚樹は喧嘩したらしい。

まさか殺し屋を雇っていたとは思わなかったからだ。

高美は友達の為に助けてあげたのにと憤慨していた。

里緒からも高美のインタビューの後、兄と彼女の不倫関係に気づいて俺に二人を別れさせてほしいと頼まれた。

高広はよく凛の不倫相手の流香のバンドとライブハウスで対バンしていた。

俺はミリコへの未練を募らせていた。

帰り際に豹にミリコのパパの素性を調べてあいつの妻の家のポストに写真を入れるように頼んでおいた。

きっとミリコは俺の所に泣きついてくるだろう。

あいつをあやかのいるキャバクラに売り飛ばしてやろうと企んだ。

俺は初めて失恋した。しかも片想いだった。

食事以外で友美と会うのは初めてだった。

当然だがあまり嬉しくなかった。

偶然、雪乃さんと同じタワーマンションだった。

彼女にエレベーターで一緒になった。

「桐生会のこと、ありがとう。助かったわ。」

雪乃さんはとても綺麗な女性だが俺には手の届かない人にみえた。

「それは凛に言ってくださいよ。あいつと豹が計画して、刑事が感づいておとり捜査して逮捕までこぎつけたんですから」と爽やかな笑顔をみせて謙虚に言ってみせた。

雪乃は俺の手をぎゅっと握りしめて「お礼はあとでたっぷりしてあげるからマスコミには黙ってて」と耳元で囁くとエレベーターの中から出て行った。

さすが、V系のボーカルの樹がメロメロになるだけあるな、と後ろ姿に見惚れた。

しかし彼女からはそれ以降、なんの連絡もない。

友美の部屋に行き、事件のことは何も話さず二人で腐ったチーズを食べながら、ワインを乾杯し、しばらく海外ドラマを無言でみた。

友美は「うわぁ、これKワインでしょ?クロムのリーダーがワインオタクで畑まで持ってるっていう。新作ね。美味しい。チーズにも合う」と語尾を伸ばしてワインの味を堪能した。

「そう?俺は白が好きやけど、今夜はお前の為に赤をもってきたけど正解やったな。けどなんで詳しいん?あ、そっか、友也さんと仕事してるからか」と俺は妙に納得した。

5月のあの日、マヤを見逃してしまった。

もしマヤに追いついていたら冷静に彼女を捕まえることができただろうか。

まだマエストロの依頼を受ける前で豹とふざけた仇討ちごっこをしていたころだった。

友美から依頼を受け見張っていた。

でも今はそんなことどうでもよかった。

今ならマヤに会ったらすぐに身柄を五十嵐やかんな達に拘束させることができる。

そんなことを考えながらドラマをみていたら友美が突然「私、婚約したから。」といわれ驚いて彼女の顔をみた。

「おい、マジか、俺がいるのに」とふざけて止めるふりをした。

「何いってんの。先に他の女作ったのは貴方のほうでしょ。」とおどけて友美は笑った。

二人リビングに並んで座って赤ワインを一本開けた。

友美は酒豪だった。

「相手は誰?やっぱ同僚の編集者とか?」と笑いながら聞いた。俺達はいつのまにか友人関係になっていた。

「んー、ジャンルは違うけどぉ、クラシック評論家の白鳥 透。知ってる?友也さんと一緒に2年前KANONさんの東京のピアノのコンサートを観に行って紹介されたの。その時、透はKANONさんと一緒に世界ツアーを回っていた女性のバイオリニストの取材をしていて、その打ち上げで紹介されて連絡先を聞いて去年から恋人になってめでたく婚約!」と両手をあげて友美はベッドに寝転んだ。

俺はちっとも面白くなかった。

「へぇ、よかったな。」とだけ言って2本目の赤ワインを開けて二つのグラスに注いだ。

「透から熱烈なアプローチされて色々クラシック聴かされて。私まで通になったわ。彼クロムのアルバムまで全部持ってるの。透は完全にカノン信者よ。クラシックしかそれまで興味なかったんだって」

友美の話を聞いてるうちに今夜だけでも友美を独占したいと思った。

「あのバンドに出会って人生狂わされた奴何人おるやろな。薫や友也さんや凛と健、あとSHIN?瞳の幼馴染とかな。あいつ絶対エナジーヴァンパイアや!」とベッドに腰かけて、友美にいたずらっぽく話しかけた。

「何それ?あんたもネット掲示板に毒されてるの?映画みたらそんなのデマだってわかるよって諭された。来年公開されるから一緒にみようって誘われてるの。ウェンブリーアリーナのライブも今年の来日コンサートも行こうっていわれた。」とベッドから起き上がり、グラスの赤ワインを一口呑んだ。

「ね。これもう一本くれない?透が喜ぶわ」と酔った目で頼まれた。

「なんで俺がお前らの婚約記念にワイン調達せなあかんねん。」と俺は釈然としないままグラスのワインを呑み続けた。

友美の唇は赤ワインの色に染まっていた。

「そんなにほしかったらくれてやるよ、一年分。ただし、ただじゃあげない。」と友美を押し倒した。

プライベートじゃロック聴いて、仕事はクラシックの評論家やってるなんて変な婚約者だ。

友美は意外に抵抗しなかったので拍子抜けした。

そのまま見つめ合ってキスをした。

人の物を奪うのは案外気持ちがいいものだ。

俺は興奮した。

そのまま、服を脱がそうとしたが「やめて」と止められて、俺達はまたワインを呑んだ。

「やらせろよ、まだ独身だろ。その気がないなら男を部屋に入れるな」と俺はおあずけを食らい、自棄になって帰ることにした。

つまらない女。

「まだ、時々フラッシュバックするの。あの日のことー。」と友美はマヤの襲撃事件のことを思いだしていた。

俺は黒いコートを着て「あのことは誰にもいうな。本になるんだろ?サイン会はやめたほうがええで。」といったら友美が引き留めようとして、彼女のスマートフォンが鳴った。

白鳥透からだった。

「でろよ。」と俺は行ってドアを閉めた。

ドアの前でため息をついた。

京子の時の二の舞はごめんだ。

凛は雪乃と樹に会って「ドーリス」で食事をした。

アリサと一緒に。

今日は入籍してから2年目だった。

ミリコが今だにウェイトレスとして働いていて食事をテーブルに運んできたので凛は思わず「あ、ポケベル女」と後ろ姿をみてつぶやいた。

今はハリウッド女優似か。

「本当、ツインピークスに出てくる女性そっくり」とアリサもみた。

アリサはトシヤから蓮との事を聞いて気の毒に思った。

もうひとつ、トシヤが口を滑らせて流香のことをしゃべってしまった。

最近凛の帰りが遅く女性用の香水の匂いがしたり、怪しかった。

いつも二人でいてもうわの空だった。

朝に問い詰めようと思った。

凛はトニーさんにもばれてしまい「ええか、絶対に浮気を認めるな!認めたら終わりやで」と反対されるどころかアドバイスされていた。

凛は夜中に携帯がなっても無視をした。

アリサはとても不安になっていた。

今迄冷静を装ってきたが限界だった。

蓮にだけは相談したが「あいつはお前に一途やから、心配せんでええよ。俺はいつでもお前の味方やからなんでもいって」と止めたはずの煙草に火をつけて火傷をしていた。

蓮は嘘が下手。

アリサはそれで確信した。

その頃、高美は松田友美の新書を読んでいた。